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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第十三話 「LUX」

《LUX》。


 白銀の円環ロゴが、

 赤い校内モニターに不気味に浮かぶ。


 レンは眉をひそめた。


「……有名なのか?」


「超有名」


 美玲の声は低かった。


「東アジア最大級の感情AI企業」


 暴走生徒たちの呻き声が廊下に響く。


 だが美玲はモニターから目を離さない。


「元々は医療AI企業だった」


「それが今は?」


「感情産業」


 レンは嫌な予感しかしなかった。


「感情を……売ってる?」


「そう」


 美玲は苦々しそうに言う。


「人間の“好き”を分析して、依存を最適化する」


「……怖」


「恋愛アプリ。配信広告。推し文化。SNS依存。全部つながってる」


 レンは言葉を失う。


 《EVA》社会。


 感情を数値化する時代。


 その先で、

 企業は“感情そのもの”を市場化していた。


「じゃあ今の暴走って……」


「多分テスト」


「テスト!?」


「どこまで人間の感情を制御できるか」


 レンの背筋に寒気が走る。


 そんな時代、

 冗談じゃない。


 その瞬間。


 校内放送にノイズが混じる。


『被験体反応良好』


『依存誘導率、想定以上』


 男の声。


 愉快そうだった。


『特に《MAY-LIN》への感情集中は素晴らしい』


 美玲の表情が凍る。


「……やっぱり」


「知ってる奴か?」


「多分」


 彼女は唇を噛む。


「私の昔のスポンサー」


「は?」


 レンが固まる。


「いや待て。スポンサーって配信の?」


「うん」


「その会社ヤバすぎない?」


「だから切った」


 美玲はモニターを睨む。


「三年前に」


 その時。


 廊下の先から、

 複数の暴走生徒が走ってきた。


「MAY-LIN!!」


「会いたかった!!」


「俺だけ見てくれ!!」


「うわぁ……」


 レンが本気で引く。


 感情暴走。


 だがその根本には、

 “依存”があった。


 美玲は前へ出る。


「レン、下がって」


「いや数多すぎる!」


「大丈夫」


 彼女は静かに息を吐いた。


 次の瞬間。


 動く。


 速い。


 中国武術の歩法。


 最小動作で懐へ入り、

 相手の重心を崩す。


 一人。


 二人。


 三人。


 投げる。


 打つ。


 制圧。


 まるで流れる水みたいだった。


「何その映画みたいな動き!?」


「八極拳ベース」


「分からん!」


 だが。


 数が減らない。


 次々と生徒が現れる。


 《EYES》が危険表示を出した。


『感情暴走拡大中』


『校内感染率:31%』


「感染率ってなんだよ……」


 レンは青ざめる。


 その時。


 美玲が小さく息を呑んだ。


「……ッ」


「おい?」


 彼女の足が止まる。


 《EYES》が反応する。


『対象:林美玲

精神負荷増大

ストレス急上昇』


 レンは気づいた。


 彼女も限界に近い。


 無理もない。


 今この場の感情暴走、

 全部が《MAY-LIN》へ向けられている。


 悪意。


 依存。


 執着。


 感情の濁流だ。


 その時だった。


 美玲の端末へ着信。


 発信者表示。


《林グループ本家》


 美玲の顔色が変わる。


「……お父様?」


 レンは初めて見る。


 租界の女王が、

 明確に動揺した顔を。

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