第十三話:師匠の帰還
アリアさんとの日常は続いた。
魔法での家事も、だいぶ楽にできるようになってきた。
たまにアリアさんの仕事について行ったり、
狩りの手伝いをすることもある。
アリアさんの魔法は、とにかく正確で――
矢のように一直線に飛ぶ。
きっと繊細で、几帳面な心を持っているから
こういう魔法になるのだろう。
「アリアさんの魔法って、本当にお手本みたいに綺麗ですよね」
アリアさんは少し照れたように笑った。
「ありがとうございます。
師匠に教えてもらったんです」
「そういえば、以前も師匠の話してましたよね。
師匠って、どんな人なんですか?」
アリアさんはノートを閉じて、少し遠くを見る。
「破天荒だけど……でも優しくて。
すごく器用な人でした」
「そうなんですね。
いつか会ってみたいです」
アリアさんは軽くうなずく。
「それなら――今日帰ってきますよ」
「えっ、今日!?
そんな急に……!」
アリアさんはくすっと笑った。
「予定より早く戻るって連絡があったんです。
夕方には着くと思いますよ」
「そ、そうなんですね……!
ぜひご挨拶したいです!」
アリアさんは小さく笑った。
「ふふ……気に入ってもらえるといいんですけどね」
(どんな人なんだろう……)
胸の奥が少しだけ高鳴った。
夕方になり、家で過ごしていると――
「ただいまーっ!」
豪快な声が家じゅうに響いた。
驚いて外へ出ると、
笑顔の明るい女性が立っていた。
「きみは?」
「あ、ノアです。怪我してるところを治療してもらって……
アリアさんにお世話になってました。知らない間にすみません」
女性は豪快に笑った。
「全然気にするな!
私も同じことをしたと思う!」
そして、にっと笑って胸を張る。
「私はリオラ。
アリアの師匠だ。
よろしくな、ノア!」
そのまま家に向かって叫ぶ。
「アリアー! 私が帰ったぞー!」
階段の上からアリアさんが走って降りてきた。
その顔は、いつもよりずっと明るい。
「師匠……!」
勢いよく抱きつく。
アリアさんの目には、少し涙が浮かんでいた。
(アリアさん……こんな姿、初めて見た)
きっと不安だったのだろう。
ずっと帰りを待っていたのかもしれない。
リオラさんはアリアさんの背を軽く叩きながら笑った。
「そう泣くなアリア!
私たちの研究は――大幅に進みそうだ」
アリアさんが顔を上げる。
「……何かあったんですか?」
リオラさんは胸を張って言った。
「魔都市への潜入に成功したんだ!」
空気が一瞬で変わった。
アリアさんの目が驚きで見開かれる。
「魔都市に……? 本当に……?」
「本当にだ。
そこに“あいつ”がいた」
リオラさんはニッと笑う。
(魔都市……?
あいつ……?)




