第十一話:国王との繋がり
ノアが皿を浮かせて洗っていた夕方。
部屋の明るさがふっと変わり、影が家を覆った。
「……え、なにこれ……?」
影はどんどん濃くなる。
ノアは慌てて皿を落とす。
「ア、アリアさん!
大きい影が……魔物かも……!」
アリアはノートを閉じながら、落ち着いた声で言う。
「魔物じゃないですよ。
私のお得意さんです」
「え……?」
「ノアくんも挨拶します?」
外へ出ると――
巨大なドラゴンが、どっしり座っていた。
ノアは固まる。
ドラゴンは丁寧な声で言う。
「おや、新しい子かい。よろしく頼むよ」
ドラゴンはノアをじっと見つめ、ゆっくり首を傾けた。
「ふむ……なるほど。ずいぶん魔力が揺れているな」
ノアはびくっとする。
「え、えっと……すみません……?」
ドラゴンは喉の奥で低く笑った。
「謝ることではないよ。未熟なだけだ。
だが――素質は悪くない」
アリアが横で小さく笑う。
「見る目がありますね」
ドラゴンは軽く鼻を鳴らした。
「お前が連れている時点で、ただ者ではないと思っていたさ」
ノアは反射的に頭を下げる。
「よ、よろしくお願いします!」
ドラゴンは満足そうにうなずく。
「いつものやつ、もらっていいかい?」
アリアがノアを見る。
ノアは慌てて資料を持ってきて渡す。
「は、はい!どうぞ!」
ドラゴンは受け取って息を吐く。
「ありがとう。では、これで」
大きな翼が広がり、
ドラゴンは空へ舞い上がっていった。
ノアはぽかんと空を見る。
アリアが淡々と言う。
「あの子、今は一国の代理の王なんですよ。
魔物の情報が欲しくて依頼してきてます。
研究の資金も全部あの子が出してくれてます」
ノアはまだ現実感が追いつかない。
「……すごい世界に来ちゃったな……」
アリアは静かに笑う。
「慣れますよ。ここでは普通ですから」
ノアは家に戻ろうとして、ふと思う。
(……そういえばアリアさん、
お昼にいつも外で何かしてるよな)
毎日決まった時間に外へ出て、
何かを書き留めて戻ってくる。
ドラゴンの件で驚きすぎて、
逆にもっと知りたくなった。
ノアは声をかける。
「アリアさん。
明日のお昼、ついて行ってもいいですか?」
アリアはいつも通りの声で答える。
「いいですよ」
ノアはほっとする。
「ありがとうございます。
じゃあ……明日お願いします」
「ええ。外の空気も気持ちいいですしね」
ノアは胸の奥が少し温かくなる。
明日が楽しみだ。




