第一五話:魔都市へ
翌朝。
ノアはアリアさんとリオラさんと一緒に森の道を歩いていた。
昨日までの賑やかさとは違って、
今日は三人とも少し静かだった。
「……いよいよだね」
アリアさんがぽつりと言う。
ノアはうなずいた。
胸の奥が少しだけ重い。
「魔都市って、どんな場所なんですか?」
ノアが聞くと、リオラさんが前を歩きながら答える。
「人間の街とほとんど同じだよ。屋台もあるし、店もある。
ただ――住んでるのが魔物ってだけだ」
「魔物の街……」
想像が追いつかず、ノアは少し息をのむ。
アリアさんが横で笑う。
「大丈夫。ノアくんが思ってるよりずっと普通ですよ」
その言葉に、ノアの胸の重さが少し軽くなる。
しばらく歩くと、森の空気が濃くなっていく。
魔力の匂いが混じり、風が重く感じた。
「……魔都市が近い証拠だね」
リオラさんが言う。
ノアは喉が乾くのを感じた。
でも、アリアさんが横にいるだけで少し落ち着いた。
「ノアくん、深呼吸して」
「……はい」
ゆっくり息を吸い、吐く。
行ける。大丈夫だ。
森を抜けた瞬間――
ノアは思わず足を止めた。
「……え……?」
そこには、人間の街とほとんど変わらない光景が広がっていた。
屋台の匂い。
道具屋の呼び声。
魔物たちの笑い声。
アリアさんが小さくつぶやく。
「ね? 普通の街でしょう?」
ノアはただ目を丸くするしかなかった。
魔物たちは買い物をしたり、
子どもが走り回ったり、
焚き火の周りで談笑したり――
人間と、何も変わらない。
胸の奥がじんわり温かくなる。
(……争いなんて、いらないじゃないか……)
そう思った瞬間――
ドンッ……
ドンッ……
ドンッ……
地面が揺れた。
魔都市の空気が一瞬で変わる。
魔物たちが動きを止め、
屋台の店主も客も、
子どもも職人も――
全員が道を開けた。
アリアさんが息を呑む。
「……来る……」
リオラさんの声が低くなる。
「ウォーロードだ」
闘技場の方から、巨大な影がゆっくりと歩いてくる。
傷だらけの巨体。
片腕だけ異常に太い。
獣の息。
戦士の目。
魔物たちが震えながら囁く。
「ウォーロード……」
「なんでここに……?」
「逃げろ……巻き込まれる……」
ウォーロードはノアの前で止まり、
鼻を鳴らした。
空気が“切れた”。
「……お前……ただの子どもじゃねぇな」
ノアの背筋が凍る。
ウォーロードの目が変わる。
獣から、戦士へ。
「――勇者だな」
魔都市がざわめきに飲まれた。
「勇者!?」「囲め!!」「危険だ!!」
魔物たちが一斉に集まり、
三人を取り囲む。
アリアさんがノアの腕を掴む。
「ノアくん……!」
リオラさんが前に出る。
ノアは息をのみ、
ウォーロードの視線を受け止めた。
(……やるしかない……)




