第九十話 「ヨコヅナ会議」
《YOKOZUNA NETWORK》
コンテナハウス内部が、
金色の光へ染まる。
市場データ。
株価。
感情指数。
東アジア全域の情報が、
一斉に流れ始めた。
レンは圧倒される。
「……なんだこれ」
《EYES》が解析する。
《YOKOZUNA会議》
東アジア超上位市場層専用回線
⸻
接続対象
* 超巨大企業
* 国家級資本
* 感情市場支配者
「国家会議より怖ぇよ……」
その時。
金色のホログラムが、
一つずつ現れ始めた。
⸻
《香港金融連合》
《上海感情市場管理局》
《澳門統合娯楽機構》
《台湾湾岸通信連合》
《神戸自由市場評議会》
⸻
完全に世界だった。
レンの頭が痛くなる。
「スケールがおかしい……」
だが。
九条ハヤトは慣れている。
ソファへ座ったまま、
缶コーヒーを飲んでいた。
そして。
一つの巨大ホログラムが現れる。
《LIN GROUP》
美玲の表情が少し止まった。
レンが気づく。
「……林グループ」
つまり。
美玲の実家。
東アジア財閥の本体。
その時。
低い男の声が響いた。
『ハヤト』
空気が変わる。
全モニターの市場変動が、
一瞬止まる。
レンは息を呑んだ。
現れた男。
黒い中華風スーツ。
白髪。
鋭い目。
そして。
圧倒的威圧感。
《EYES》が表示。
《林 宗龍》
林グループ総帥
⸻
ヨコヅナ階級
⸻
東アジア感情市場上位支配者
「うわ」
レンが小さく漏らす。
「ラスボス感すげぇ……」
その時。
美玲が小さく言った。
「……父さん」
空気がさらに静まる。
林宗龍。
《MAY-LIN》の父。
そして。
世界最大級市場支配者。
林宗龍は静かに美玲を見る。
『久しぶりだな』
赤い瞳と、
金色の市場光が交差する。
レンは気づく。
この二人。
親子なのに。
空気が完全に、
敵対勢力だった。
その時。
林宗龍が言った。
『MAY-LIN現象』
『市場影響が想定を超え始めている』
《EYES》が表示。
《MAY-LIN市場影響》
* 感情市場変動率:危険域
* 感情依存率変化
* AI感情制御低下
* 若年層市場流動変化
レンは頭を抱える。
「だから高校生一人に背負わせる内容じゃねぇって……」
だが。
林宗龍は続ける。
『だが』
『興味深い』
その瞬間。
市場モニターへ、
《MAY-LIN LIVE》が映し出された。
歌。
感情同期。
池袋救済。
Emotion Crash収束。
『お前は』
『市場で説明できない感情を動かしている』
美玲は静かに言った。
「……悪い?」
林宗龍は少しだけ笑った。
だが。
その笑みは、
どこか恐ろしかった。
『いや』
『だからこそ』
ヨコヅナ会議全体が静まり返る。
林宗龍の声だけが響く。
『東アジア市場は』
『お前を観測する』




