第八十一話 「感情災害指定候補」
「感情は――」
「管理するためだけにあるんじゃない」
《MAY-LIN LIVE》の赤いUIが、
朝焼けの池袋へ広がる。
赤い龍。
ネオン粒子。
感情波。
それが、
青白いLUXホログラムへぶつかった。
空気が震える。
レンは息を呑む。
今。
この街で。
世界最大配信者と、
世界最大感情管理企業が対峙している。
完全に国家案件だった。
その時。
白凛雪が静かに言う。
『感情は制御されなければ暴走する』
《EYES》が反応。
『LUX感情安定化理論』
青白いデータが空へ展開される。
⸻
《Emotion Control Theory》
人類感情総量増加
↓
社会暴動率上昇
↓
AI感情管理必須
⸻
「うわぁ……」
レンは顔をしかめる。
「完全に管理社会理論だ」
だが。
美玲は静かだった。
「知ってるよ」
白凛雪が少しだけ目を細める。
『当然です』
『あなたは林宗龍の教育下で』
『感情市場理論を学んでいる』
レンが美玲を見る。
上海大学。
マルクス主義学。
AI統治理論。
超高度英才教育。
彼女は。
LUX側の理屈も全部理解している。
その上で。
否定している。
美玲は空を見上げた。
「確かに」
「感情は暴走する」
池袋の街を見る。
Emotion Crashの傷跡。
崩れたネオン。
壊れた広告。
「でも」
赤い瞳が真っ直ぐ向く。
「だからって」
「人間の感情を数字だけで閉じ込めたら」
《MAY-LIN LIVE》が光る。
「もっと壊れる」
沈黙。
その瞬間。
コメント欄が一斉に流れ始めた。
《分かる》
《感情管理とか怖い》
《でも暴走も怖い》
レンは気づく。
これだ。
この作品の本質。
自由な感情。
管理される感情。
その間で、
人類は揺れている。
その時。
白凛雪が静かに告げた。
『ならば証明してください』
青白いホログラムが展開。
《LUX特別監査対象指定》
対象
《MAY-LIN》
⸻
観測期間
無期限
⸻
判定基準
「人類へ有益か、災害か」
⸻
池袋が静まり返る。
レンは顔を引きつらせた。
「うわぁ……」
「完全に世界に監視されるやつだ……」
だが。
美玲は少し笑った。
「いいよ」
赤い龍が揺れる。
「だったら」
「全部配信してあげる」
その瞬間。
《MAY-LIN LIVE》が再起動する。
『登録者数:8億2000万人』
『同時接続:15億9000万人』
レンは頭を抱えて絶叫した。
「会話してるだけで増えるなぁぁぁ!!」




