表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1000年ぶりの勇者と魔王 〜魔法が使えなかった少年は"世界初のスキル"で覚醒する〜  作者: 土田土


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/33

第二十一話:人間を作ったあの日

懐かしい。

胸の奥がじんわり温かくなる。


光でも闇でもない、ただ記憶だけが漂う場所。

ぼんやりと人影が浮かぶ。


その姿を見た瞬間、心が震えた。


――この人だ。

僕と一緒に“人類”を作り上げた人。

人類最初の二人のうちの、もう一人。


名前は思い出せない。

けれど、笑い方も、歩き方も、声の響きも、全部覚えている。


世界にまだ何もなかった頃、

僕らは隣り合って座り、土を触り、空を見上げて考えた。


食べ物の食べ方を決めた。

噛むという行為を作り、飲むという概念を作った。

眠る必要性を見つけ、休息という仕組みを作った。

寒さを防ぐために布を巻く文化を作り、家という考え方を生み出した。


衣食住。

生きるための基礎。

全部、二人で考えた。


焚き火の前で、彼が胸に手を当てて言った。


「なんだろう……あったかい気がする」


「それは“嬉しい”だよ」


「じゃあ、胸が痛いのは?」


「それは“悲しい”だ」


「誰かを守りたいと思うのは?」


「それは“愛”だ」


僕らは感情を見つけ、

それに名前をつけた。

人間が人間になるための“心”を、二人で作った。


子どもたちが生まれた。

僕らの子孫たちだ。


彼らは笑い、泣き、怒り、愛し合った。

僕らが作った言葉で話し、

僕らが作った生き方で暮らした。


焚き火の前で、二人でよく言っていた。


「……幸せだね」

「うん。人間って、いいね」


その記憶が、次々と流れ込んでくる。

懐かしくて、胸が温かくて、涙が出そうになる。


その時――

記憶の奥から、誰かの声がした。


「……お前は……何故……転生……」


遠い。

聞こえづらい。

でも、この声を知っている。


「……転生……させたのは……」


言葉が途切れ、意味が掴めない。

世界が揺れる。


記憶がひび割れた。

光が崩れ、闇が滲み、僕の意識が引き戻される。


夢が終わる。


---


目を開けた瞬間、

温かいものが頬に触れた。


涙だった。


アリアさんが泣きながら僕の手を握っていた。

リオラさんも、必死に涙をこらえながら僕を見ていた。


二人とも、ぐしゃぐしゃに泣いていた。


胸が締め付けられる。


「……アリアさん……リオラさん……?」


声が震えた。

でも二人はその瞬間、息を呑んだ。


アリアさんが叫ぶように言った。


「ノアくん……!

ノアくん……!!

本当に……本当に良かった……!」


リオラさんも声を震わせる。


「……目を開けてくれて……ありがとう……

もう……ダメかと思った……」


二人は僕に抱きついた。

強く、強く、まるで二度と離さないみたいに。


僕の胸に熱いものが込み上げる。


「……生きてて……良かった……

俺……俺が……殺したのかと思った……

みんな……死んだのかと思った……」


言葉が途切れ、涙が溢れた。

自分でも止められなかった。


アリアさんは僕の背中を撫でながら泣いた。


「そんなわけないです……!

ノアくんのせいじゃない……!

ずっと……ずっと心配で……!」


リオラさんも涙をこぼしながら言う。


「お前が目を覚まさなかったら……

私……どうしていいか分からなかった……」


二人の体温が伝わる。

震えが伝わる。

涙が肩に落ちる。


僕は二人を抱き返した。


「……生きててくれて……本当に……良かった……」


三人で抱き合った。

泣きながら、何度も名前を呼び合った。


前世の記憶の温かさと、

今の温かさが重なって、

胸がいっぱいになった。


しばらくの間、

誰も言葉を発せず、

ただ三人で泣き続けた。


その涙は、

恐怖と安堵と、

再会の喜びが全部混ざった涙だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ