第一四話:魔物の正体
リオラさんが真剣な目でノアを見つめる。
「……この話をする前に、ノア。
君のことを聞かせてくれ。
どうしてこんな森に一人でいたんだ?
十歳ほどの君が来ていい場所じゃない。
正直に答えてほしい」
その視線は逃げ場がなくて、
隠し事なんてできないと分かる。
喉が詰まる。
また“魔王として虐げられる”かもしれない――
そんな恐怖が胸を締めつけた。
けれど、もう嘘はつけない。
「……俺、実は……魔王であり、勇者なんです」
アリアとリオラさんの目が同時に丸くなる。
「本当か?」
「そんなことが……」
リオラさんは驚いたあと、
なぜか少しだけ嬉しそうに笑った。
「ありがとう、教えてくれて。
きっと魔王だと思われて、人間に追われたんだろう。
安心してくれ。私たちは“魔物と人間が共存できる世界”を目指している」
共存――?
そんなこと、考えたこともなかった。
でも、もしそれが本当に叶うなら……
それはきっと、誰も傷つかない世界だ。
「……そんな世界ができるなら、俺は……それを叶えたいです。
ぜひ協力させてください」
リオラさんは静かにうなずき、ノアの言葉を受け止めた。
「……ありがとう、ノア。
君が自分のことを話してくれたおかげで、私も本題に入れる」
リオラさんは少し表情を引き締める。
「ここからは“魔物”について――そして“魔物の凶暴化”について話そう」
ノアは息をのむ。
アリアも真剣な顔で師匠を見つめている。
リオラさんは続けた。
「魔物と人間は、本来そこまで違わない。
知能も生活も、驚くほど似ている。
私たちは長く観察を続けて、一つの仮説にたどり着いた」
一拍置いて、言葉を落とす。
「――魂は同じで、生まれる場所が違うだけだ、と」
ノアの胸がざわつく。
「でも、そこで疑問が生まれる。
“なら、なぜ魔物は人を襲い、人は魔物を倒すのか?”
その答えを探すために、私たちは毎日魔物のそばにいた」
リオラさんの声が少しだけ重くなる。
「ある日、私たちが観察していた村の三体のゴブリンが突然自我を失い、人里に向かって進み始めた。
止めようとしても叶わず……そのまま人里へいった」
「数時間後、人里の方から“巨大な魔法が放たれた音”が響いた。
あれはきっと、誰かがゴブリンを倒したのだろう。
やられる前にやる、それが生物としての本能だ」
ノアは息をのむ。
リオラさんはノアの目をまっすぐ見つめた。
「ノア。
魔物の凶暴化は“自然現象”じゃない。
誰かが意図的に魔物を操り、争いを作っている」
アリアが小さく息をのむ。
「そして、私たちが犯人であろうと考えている"あいつ"が魔都市に現れた」
リオラさんは静かに続けた。
「君の力が必要なんだ。魔物と人間が共存できる世界を作るために――
“あいつ”の目的を知るために、だから一緒に魔都市に来てくれないか」
ノアはゆっくりとうなずいた。
「……行きます。
真実を知りたい。
そして……争いをなくしたい」
アリアがそっと微笑む。
「ノアくん、私も行く。大丈夫だよ」
ノアは二人の言葉を受け止め、静かに前を向いた。




