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1000年ぶりの勇者と魔王 〜魔法が使えなかった少年は"世界初のスキル"で覚醒する〜  作者: 土田土


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第七話:スキル鑑定

鑑定当日。

村の中央にある教会に人が集まる。


今年は千年周期。

“勇者が現れるかもしれない年”だ。

誰もが期待していた。


ミリアが最初に呼ばれ、水晶に手をかざす。

白い光がふわりと揺れた。


「……スキル《心読》」


場がどよめく。


「ミリア様、すごい……!」

「心読なんて滅多に出ないぞ……!」


次はゼン。

村で一番体術が強い少年だ。

周囲はざわついていた。


「ゼンなら勇者になるんじゃないか?」

「体術の才能は村一番だしな」


ゼンが水晶に手をかざす。

光が揺れた。


「……スキル《精霊使い》」


場が静まる。


「……あれ?」

「勇者じゃ……ないのか?」


ゼンはほんの少し肩を落としたが、すぐに顔を上げて笑った。


次々と鑑定が進み、残るは――俺だけになった。


先生は緊張で手を握りしめている。

ミリアは心配そうに見つめ、ゼンは「頑張れよ」と頷いた。


司祭がゆっくりと口を開く。


「……ノア。前へ」


俺は歩き出す。

水晶の前に立つと、空気が変わった。

ざわり、と教会全体が息を呑む。


俺は手をかざした。


光が――弾けた。


「……スキル《勇者》」


場が跳ね上がる。


「勇者だ!!」

「千年周期の勇者が……!」

「ノアが勇者!?嘘だろ……!」


歓声が教会を揺らす。


だが司祭はまだ続けていた。


「……そして、もう一つ」


場が静まる。


司祭は震える声で告げた。


「スキル《魔王》」


沈黙が落ちた。


誰も動けなかった。


ただ、その言葉だけが教会の空気を凍らせた。


「……魔王だ」

誰かが呟いた。


「魔王だぞ……!」

「殺せ!!魔王を殺せ!!」


叫びが一気に広がった。


勇者として守ろうとする者。

魔王として倒そうとする者。


教会は一瞬でカオスになった。


椅子が倒れ、人が押し合い、怒号が飛び交う。


その中で――先生が俺の手を強く引いた。


「ノア!!外へ!!」


人混みをかき分け、教会の扉を開けて外へ飛び出す。

後ろから群衆が追いかけてくる。


「魔王を逃がすな!!」

「殺せ!!」


先生は叫んだ。


「ノア!!森へ!!走って!!」


俺は走り出した。


先生の叫び声が背中から聞こえた。


「まっすぐ行った湖のほとり!そこに……堕天使がいる!

その人を頼って!!」


俺は走り出した。

けれど足は重く、胸の奥はぐちゃぐちゃだった。


勇者。

魔王。


二つのスキルが頭の中でぶつかり合い、

走るたびに心臓が痛む。


(勇者は世界を救う存在……)

(魔王は世界を壊す存在……)


(じゃあ俺は……どっちなんだよ)


景色が揺れる。

呼吸が乱れる。

走っているのに、前が見えない。


(勇者として生きればいいのか?

魔王として生きるべきなのか?

そんなの……選べるわけないだろ)


胸の奥がきしむ。


(俺は……誰として生きればいいんだ)


後ろから聞こえていた村人の怒号が、

いつの間にか遠ざかっていた。


「魔王を殺せ!!」

「逃がすな!!」


その声が、心の奥に突き刺さる。


(俺は……生まれた時から間違いだったのか?)


気づけば、

村人たちの声がもう聞こえない場所まで来ていた。


息が荒い。

足が震える。

心が沈んでいく。


(勇者と魔王……二つのスキルを持つなんて……どうすればいいんだよ)


絶望が喉の奥まで満ちていく。


そのとき――

目の前に影が立った。


「……っ!」


ゴブリンキングだった。


巨大な棍棒。

黒い瞳。

圧倒的な威圧感。


今まで倒してきたのはゴブリンだけ。

せいぜい一体ずつ。

群れでも五体程度。


目の前のゴブリンキングは――

その二十倍はある。


(……無理だ)


胸の奥がきしむ。

逃げ場がない。

助けてくれる人もいない。

前にはゴブリンキング。


絶望を背負い俺は拳を握った。 

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