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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第四話 「九龍街の配信王女」

 レンは走っていた。


「待て待て待て待て!! なんなんだよこの街!!」


「今さら?」


 美玲は屋上の縁を軽々と飛び越える。


 ネオンの雨。


 巨大広告。


 遠くに見える横浜港。


 そして背後から迫る黒い監視ドローン群。


『対象追跡中』


『違法感情AI保持者を確保します』


「学生一人に火力高すぎだろ!!」


「アンタが《EYES》なんか持ってるから!」


「お前のせいでもあるだろうが!」


 二人はビル屋上を駆け抜ける。


 下では夜市が光り、

 電子看板が多言語で点滅していた。


 《NEO横浜電脳租界》。


 眠らないネオン都市。


 そして、

 国家ですら完全には支配できない街。


 その時だった。


 美玲が突然立ち止まる。


「……よし」


「は?」


 彼女はスマホ型端末を操作した。


 直後。


 向かいの雑居ビル群が、一斉に発光する。


「え」


 レンが目を見開く。


 窓という窓に、

 リングライト。


 配信カメラ。


 ホログラム背景。


 無数の配信設備。


「な、なんだこれ……」


「配信部屋」


「いや多すぎるだろ!?」


 ビル三棟。


 そのほぼ全フロアが、

 配信スタジオ化されていた。


 ゲーム実況。


 歌配信。


 雑談。


 ASMR。


 企業案件。


 海外向け配信。


 数百枚のモニターがネオンのように瞬いている。


 レンは絶句した。


「……全部お前の?」


「うん」


「うんじゃねえよ」


 美玲は当然みたいに言った。


「九龍街だけで三百七十二部屋」


「は?」


「池袋側に百二十」


「待て」


「神戸湾岸区に二百ちょい」


「待てって!!」


 レンの脳が追いつかない。


「お前……何者なんだよ」


 美玲は少し黙った。


 ネオン光が横顔を照らす。


「……林グループって知ってる?」


 レンの動きが止まる。


「は?」


「だから林グループ」


「いや、あの林グループ?」


 知らないわけがない。


 上海系資本と香港系海運財閥が合流してできた、

 アジア最大級の湾岸企業群。


 物流。

 金融。

 配信。

 AI通信。

 都市インフラ。


 《NEO横浜電脳租界》そのものに食い込んでいる怪物企業。


「……え、マジ?」


「マジ」


「お前、そこの……」


「創業家」


 レンは頭を抱えた。


「終わった……」


「何が?」


「俺、絶対関わっちゃダメな奴と関わってる」


「失礼だな」


 その時。


 背後からドローン音。


『対象補足』


『拘束を開始します』


「うわ来た!!」


 黒い戦術ドローンが屋上へ降下する。


 だが美玲は動じない。


 むしろ、

 呆れたように笑った。


「遅い」


 彼女が指を鳴らす。


 瞬間。


 周囲のビルの窓が一斉に開いた。


「……は?」


 数百の配信カメラが、

 一斉にドローンへ向く。


 ライブ配信開始。


『ゲリラ配信きた!!』

『EVA監査局!?』

『また租界で暴れてる』

『炎上案件!?』


 コメント欄が爆速で流れる。


 ドローン側の動きが止まった。


『……周辺視聴数増加を確認』


『公開制圧リスク上昇』


「まさか……」


 レンは美玲を見る。


 彼女は不敵に笑った。


「この街で一番強いのはね」


 赤い瞳がネオンに光る。


「銃でも政府でもない」


 そして。


 無数の配信画面を背に、

 租界の女王は言った。


「“視聴者数”だよ」

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