第四十五話 「裏切りの配信者」
『……生きてみたい』
その言葉が。
NEO横浜中央立体広場へ、
静かに響いた。
歓声が止まる。
コメント欄も一瞬だけ止まった。
そして。
《うおおおおお!!》
《黒犬!!》
《戻ってこい!!》
《泣いた》
熱狂が爆発する。
《EYES》が解析を続ける。
『観客感情波:共感増幅』
レンは息を呑む。
今この瞬間。
1億人以上が、
《黒犬》へ感情移入していた。
感情を奪われた男。
その男が、
“生きたい”と言った。
それだけで。
都市全体が揺れている。
だが。
《YUNA》は完全に表情を失っていた。
『……処分対象へ変更』
空気が凍る。
「は?」
レンが顔を引きつらせる。
上空。
LUXドローン群が変形する。
大型砲門展開。
完全武装。
「おい待て待て待て」
藍華が本気で焦る。
「企業側キレてる!!」
《YUNA》は冷たく言った。
『裏切り配信者は不要です』
その瞬間。
《黒犬》の目が揺れる。
ほんの少しだけ。
恐怖。
レンは気づく。
この男。
ずっと“使い捨て”として生きてきた。
美玲が前へ出る。
「……感じ悪」
赤い瞳が冷える。
『MAY-LIN』
『あなたも同類です』
『商品として生まれた存在でしょう?』
広場が静まり返る。
レンは美玲を見る。
元LUX被験体。
M-01。
商品化された少女。
その事実を、
《YUNA》は突きつけた。
だが。
美玲は笑った。
「だから?」
ネオンが赤く光る。
「商品なら」
「勝手に売れると思うなよ」
《うおおおおお!!》
《言った!!》
《MAY-LIN!!》
コメント欄爆発。
レンですら鳥肌が立つ。
その時。
《YUNA》が静かに手を上げた。
『全機』
『戦闘配信モード移行』
ブゥン――
上空ドローン群が赤く変色する。
完全戦闘仕様。
観客席から悲鳴。
「ヤバい!!」
藍華が叫ぶ。
「本気で広場ごとやる気だ!!」
だが。
美玲は笑っていた。
むしろ。
楽しそうですらある。
「レン」
「な、何」
「配信切れてない?」
「むしろ世界一繋がってる!!」
「よし」
美玲はスタビライザーを回転させる。
八卦掌歩法。
配信ドローン群展開。
ネオン雨の中、
彼女は不敵に笑った。
「じゃあ世界中に見せようか」
赤い瞳が、
真っ直ぐ《YUNA》を見る。
「“本物の配信者”ってやつを」




