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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第百二十話 「EMOTION SIREN」

 長崎港外縁部。


 海霧の中。


 黒い巨大構造物が、

 ゆっくり海面上へ姿を現していた。


 錆びた通信塔。


 海底ケーブル。


 崩れたネオン警告灯。


 そして。


《EMOTION SIREN》


 古い企業ロゴ。


 2090年代初期型。


 感情市場黎明期の遺物。


 レンは息を呑む。


「……兵器?」


 ハヤトが低く答える。


「ああ」


「感情同期を利用した」


「初期型感情誘導兵器だ」


 《EYES》が高速解析。


《EMOTION SIREN》


分類


* 旧式感情操作施設

* 海底通信型

* 広域感情汚染装置



主用途


* 集団心理誘導

* 市場操作

* 暴動誘発

* 情報戦支援


「終わってる兵器だな!?」


 コメント欄も騒然。


《ヤバすぎ》

《感情兵器》

《海底遺産》


 その時。


 海底施設から、

 また“歌”が流れた。



♪――――



 歪んだ旋律。


 怒り。


 不安。


 孤独。


 負の感情だけを増幅する音。


 港湾作業員たちが再び苦しみ始める。


「頭が……!」


「イライラする……!」


 Emotion Crash拡大。


 《EYES》が警告を最大化。


《危険》


広域感情汚染進行



長崎電脳居留区全域波及可能性


 レンの顔が青ざめる。


「街まで行くのか!?」


 ハヤトが舌打ちした。


「このままだと長崎全部飲まれる」


 その時。


 海上ニュースホログラムが緊急速報へ変わる。


《速報》


長崎感情波異常上昇



市場一時停止開始



海上交通封鎖準備


 港がざわつく。


 ネオン街が不安に揺れ始める。


 その瞬間。


 美玲が静かに前へ出た。


 海風。


 ネオン。


 赤い瞳。


 《MAY-LIN LIVE》。


 同接はさらに増えていた。


《同時接続:18億7000万人》


「増え方怖ぇよ!!」


 レンが叫ぶ。


 だが。


 美玲は真っ直ぐ海を見る。


「……レン」


「ん?」


「止める」


 その声は静かだった。


 でも。


 強かった。


 《EYES》が解析。


《MAY-LIN LIVE》


感情同期出力上昇



“対抗歌唱モード”移行


 ハヤトが驚く。


「おい待て」


「それ以上出力上げると」


「お前の脳に負荷が――」


 だが。


 美玲は止まらない。


 マイクを握る。


 海霧が揺れる。


 ネオンが光る。


 そして。


 歌い始めた。



♪「Listen to me」


♪「感情は奪わせない」


♪「君はまだ、人間だ」



 歌声が、

 海上都市全体へ広がる。


 港。


 市場。


 路地。


 坂道。


 長崎電脳居留区全体へ。


 《EYES》が震えるように表示した。


《感情波衝突開始》


MAY-LIN LIVE


VS


EMOTION SIREN


 2092年。


 長崎の海で。


 “感情”そのものを巡る戦いが、

 本格的に始まった。

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