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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第九十四話 「弁当」

 ノーマッド地区。


 九条ハヤトのコンテナハウス。


 外では大型輸送車が走り、

 違法ドローンが飛び交っている。


 だが。


 中だけは妙に平和だった。


「はい」


 ハヤトがコンビニ袋を机へ並べる。


 大量の弁当。


 焼肉。


 麻婆豆腐。


 唐揚げ。


 チャーハン。


 完全に男子高校生が喜ぶラインナップ。


 レンが呆れる。


「なんでこんな買ってきたんだよ」


 ハヤトは真顔だった。


「クルーは飯が大事」


「急に良いこと言うな」


 コメント欄爆笑。


《また弁当》

《飯回》

《平和すぎる》


 黒犬は黙って焼肉弁当を取る。


 藍華はタピオカ付き中華セット。


 美玲は。


「これ」


 普通に麻婆チャーハン大盛り。


 レンが固まる。


「食うなぁ!?」


「戦った後だから」


「燃費悪い兵器みたいに言うな!」


 美玲は気にせず食べ始める。


 レンは思う。


 世界最大級配信者。


 感情市場を揺らす少女。


 でも。


 こういう時だけ、

 普通の高校生っぽい。


 その時。


 《EYES》が静かに表示する。


《感情波安定》


 レンは少し驚く。


「……あ」


 藍華が気づく。


「落ち着いてる?」


 《EYES》が分析する。


《クルー共同食事》


感情同期安定効果確認



Emotion Crash抑制率上昇


「飯で感情安定するのかよ……」


 ハヤトが笑った。


「人間そんなもんだ」


 煙草を咥えながら続ける。


「市場だの感情AIだの言っても」


「結局」


「最後は食って寝る場所がいる」


 レンは少し黙る。


 その言葉は妙に重かった。


 美玲も静かに聞いている。


 多分。


 今まで、

 そういう場所が少なかったんだ。


 その時。


 美玲が小さく言った。


「……美味しい」


 レンが笑う。


「コンビニ弁当だけどな」


「うん」


 赤い瞳が少し柔らかい。


「みんなで食べると美味しい」


 沈黙。


 レンは一瞬言葉を失う。


 藍華も、

 黒犬も、

 少しだけ静かだった。


 ハヤトだけがニヤつく。


「青春だねぇ」


「茶化すな!」


 コメント欄爆発。


《尊い》

《平和回》

《サイバーパンク飯テロ》


 その時。


 コンテナ外で、

 大型ネオン車両が通過した。


 赤い光が、

 部屋へ差し込む。


 ネオン都市。


 感情市場。


 世界は相変わらず狂ってる。


 でも。


 レンは思う。


 こういう時間を守るためなら。


 少しくらい、

 戦ってもいいかもしれない。

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