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二人暮らしのユメとミオ  作者: 黒猫の凜


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ミオの生活③ 単独行動に慣れた人間

平日朝、開店直後のショッピングモールは、人混みが苦手な私にも優しい。

とはいえ、僅かな客や店員の視線はあるわけで…

テンション高めの同居人と並んで歩くのは少し羞恥心を覚える。



「…恥ずかしいから、手降ろしてくれる?」


「あ、ゴメン…!えっと〜、ほらあそこ!ベビーカステラのお店来てるよ。あとで買って帰る?」


「…いらない。前にユメが買ってきたのも微妙だったし。」



……



朝食後、どの店を周りたいのか確認をしたのだが、明確な答えは得られなかった。



「行ってからのお楽しみだよ♪」



などと言ってはぐらかされた私は、心の中で頭を抱えた。


予定は全て把握して効率良く行動する——

それが普段の私のスタイルだ。

なので、不透明な状態は非常にもやもやするのだ…


だが…まぁ、こんな日もあるか。

誰かと共に出かけるというのは、こういうことだ。

1人の時のように、自分のペースで予定を完遂すればベスト…という話ではない。

ユメにも楽しんで貰わなければ意味がないのだ。



……



そんなこともあり、今日はできるだけユメに合わせてあげようと密かに思っていたのだが…



「…あ、ちょっと見てきていい?」


「……服屋か。私はそこら辺まわってくるから、ゆっくり見てきていいよ。」



言い終わる頃には、既にユメは服屋の中に消えていた。

恐らく、私の返事はろくに聞いていないだろう。


なぜ服屋に付いていかないのか…

それは、単純に苦手だからだ。


私はファッションに関心がない。

全くと言っていい程に。

そのせいか、服屋に入るだけでも苦痛を感じる。

私にとっては服なんて、

“最低限、変に思われなければそれでいい”

くらいのものだ。


学生時代は、そんな着るものに頓着しない娘を憐れに思った母が、似合いそうな服をバンバン送りつけてきていた。

当時は、とりあえず対外的な面子が保てるように、その中から適当に選んで着ていたのだ。

なので、自分で服を選ぶ楽しみも知らない。



それにしても、ユメが好みそうなタイプの服屋では無さそうだったけれど…



……



電気屋と本屋を覗いてから服屋に戻ってみたが、ユメは店員に何かを聞きながらまだ悩んでいるようだった。


ユメだけなら多少の苦痛は覚悟で入店しただろうが、店員と会話している所に入っていくほど私はコミュニケーションが得意ではない。

さっさと諦めて、休憩できる場所を探すことにした——


……


昔ここに来た時の記憶を呼び起こし、ベンチが多く並んでいる2階のスペースまで辿り着いた。


どれくらい待つことになるか分からないので、自販機でコーヒーでも飲もうかと考える。

ところが、値段を見て手が止まってしまった——


私がほぼ外出をしていなかったこの数年のうちに、自販機の飲み物はここまで値上がりしたのか…


別に、買えない額ではない。

そのはずなのに、数秒躊躇った後、何も買わずにソファに腰掛けた。


何が購入を邪魔したのだろう…?

最近の物価高を考えれば仕方のないことだと分かっている。

それなのに結局買わなかったのは、昔の自販機の値段が、未だに記憶にしっかりと残っていたせいかもしれない。



……



何気なくスマホを取り出し、最近のニュースでも見ようかと考えた時…

私はやっとユメのことを思い出した。


ユメに合わせようだなんて考えておきながら、結局今は1人だ…

自分の不甲斐なさに天を仰ぐ。


きっとユメは、1階で私を探すだろう。

そうならない為には、今すぐ居場所を伝えるしかない。


急いでアプリを立ち上げると、最も効率的に居場所が伝えられる文言だけを素早く送信した。



『2階のベンチ』



なんて簡素なメッセージだろうか…


自分で勝手にいなくなっておきながら、こんな味気ない文言だけを送ってくる奴になんか、誰も好感を抱かないだろう。



——少しばかり気を落としながら反省していると、ユメが駆け寄ってくるのが見えた。


機嫌を損ねていないかと心配していたが、近付いてくるユメの顔は、何故かいつもより嬉しそうだった。


その様子に安堵しながら、席を立って声をかけた。



「ごめんね、ちょっと休んでた。」


「ううん、大丈夫だよー!ねぇねぇ、ミオはどんな服が欲しい??」


「……いらない。」

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