第二十四話 「租界の逃走劇」
「この女、ちょっと戦うの好きだ」
「失礼」
美玲は真顔で言った。
「かなり好き」
「自覚あんのかよ!」
地下街のネオンが激しく明滅する。
爆発音。
銃声。
ドローン駆動音。
地下層K-13は完全に戦場になっていた。
『M-01を確保します』
『抵抗時は制圧』
「制圧って毎回物騒なんだよ!」
レンが叫ぶ。
だがLUX側は本気だった。
黒い戦術ドローンが、
狭い地下路地を高速飛行してくる。
「来る!」
美玲がレンの腕を掴む。
二人は横路地へ飛び込んだ。
直後。
後方の屋台が吹き飛ぶ。
火花。
蒸気。
赤提灯が燃える。
「地下街壊れてる!!」
「あとで請求されるかも」
「嫌すぎる!」
その時。
張老師が古い端末を投げて寄越した。
「坊主!」
「うおっ!?」
「地図だ!」
ホログラム地図展開。
地下層K-13。
迷路みたいな構造。
無数の路地。
旧中華街区画。
廃通信路。
レンは目を回しそうになる。
「広すぎるだろ!」
「昔は本当に街だったからな」
張老師がニヤリと笑う。
「迷うと二度と戻れんぞ」
「観光案内みたいに言うな!」
美玲が地図を確認する。
「最短なら東市場区」
「でも今そこLUXいる」
「なら西側抜ける」
「待て待て俺ついていけてない!」
その瞬間。
《EYES》が危険反応。
『高速接近物体』
「美玲!」
ドローンが曲がり角から突っ込んできた。
だが。
「遅い」
美玲が前へ出る。
踏み込み。
回転。
そして。
回し蹴り。
バゴンッ!!
ドローンが壁へ叩きつけられる。
「蹴りで壊した!?」
「軽量型だから」
「意味分かんねぇ!」
だが次の瞬間。
撃墜されたドローンが赤く点滅する。
『自爆シーケンス開始』
「うわ!」
「走るよ!」
二人は全力疾走。
直後。
後方で爆発。
地下街全体が揺れる。
レンは息を切らしながら叫んだ。
「配信部屋ってどこにあんだよ!?」
「地上」
「戻るの!?」
「近い部屋使う」
美玲は当然みたいに答える。
「九龍街に三百七十二部屋あるし」
「その数字聞くたび怖ぇんだよ!」
だが。
彼女の表情は少し変わっていた。
さっきまでの怒りだけじゃない。
配信者としての顔。
《MAY-LIN》の顔。
《EYES》が感情を表示する。
『感情状態:闘争
高揚
覚悟』
レンは嫌な予感しかしなかった。
「……なあ」
「何」
「その撮影ドローン、本当に配信用なんだよな?」
数秒沈黙。
美玲は振り返り、
ちょっと悪い笑顔をした。
「配信者ってね」
ネオンが赤く瞳を照らす。
「アンチ対策も必要なんだよ」




