第五十三話 「1億7000万人」
「派手にいこうか」
美玲が笑った瞬間。
池袋北環状区の空気が変わった。
ネオン。
爆発。
炎上配信。
全部が、
《MAY-LIN》へ視線を向ける。
《BURN-BURN》が巨大ハンマーを振り上げる。
「横浜の女王がよォ!!」
「池袋ナメんなァ!!」
ドォン!!
地面を砕く一撃。
だが。
美玲はもうそこにいない。
「うわまた消えた!?」
レンが叫ぶ。
八卦掌。
円歩。
ネオンの隙間を滑るみたいな高速移動。
次の瞬間。
美玲は駅前看板の上に立っていた。
完全に目立つ位置。
そして。
配信ドローン群が一斉展開。
《MAY-LIN LIVE》
《IKEBUKURO SPECIAL》
池袋中のスクリーンが切り替わる。
歓声。
コメント欄爆発。
《MAY-LIN!!》
《池袋侵略だ!!》
《黒犬戦の人だ!!》
その時。
レンの《EYES》が通知を出した。
『登録者数更新』
「ん?」
レンは表示を見て固まる。
『1億7000万人』
「は????」
思わず叫ぶ。
「増えすぎだろ!!」
藍華が吹き出した。
「黒犬戦の切り抜き、世界中で回ってるからね」
「いや増加ペースおかしいだろ!?」
「今世界で一番バズってる配信者だよ」
レンは頭を抱える。
たった数日前まで、
ただの学園生活だったのに。
今や。
世界最大級配信者の隣にいる。
《レン誰》
《レンうらやま》
《もう結婚しろ》
「コメント欄うるせぇ!!」
その時。
《BURN-BURN》が吠えた。
「数字だけで調子乗んなァ!!」
男は改造ハンマーを振り回しながら突撃。
だが。
美玲は笑っていた。
「数字ってね」
彼女は配信カメラへ向き直る。
「“誰が見てるか”の数なんだよ」
観客が静まる。
「つまり」
赤いネオンが瞳へ映る。
「それだけ“感情”が集まってるってこと」
コメント欄が一瞬止まる。
その空気を切り裂くように。
《BURN-BURN》が跳んだ。
巨大ハンマー振り下ろし。
だが。
美玲は駅前広告板を蹴り上げる。
空中回転。
キャッチ。
即席武器。
「またその辺の物使うのかよ!!」
「池袋の備品、軽くていいね」
次の瞬間。
広告板を振り抜く。
ドゴォン!!
《BURN-BURN》が吹き飛んだ。
《うおおおおお!!》
《池袋でも暴れてる!!》
《MAY-LIN最強!!》
その時。
隣の黒髪少女が、
小さく呟いた。
「……やっぱり本物だ」
レンはその横顔を見る。
この子。
ただのファンじゃない。
《EYES》が、
静かに警告を出していた。
『対象ネット接続数:異常』
『危険度上昇』




