第五十四話 「婚約者宣言」
『危険度上昇』
《EYES》の警告が点滅する。
レンは黒髪少女を見る。
眠そうな目。
ボロいパーカー。
だが。
その周囲だけ、
電子ノイズが揺れていた。
危険。
《EYES》はそう判断している。
だがその時。
《レン誰》
《彼氏!?》
《隣誰!?》
《MAY-LINとの関係教えろ!!》
コメント欄が、
急に別方向で暴走し始めた。
「なんで今そこ盛り上がるんだよ!!」
レンが叫ぶ。
池袋駅前広場。
観客もニヤニヤしていた。
「実際どうなんだよー!」
「付き合ってんのかー!?」
野次が飛ぶ。
美玲は広告板を肩へ担ぎながら、
面白そうに笑っていた。
絶対楽しんでる。
「レン」
「なんだよ」
「説明したら?」
「他人事みたいに言うな!」
その瞬間。
《BURN-BURN》が瓦礫の中から叫ぶ。
「リア充配信者かテメェらァ!!」
「そこなのかよ!?」
レンは限界だった。
もう色々限界だった。
だから。
勢いで叫んだ。
「父親公認の婚約者だー!!」
沈黙。
池袋駅前が止まる。
コメント欄停止。
世界中が止まったみたいだった。
そして。
《え????》
《婚約者!?》
《公式!?》
《林グループ公認!?》
爆発。
コメント欄がサーバー落ちしそうな勢いで流れる。
レンはハッとした。
「……あ」
「言ったね」
美玲が、
ものすごく楽しそうな顔をしていた。
「お前ぇぇぇ!!」
藍華は腹を抱えて笑っている。
「終わった!!」
「人生終わった!!」
だが。
世界の反応は違った。
《祝え!!》
《結婚配信しろ!!》
《同接3億いった!!》
「増えてる!?」
《EYES》が表示。
『MAY-LIN LIVE
同時接続:3億1200万人』
「なんでだよ!!」
その時。
黒髪少女が小さく呟く。
「……すご」
レンは顔を覆う。
もう全部遅かった。
だが。
美玲は隣へ来ると、
小さく笑った。
「でも」
赤い瞳が、
真っ直ぐレンを見る。
「嫌じゃなかったでしょ?」
レンの顔が真っ赤になる。
「うっ……」
《尊い》
《青春》
《レン落ちたな》
「コメント欄見るな俺ぇぇ!!」
その瞬間。
《BURN-BURN》が再び立ち上がる。
「イチャついてんじゃねぇぇぇ!!」
巨大ハンマー再展開。
観客大歓声。
だが。
美玲は笑った。
「レン」
「……なんだよ」
「婚約者なら」
彼女は広告板をレンへ投げる。
「ちゃんとサポートして?」
「無茶振りすぎる!!」




