第六話 「炎上と美少女配信者」
「いや笑い事じゃねぇだろ!!?」
レンの叫びが、
港湾第七学園の正門前に響いた。
周囲の学生たちは完全に騒然としていた。
「マジで本人?」
「《MAY-LIN》と一緒にいる!」
「やば、配信されてる!?」
「炎上案件だ!」
ホログラム端末が一斉に起動する。
撮影。
配信。
切り抜き。
SNS投稿。
数秒で拡散。
それが《NEO横浜電脳租界》だった。
「終わった……俺の学校生活終わった……」
「元からそんなキラキラしてなさそうだったけど」
「うるせぇ!」
レンは頭を抱える。
その隣で美玲は平然としていた。
黒パーカー姿のまま、
まるで散歩でもしている顔だ。
すると。
ピコン、と通知音。
レンの端末に大量のメッセージが流れ込む。
《お前なんでMAY-LINといるの》
《死ね》
《紹介しろ》
《裏切り者》
「地獄か?」
「人気者じゃん」
「違う意味でな!!」
その時。
学園ゲートが開く。
数人の黒服が現れた。
学園警備部。
企業提携型の準公安組織だ。
「朝霧レン君ですね」
「うわ来た」
「事情聴取にご同行を」
「拒否権は」
「ありません」
「ブラック企業かよ」
だがその瞬間。
美玲がレンの腕を掴んだ。
「ダメ」
「……は?」
彼女の赤い瞳が、
警備部を冷たく見据える。
「その子、私の配信契約者だから」
空気が止まる。
「…………は?」
レンが固まる。
警備部も固まる。
周囲の学生たちも固まる。
そして次の瞬間。
広場が爆発した。
「ええええええ!?」
「契約者!?」
「同棲!?」
「彼氏!?」
「違うからな!?」
レンは全力で否定した。
だが美玲は無視。
スマホ端末を掲げる。
『緊急ライブ開始♡』
瞬時に配信接続。
数百万視聴。
コメント欄が爆速で流れる。
《男いたの!?》
《脳破壊》
《レン殺されるぞ》
《租界終わった》
「なんで始めた!?」
「こういうのは先に空気取った方が勝ち」
「意味分かんねぇ!」
美玲はカメラへ笑いかける。
完璧な配信者の笑顔。
『みんな聞いて〜♡』
『この子ね、最近うちで配信手伝ってくれてるの』
レンは青ざめた。
「おい待て」
『だから監査局の人たち、あんまりイジメないでね?』
コメント欄がさらに加速する。
《かわいい》
《守りたい》
《レンそこ代われ》
《同居してる?》
「してねぇよ!!」
レンの叫びは誰にも届かない。
警備部側も完全に困っていた。
今この場でレンを連行すれば、
数百万視聴者の前で炎上する。
そして《MAY-LIN》の影響力は、
下手な企業より遥かに強い。
警備主任が苦い顔をした。
「……本件は後日再確認します」
「はいはーい♡」
黒服たちは去っていく。
レンは呆然と立ち尽くした。
「……助かった?」
「うん」
「いや絶対助かってない」
その時。
《EYES》が小さく反応した。
『対象:林美玲
感情状態:高揚』
レンは横を見る。
美玲は笑っていた。
今度は、
配信用じゃない。
本当に少しだけ楽しそうに。
「……アンタ、反応面白いね」
「俺の人生壊れてるんだが?」
「大丈夫」
彼女はニヤッと笑う。
「もっと壊れるから」




