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1000年ぶりの勇者と魔王 〜魔法が使えなかった少年は"世界初のスキル"で覚醒する〜  作者: 土田土


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第二話:才能の発現

放課後。


校庭には誰もいなかった。

夕日が地面を赤く染めている。


帰ろうとした瞬間――


「ノア」


鋭い声が背中を刺した。


振り返ると、ゼンが立っていた。

昼間よりもずっと険しい顔で。


ゼンは走ってきて、胸ぐらを掴んだ。


「……なんでだよ」


短い言葉。

でも、怒りと悔しさが詰まっていた。


拳が飛んできた。


反射的に避けた。


(速い……)


ゼンの踏み込みは、地面を蹴る音がほとんどしない。

滑るように距離を詰めてくる。


拳の軌道も無駄がない。

肩の力が抜けていて、“自然に”速い。


子どもの喧嘩のレベルじゃなかった。


ゼンは続けざまに拳を振るう。

蹴りも混ざる。

体当たりも来る。


全部が「習った」じゃなく、

「身に染みついてる」動きだった。


「ミリア様に……近づくな!」


俺は避け続けた。

避けて、避けて、避け続けた。


(ゼン……強い。

このままじゃ当たる)


初めての喧嘩。

初めての衝突。


(少し……押し返すしかない)


ゼンの拳がまた飛んでくる。

俺はその腕を、ほんの少しだけ押し返した。


その瞬間――


ゼンの体が、弾かれたように後ろへ吹っ飛んだ。


「っ……!」


地面を滑り、砂埃が舞う。


(……え?

今、軽く触っただけなのに)


体の奥がざわついた。


(俺……こんなに強いのか?)


ゼンはすぐに立ち上がった。

さっきまでの勢いが少しだけ止まっている。


吹っ飛ばされた衝撃で、

一瞬だけ冷静になったのが分かった。


その隙に、口が勝手に動いた。


「ミリア様とは……

何の関係もないって!!」


声が校庭に響いた。


ゼンの目が揺れた。

その言葉が、やっと耳に届いたようだった。


沈黙が落ちる。


ゼンは拳を下ろし、息を荒げながら言った。


「……っ……」


怒りじゃない。

泣きそうな悔しさだった。


「……俺……ミリア様に褒められたくて……

ずっと練習してたんだよ……」


「ゼンは強いよ。

本気だった」


ゼンは驚いたように顔を上げた。


「……なんで分かるんだよ」


「戦ったら分かるよ」


ゼンはしばらく黙り、ぽつりと呟いた。


「……お前、ほんと変なやつだな」


「よく言われるよ」


そっぽを向きながら言う。


「……その、悪かった。

殴りかかったこと」


「気にしてないよ」


ゼンはまた驚いた顔をした。


「……お前、ほんと変なやつだな」


「そうかもね」


ゼンは少しだけ笑った。

ほんの少しだけ。


ゼンが帰っていき、校庭に静けさが戻った。


――帰り道。


ノアは歩きながら、ふとゼンの踏み込みを思い出した。


あの速さ。

あの迷いのない動き。

あの“自然すぎる”体術。


今日の授業の言葉が、一瞬だけ頭をかすめる。


「勇者は体術で戦う」

「千年周期で現れる」


ゼンの踏み込みが脳裏に浮かぶ。


(……勇者って、ああいう感じなのかな)


ノアは首を振った。


(いや、ないない)

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