第二十八話 「ネオン都市の熱狂」
『登録者数
7,840万人』
数字の増加が、
もう現実感を失っていた。
レンは九龍街を見下ろす。
ネオン。
雨。
巨大モニター。
そして。
街中の人々が、
同じ配信を見ていた。
《MAY-LIN!!》
《横浜ヤバすぎ》
《リアル電脳都市》
《世界同接更新中》
「……都市全部がライブ会場じゃねぇか」
「そういう街だし」
美玲は窓枠へ腰掛ける。
夜風が銀髪を揺らした。
配信ドローン群が、
彼女の周囲を滑らかに旋回する。
レンは思わず見惚れた。
本当に、
絵になる。
《MAY-LIN》という存在自体が、
このネオン都市に似合いすぎていた。
その時。
上空のLUXドローン群が陣形を変える。
『制圧モード移行』
「うわ」
大型制圧機の砲口が展開される。
レンの顔が引きつった。
「いやいやいや!」
「配信中なんだけど!?」
「向こう気にしてないだろ!」
次の瞬間。
ドローン群が一斉突撃。
だが。
「――展開」
美玲が静かに呟く。
ブゥンッ!!
撮影ドローン群が高速起動。
赤い軌道を描きながら、
一斉に空へ飛び出した。
「うおっ!?」
レンが目を見開く。
ドローンたちは、
まるで群れだった。
同期。
回避。
連携。
普通の配信機材じゃない。
完全に戦術機動。
《EYES》が解析する。
『群体AI制御』
『感情同期飛行』
「感情同期で飛んでる……?」
「視聴者熱量を演算補助に使ってる」
「意味分かんねぇ!」
その瞬間。
撮影ドローン群が、
LUX機へ突撃した。
激しい空中戦。
ネオン雨の夜空に、
火花が散る。
コメント欄が爆発。
《映画じゃん》
《メイリン強すぎ》
《ドローン戦アツい》
《レン叫び係》
「最後やめろ!」
だが。
レンは気づいた。
視聴者の熱狂に合わせて、
撮影ドローンの動きが鋭くなっている。
『感情同期出力上昇』
「……マジか」
美玲は笑っていた。
《MAY-LIN》の笑顔。
配信者としての顔。
だけど今回は、
前より自然だった。
「レン!」
「何!?」
「コメント読んで!」
「なんで今!?」
「大事だから!」
レンは混乱しながらモニターを見る。
《メイリン頑張れ!》
《負けるな!》
《世界が見てる!》
その瞬間。
《EYES》が新たな反応を示す。
『感情同期変質』
『依存型から応援型へ移行』
レンは目を見開いた。
「……変わってる」
「え?」
「視聴者の感情だ」
熱狂は同じ。
でも中身が違う。
支配された依存じゃない。
“応援”だ。
その時だった。
九龍街全域の巨大モニターへ、
周天宇の顔が映る。
『なるほど』
白スーツの男は、
少しだけ楽しそうに笑った。
『ならば次の段階へ進みましょう』
次の瞬間。
NEO横浜全域の照明が、
一斉に赤く染まった。




