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二人暮らしのユメとミオ  作者: 黒猫の凜


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ミオの生活② 価値観の違い

朝食の間、なんだか落ち着かない気分を味わっていた。

いつもより味を感じにくい…


きっと、“いつもありがとね”などという不器用なセリフを吐いてしまったからだ。


素直に気持ちを伝えたつもりだったけど…

やっぱり慣れないことはするもんじゃない。


……


それと、昨日のやり取りのせいか、皿に置かれたソーセージを見る度に、脳裏に20円がちらつく……


ユメにとって、20円の差はそんなに大きなものなんだろうか…?

いや、私だって安い方がいいことは分かるし、“もったいない”という気持ちもある。


例えば、300円のコンビニスイーツの前でしばらく悩み、結局もったいなくて買わないなんてことはよくある。

まぁ、ゲーム用の5000円のプリペイドカードは躊躇いなく買うけど…


でも、ソーセージが20円安く買えることと、時間や労力を節約できることを比較すると、私なら圧倒的に後者が勝つ。

大半の人はそうだと思っていた。

だけど、ユメの価値基準は違うところにあるようだ。


……


そういえば…

ユメは食事中によく、お得に買い物ができたという話をする。


“あの店は全般的に高いけど、これだけは安い”

とか、

“支払い方法が増えたから、ポイントがつくようになった”

とかを楽しげに話している。


今も目の前で、

“いかにクーポンを賢く使えたか”

を嬉しそうに語っている最中だ。


もしかすると…

私みたいな単純な価値の比較ではなくて、“お得に買えた”ということ自体に、ユメは喜びを感じているのかもしれない。



——ここまで長々と考えて、私はやっと食事に集中できるようになった。

また少し、ユメを理解できたから…かな?



……



こんな風に、私とユメは考え方の違いがある。

なぜ、そんなユメとの同居を受け入れたのか…

自分でも、たまに不思議に思う。



——彼女が同居の提案をしてきた時の様子は今でも覚えている。


いつも明るいユメが、はたから見ても明らかに緊張していて…

それだけで、余程の覚悟を決めて私に話してることが分かった。


あの時冷静に考えれば、色んな不都合とか、嫌われるかもしれない恐怖とかで返事を躊躇っていただろう。

実際、断っていた可能性は高い。


ところが、そうはならなかった。



ユメの緊張した声に、思わず手が止まって…

ちゃんと返事をしようと思って、私は顔を上げた——


あの時に見た、ユメの顔は忘れられない。

覚悟の中に、怯えや期待の入り混じった、その表情を見ると……


いつの間にか、返事を終えていた。

多分、彼女の気持ちを無駄にしたくなかったのだと思う。



……



同居の提案を承諾してからも、しばらくの間は気持ちが決まらなかった。

落ち着いて考えると、やはり私の性格で同居は無理だろうという気持ちが強くなってきたのだ。


それからは毎日、

いかに自分が偏屈で、同居になるとどれだけ面倒な部分が見えてくるかを力説したのだが…


結局、ユメは卒業式まで「大丈夫♪」しか言わなかった。



その後、説得を諦めた私は、同居するにあたって5つのルールを決めた。



①お互いの部屋には勝手に入らない

②家事は分担する

③家賃・光熱費は折半する

④お互いの人生に口出しをしない

⑤不都合があれば話し合う



ルール②の家事については、現在、ユメに7〜8割くらい任せてしまっている。

自分で言い出したルールにも関わらず、仕事に忙殺される日々を送るうちに、家事に手が回らなくなってきたのだ。


あの時は、ユメに対して申し訳ない気持ち一色に染まっていた。

私が気持ちを立て直して、今の形で生活が回せるようになるまで、辛抱強く支えてくれたユメには感謝しかない。

きっと、一人で暮らしていたら、そのまま私はゆっくりと沈んでいったのだろう。



……



——そういえば、今日はユメの買い物に付き合う約束をしていた。

日頃助けられている分、たまにはユメの要望を聞き入れた方がいいかもしれないと思い、OKを出した。


普段、仕事以外では外出をしない私だ。

もちろん体力に自信はない。

後で、見て回る予定の店を確認して、できるだけスムーズに帰ってこれるようにしよう。

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