第八十八話 「ヨコヅナ九条ハヤト」
《YOKOZUNA NETWORK》
巨大企業紋章が、
コンテナハウス内部へ浮かび上がる。
金色の環。
東アジア市場統合紋章。
圧倒的威圧感。
レンは顔を引きつらせた。
「いやいやいや」
「なんでヨコヅナネットワークに繋がってんだよ!?」
《EYES》が警告を出す。
『東アジア超上位市場回線』
『接続権限:特級』
「特級ぅ!?」
藍華も固まる。
黒犬がゆっくりハヤトを見る。
「……お前」
「何者だ」
空気が変わる。
さっきまで軽薄だったハヤトが、
少しだけ静かになっていた。
煙草へ火を付ける。
赤い火。
ネオン。
コンテナの薄暗い部屋。
そして。
ハヤトは小さく笑った。
「元、だけどな」
沈黙。
レンの嫌な予感が最大になる。
「……おい」
ハヤトは椅子へ座った。
「九条家」
「東アジア市場連合の一角」
《EYES》が即座に反応。
《九条グループ》
東アジア感情市場上位企業群
⸻
ヨコヅナ階級認定企業
⸻
「はぁぁぁ!?」
レンの絶叫が響く。
「お前ヨコヅナ側かよぉぉぉ!!」
コメント欄爆発。
《まさかの》
《フィクサー強キャラ》
《ラスボス側じゃん》
ハヤトは苦笑する。
「だから元だって」
黒犬は警戒を解かない。
「なんで抜けた」
その瞬間。
ハヤトの笑みが少し消えた。
「……市場が人間を食い始めたからだ」
空気が静まる。
レンたちも黙る。
ハヤトはモニターを見る。
感情市場。
株価。
配信数値。
全部が高速で流れていた。
「昔は」
「まだ人間が市場を使ってた」
「でも今は逆だ」
煙草の煙が揺れる。
「市場が人間を支配してる」
レンは思い出す。
Emotion Crash。
感情市場。
数字依存。
全部繋がっている。
その時。
美玲が静かに言った。
「だから逃げたんだ」
ハヤトは少し笑った。
「まぁな」
「ヨコヅナは怖ぇぞ」
「LUXなんてまだ可愛い」
「嘘だろ……」
レンが顔を青くする。
LUXですら国家級。
それより上。
それがヨコヅナ。
ハヤトは続ける。
「特に今」
「MAY-LINは危険視されてる」
空気が重くなる。
「市場を動かしすぎた」
《EYES》が表示。
《MAY-LIN影響予測》
* 感情市場変動
* AI市場不安定化
* 国家世論変動
* 市場熱狂暴走
レンは頭を抱える。
「だから高校生に背負わせる話じゃねぇって……」
その時。
美玲は静かだった。
赤い瞳でモニターを見る。
「……来るね」
《EYES》が反応。
『YOKOZUNA高位通信接近』
ハヤトが苦笑する。
「とうとう」
「本物の化け物が来る」




