第七十九話 「ネオン都市の朝」
「だから増え方おかしいってぇぇぇ!!」
レンの絶叫が、
朝の池袋へ響き渡る。
通行人が振り返る。
だが。
誰も笑わない。
むしろ。
「MAY-LINだ」
「昨日の配信見た?」
「感情海マジでヤバかった……」
そんな声ばかりだった。
Emotion Crash事件。
それはもう、
単なる炎上事件じゃない。
世界規模の感情災害として拡散していた。
《EYES》がニュースを表示する。
⸻
《速報》
池袋Emotion Crash事件
MAY-LIN LIVE
感情汚染鎮静へ成功か
各国AI機関が調査開始
⸻
「うわぁ……」
レンは頭を抱える。
「完全に国家案件になってる」
その時。
藍華が缶ジュースを投げてよこした。
「当然でしょ」
レンが受け取る。
「10億以上接続したんだよ?」
「数字で言われると怖ぇな……」
藍華は苦笑する。
「もう《MAY-LIN》は」
「一配信者じゃない」
その言葉に、
レンは黙る。
確かにそうだ。
登録者7億8000万人。
同接15億超え。
国家。
市場。
都市。
全部へ影響を与えている。
なのに。
当の本人は。
「レンー」
ホットドッグ食べていた。
「温度差ぁ!!」
美玲は不思議そうに首を傾げる。
「お腹空いた」
「世界規模事件の直後なんだよ!?」
「戦った後だし」
「普通の部活みたいに言うな!!」
コメント欄爆笑。
《平常運転》
《MAY-LIN最強》
《レンの苦労》
その時。
《NOISE》が空を見る。
「……来る」
「え?」
瞬間。
池袋上空へ、
巨大ホログラムが展開された。
青白い企業ロゴ。
無機質なUI。
そして。
《LUX》
空気が変わる。
藍華の顔が険しくなる。
「最悪」
《EYES》が警告。
『東アジア感情管理企業
LUX通信接続』
レンは顔をしかめた。
「こんなタイミングで……」
その時。
ホログラム中央へ、
一人の女性が映る。
白銀のスーツ。
冷たい瞳。
機械みたいに整った顔。
そして。
彼女は真っ直ぐ美玲を見た。
『M-01』
空気が凍る。
美玲の表情が止まった。
レンは気づく。
この女。
LUX側の人間だ。
そして。
敵だ。




