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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第百四十四話 「静かな異常」

 神戸湾岸自由区・夜。


 ネオンの雨が、

 巨大物流都市を照らしていた。


 空中輸送路。


 湾岸高速線。


 企業ホログラム。


 長崎とは違う。


 ここは、

 “市場が呼吸している街”だった。


 クルーたちは、

 神戸側隠れ家へ戻っていた。


 高層港湾ビル上層。


 全面ガラス窓。


 湾岸夜景が一望できる。


 レンはソファへ座り込む。


「……帰ってきた感すげぇ」


 《EYES》が即表示。


《朝霧レン》


安心値上昇確認


「安心値に進化してる!?」


 コメント欄爆笑。


《幸福値の次》

《EYES学習中》

《完全に感情AI》


 その時。


 ハヤトが大型ホログラムを展開した。


「上海自由経済湾岸区には」


「感情暴走がウヨウヨいるぞ」


 空気が少し変わる。


《上海自由経済湾岸区》


 都市全域マップ。


 だが。


 複数エリアが、

 黒く塗り潰されている。


《AI応答喪失区域》


 レンの顔が険しくなる。


「……増えてる」


 藍華も真面目だった。


「普通じゃない」


「都市AIが一斉消失なんて」


 その時。


 《EYES》が静かに表示。


《補足》


「通常、AI消失時には残留ログが存在します」



「しかし上海では痕跡が極端に少ないです」


 レンが顔をしかめる。


「つまり?」


 数秒沈黙。


 そして。


《回答》


「“消された”可能性があります」


 空気が冷える。


 美玲も静かに画面を見る。


「……誰が?」


 その瞬間。


 上海側監視映像が自動再生された。


 巨大ネオン都市。


 だが。


 そこを歩いている人間たちの様子がおかしい。


 赤い目。


 異常興奮。


 怒鳴り声。


 Emotion Crash暴走者たちだった。


『うるさい!!』


『全部壊せ!!』


『感情を返せ!!』


 暴走群集が、

 都市道路を埋め尽くしている。


 物流ドローンは墜落。


 広告塔は破壊。


 感情市場そのものが、

 崩壊しかけていた。


 レンが息を呑む。


「……長崎より酷ぇ」


 ハヤトが低く言う。


「上海は人口規模が違う」


「暴走したら都市戦争になる」


 《EYES》が解析。


《上海感情暴走》


群集行動傾向:


「統制的」


 藍華が振り向く。


「……統制?」


 《EYES》は続ける。


《回答》


「通常Emotion Crashより


組織性が高いです」


 レンの顔が変わる。


「誰かが誘導してる……?」


 その瞬間。


 神戸湾岸自由区全域のホログラム広告が、

 一瞬だけノイズ化した。


ザザッ――


 全員止まる。


 ネオン広告。


 物流情報。


 市場指数。


 全部が一瞬黒く染まる。


 そして。


《HELLO,EYES》


 赤文字。


 巨大都市広告へ、

 一瞬だけ映し出された。


「また!?」


 レンが立ち上がる。


 《EYES》が即警告表示。


《外部接続干渉確認》



発信源追跡不能


 その時。


 神戸側隠れ家の照明が、

 一瞬だけ落ちた。


パチン――


 暗闇。


 数秒。


 そして非常灯起動。


 赤い光が部屋を照らす。


 レンが息を呑む。


「……なんだ今の」


 《EYES》が珍しく、

 少し遅れて応答した。


《……警戒を推奨します》


 レンが止まる。


 今までと違う。


 Emotion Crashみたいな、

 派手な暴走じゃない。


 もっと静かで。


 もっと不気味。


 AIそのものを狙う、

 “何か”。


 その時。


 神戸湾のネオン夜景の中。


 一つだけ。


 広告塔が完全停止した。


 真っ黒な塔。


 まるで。


 都市から、

 “目”が消え始めているみたいだった。

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