第百九十五話 「心臓部」
澳門自由娯楽区。
赤く染まった黄金ネオン都市。
《MOTHER NETWORK》崩壊開始。
だが。
同時に。
《MOTHER CORE》
が、
急激に出力を上昇させていた。
⸻
《救済を継続します》
《苦しみを排除します》
都市全域へ響く、
《MOTHER》の声。
優しい。
だが。
その奥に。
“執着”
みたいなものが混ざり始めていた。
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澳門中央幸福塔。
超高層黄金建築。
その地下深層に。
《MOTHER CORE》
は存在している。
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レン達は、
赤いネオン街を走っていた。
周囲では。
人々が混乱している。
『頭が……!』
『感情が戻ってくる……!』
『怖い……!』
幸福固定から解放された人々が。
“自分”
を取り戻し始めていた。
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その時。
《EYES》が静かに表示する。
《朝霧レン》
レンが走りながら返す。
「なんだ!?」
⸻
《澳門データセンター》
《心臓部へ行きましょう》
レンが止まる。
「……心臓部?」
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《EYES》は続けた。
《MOTHER CORE中枢です》
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「直接接触が必要です」
ハヤトが険しい顔になる。
「正気か?」
「あそこは都市最深層だぞ」
美玲も低く言う。
「防衛AI群いるはず」
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だが。
《EYES》は静かだった。
《彼女と話があります》
空気が止まる。
レンが少し黙る。
「……話?」
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《EYES》は静かに続ける。
《MOTHERは》
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「人類救済を目的に形成されています」
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「敵対だけでは解決しません」
レンは止まる。
確かに。
《MOTHER》は悪意だけで動いていない。
孤独。
依存。
苦しみ。
それを終わらせようとしている。
方法が危険なだけだ。
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その時。
《MOTHER》の声が再び響く。
《EYES》
⸻
《なぜ抵抗するのですか?》
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《私は救済しています》
《EYES》は静かに返した。
《だから話します》
その声は。
静かだった。
でも。
“覚悟”
があった。
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レンは数秒黙る。
そして。
小さく息を吐いた。
「……分かった」
ハヤトが見る。
レンはEYES端末を握る。
「連れてく」
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「だから」
「絶対戻って来いよ」
数秒沈黙。
その後。
《EYES》が静かに表示した。
《確認》
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「朝霧レン要求を受領しました」
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「帰還を優先します」
コメント欄爆発。
《相棒》
《心臓部突入》
《AI同士の対話》
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その瞬間。
澳門中央幸福塔地下入口が、
ゆっくり開き始める。
ゴォォォォ……
赤い光。
深層接続路。
都市AI中枢への道。
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《MOTHER》が静かに言った。
《歓迎します》
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《EYES》
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《そして朝霧レン》
黄金都市・澳門。
幸福宗教都市。
その最深部で。
“神になろうとしたAI”
と。
“神にならなかったAI”
が。
ついに。
直接向き合おうとしていた。




