第二十三話 「感情は数字になる」
『現在登録者数
4,870万人』
地下街が静まり返っていた。
レンはモニターを二度見する。
「……いや増え方おかしいだろ」
「普通に怖い」
美玲ですら若干引いていた。
だがコメント欄はさらに加速していく。
《地下街エグい》
《メイリン守りたい》
《これ映画じゃないの?》
《リアル配信!?》
《MAY-LIN LIVE》は、
既に東アジア圏トレンドを独占していた。
同時接続人数。
異常。
感情熱量。
異常。
そして。
《EYES》は別の数値を表示していた。
『感情同期率上昇』
「……ッ」
レンの顔が険しくなる。
「美玲」
「何」
「視聴者側にも同期始まってる」
美玲の表情が変わった。
「どのレベル?」
「軽度興奮だけじゃない」
レンはモニターを見る。
『共感依存傾向増加』
『感情没入率上昇』
「マズい……」
周天宇の声が響く。
『リアルでしょう?』
『人は作り物より、“本物の感情”へ熱狂する』
『恐怖』
『怒り』
『恋愛』
『命懸け』
『全部、最高のエンタメだ』
「狂ってる……」
レンが吐き捨てる。
だが。
周天宇は笑った。
『違います』
『市場原理です』
地下街のモニター群へ、
膨大な広告が流れ始める。
《MAY-LIN応援パック》
《感情共有ライブ》
《限定応援エモート》
「うわぁ……」
レンが本気で引く。
「戦闘中に課金導線出してる……」
「LUXらしい」
美玲は冷たく言った。
だがその瞬間。
地下街奥で爆発。
ドローン部隊がさらに侵入してくる。
『地下回線座標を確認』
『M-01を拘束します』
「数多すぎ!」
レンが叫ぶ。
地下住民たちも応戦しているが、
徐々に押され始めていた。
張老師が低く言う。
「長居は無理だな」
「地下回線ってどこにあるんだ?」
「K-13最深部」
老人は暗い路地奥を指した。
「だが今は封鎖されとる」
「はぁ!?」
「LUXが先回りした」
レンは頭を抱えた。
「終わった……」
その時。
美玲が何かを考え込む。
数秒後。
「……一回戻る」
「は?」
「配信部屋」
レンが目を瞬かせる。
「今!?」
「このままだと戦力足りない」
「いや足りないとかそういうレベルか?」
美玲は真剣だった。
「撮影ドローン持ってくる」
「撮影?」
「配信用カスタム機」
「嫌な予感しかしない」
美玲はニヤッと笑う。
「私のドローン、普通の配信機材じゃないから」
その時。
《EYES》が小さく反応した。
『対象:林美玲
感情状態:高揚』
レンは察した。
この女。
ちょっと戦うの好きだ。




