第五十六話 「炎上都市の女王」
《池袋陥落!!》
歓声が、
北環状区を揺らしていた。
砕けた大型スクリーン。
燃えるネオン。
倒れた《BURN-BURN》。
その中心で。
美玲は広告板を肩へ担ぎ、
不敵に笑っている。
完全に悪役みたいだった。
「いや主人公側の登場じゃねぇだろ……」
レンが呆然と呟く。
だが。
コメント欄は完全熱狂。
《MAY-LIN!!》
《女王!!》
《池袋制圧!!》
《EYES》が通知を出す。
『池袋北環状区トレンド
1位:《MAY-LIN》』
「早すぎるだろ……」
藍華がニヤニヤしている。
「池袋は数字に敏感だから」
「都市ごとSNSかよ」
その時。
瓦礫の中から、
《BURN-BURN》がフラフラ立ち上がった。
「……化け物かよ」
その顔には、
怒りだけじゃない感情があった。
悔しさ。
興奮。
そして。
少しの憧れ。
《EYES》が反応する。
『感情変化検知』
レンは気づく。
まただ。
美玲は戦うたび、
相手の感情を変えていく。
《BURN-BURN》はハンマーを見下ろし、
小さく笑った。
「……クソ」
「なんだよその配信」
観客が静まる。
「炎上だけじゃ」
「こんな空気作れねぇ」
池袋の炎上王。
その男が、
初めて負けを認めていた。
だが次の瞬間。
上空。
大量の違法ドローンが飛来する。
ブゥゥン――
「……また?」
レンが顔を引きつらせる。
藍華の表情が変わった。
「マズい」
「今度は何だよ」
「池袋最大手」
空中スクリーンへ、
巨大ロゴが表示される。
《Riot Wire》
コメント欄がざわつく。
《出た》
《池袋トップ》
《炎上王》
レンは嫌な予感しかしなかった。
その時。
上空ドローン群の中央から、
一人の男が降下してくる。
白いロングコート。
銀色ピアス。
笑っているのに目が笑っていない。
そして。
背中には、
異常な数の配信端子。
《EYES》が警告を出した。
『高危険感情接続者』
男は広場へ着地すると、
ゆっくり拍手した。
「いやー」
「すげぇな《MAY-LIN》」
歓声が静まる。
池袋の空気が変わる。
男はニヤッと笑った。
「俺の街で暴れすぎだろ」




