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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第三十八話 「感情を失った男」

『微弱感情反応検知』


 レンは目を見開いた。


「……感情?」


 《EYES》の表示は間違っていない。


 ほんの一瞬。


 《黒犬》の感情波形が揺れた。


 まるで。


 心が動いたみたいに。


 ステージ中央。


 ネオン雨の中で、

 《黒犬》は静かに美玲を見ていた。


「……面白い」


 低い声。


 観客がざわめく。


《喋った!?》

《黒犬が!?》


 藍華も驚いていた。


「嘘でしょ……」


「何が?」


「アイツ、自分から感情出したことない」


 レンの背筋が少し寒くなる。


 感情抑制改造。


 戦闘効率だけを残された男。


 そんな人間が。


 今。


 “面白い”と言った。


 美玲は肩を回しながら笑う。


「やっと人間っぽくなったね」


『……感情はノイズだ』


「でも今、楽しかったでしょ?」


 沈黙。


 《黒犬》は答えない。


 だが。


 《EYES》は確かに反応していた。


『感情波形:上昇』


 レンは気づく。


 美玲の戦い方は、

 ただ勝つためじゃない。


 相手の感情を引きずり出している。


 それはまるで。


 “配信”そのものだった。


 コメント欄も熱狂していく。


《熱すぎる》

《黒犬変わった?》

《MAY-LINの空気に飲まれてる》


 その瞬間。


 《YUNA》がモニター越しに小さく眉をひそめた。


『黒犬』


『遊ばないで』


 空気が変わる。


 《黒犬》の目から、

 再び感情が消えた。


『……了解』


 直後。


 ステージ床が爆ぜる。


 高速突撃。


 今までより速い。


「うおっ!?」


 レンですら見失う。


 《黒犬》は美玲の死角へ回り込んでいた。


 警棒連撃。


 軍用格闘術。


 人体急所狙い。


 完全に殺しの動き。


 だが。


 美玲は一歩踏み込む。


 超近距離。


 詠春拳。


 受け流し。


 連打。


 肘。


 掌打。


 寸勁。


「白鶴連閃」


 ババババッ!!


 怒涛の近距離ラッシュ。


 《黒犬》の体勢が崩れる。


《近っ!?》

《速すぎて見えねぇ!!》

《香港映画じゃん!!》


 レンが息を呑む。


 八極拳の破壊力。


 八卦掌の回避。


 そして。


 詠春拳の超近距離制圧。


 全部が自然に繋がっている。


「……強ぇ」


 その時。


 《黒犬》が初めて後退した。


 観客どよめき。


 だが。


 美玲は追わない。


「ねぇ」


 彼女は静かに言った。


「アンタ、昔は何が好きだったの?」


 ステージが静まり返る。


 《黒犬》の動きが止まる。


 その瞬間。


 《EYES》が大きく反応した。


『感情ノイズ増幅』


 レンは息を呑む。


 今の言葉。


 効いた。

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