第四十話 「ネオン棍術」
ネオン雨。
火花。
歓声。
中央立体広場は、
完全に熱狂の渦だった。
《うおおおお!!》
《武器戦だ!!》
《MAY-LIN!!》
美玲は配信用ロッドを回転させる。
ブゥン――
金属音。
流れるような円運動。
ただの即席武器なのに、
彼女が持つと妙に映える。
「なんでそんな様になるんだよ……」
レンが呆然と呟く。
藍華が笑った。
「中国武術ってね」
「本来、日用品でも戦うんだよ」
「怖ぇ文化!」
その瞬間。
《黒犬》が動いた。
高速踏み込み。
高周波ナイフ連撃。
一直線。
殺意。
だが。
美玲は滑るように回避。
八卦掌。
円歩。
そして。
ロッドで相手の手首を払う。
ガギィッ!!
ナイフ軌道が逸れる。
そのまま。
詠春拳。
短棍連打。
「白鶴棍」
バババッ!!
超近距離ラッシュ。
《黒犬》が初めて防戦へ回る。
《うおお!?》
《近距離エグい!!》
《何この動き!?》
コメント欄爆速。
《EYES》が解析する。
『詠春拳短器械応用』
「武器ありでも近ぇ……!」
レンは息を呑む。
普通の武器戦じゃない。
美玲の動きは、
“魅せる”前提で完成されている。
カメラ映え。
視線誘導。
ネオン反射。
全部計算済みだった。
その時。
配信ドローン群が、
自動でスロー演出を入れる。
《MAY-LIN LIVE》
視点切替。
超接近戦。
雨粒スロー。
観客絶叫。
「編集うま!?」
「リアルタイム演算だよ」
藍華が笑う。
「今の配信者は映像監督も兼ねてる」
未来怖すぎる。
その瞬間。
《黒犬》が強引に踏み込む。
体当たり。
軍用制圧術。
だが。
美玲は逆に前へ出た。
「――八極」
踏み込み。
震脚。
ロッドを短槍みたいに突き出す。
「雷轟靠」
ドォンッ!!
衝撃。
《黒犬》が数メートル吹き飛ぶ。
観客大歓声。
《うおおおおお!!》
《ヤバすぎ!!》
《MAY-LIN最強!!》
レンは立ち上がる。
「入った!!」
だが。
《黒犬》は倒れない。
地面を滑りながら停止。
そして。
ゆっくり顔を上げた。
その時。
《EYES》が反応する。
『感情波形上昇』
「……え?」
《黒犬》の口元が、
ほんの少しだけ動いた。
笑っていた。
『……楽しい』
観客が静まり返る。
レンは息を呑む。
感情を消された男。
その男が今。
初めて、
戦いを楽しんでいた。




