第百二話 「海上都市」
神戸湾岸自由区・夜。
ネオンの海。
自動貨物船。
海上ドローン群。
巨大広告ホログラム。
空と海の境界すら、
ネオン光で曖昧になっている。
レンはサーバールームを出て、
海上デッキへ出た。
「……すげぇな」
池袋とは違う。
ここはもっと“大人の都市”だった。
金融。
物流。
市場。
東アジアの金が、
全部ここを通って流れている。
《EYES》が表示する。
《神戸湾岸自由区》
東アジア湾岸市場流通率
『32%』
「三割ここ通ってんの!?」
コメント欄爆笑。
《規模がバグ》
《神戸強すぎ》
《港湾サイバーパンク》
その時。
海上高速道路の向こうで、
巨大ネオン広告が点灯する。
《感情先物市場》
《Emotion Future》
レンが顔をしかめる。
「感情先物ってなんだよ……」
《EYES》が解析。
《Emotion Future》
“未来の感情変動”を売買する市場
⸻
主用途
* 炎上予測
* 配信熱狂予測
* 群衆心理投資
「終わってるだろこの時代」
その時。
後ろから声。
「だから神戸は危ねぇ」
ハヤトだった。
海風で金ジャケットが揺れる。
「ここは」
「感情すら金融商品になる街だ」
レンは海上都市を見る。
ネオン。
金融タワー。
無数の広告。
全部が金の匂いだった。
その時。
《MAY-LIN LIVE》通知。
《神戸湾岸ライブ切り抜き》
再生数急上昇
レンが頭を抱える。
「神戸来ても増えるのかよ……」
ハヤトが笑う。
「神戸市場は数字好きだからな」
その時。
《EYES》が新警告を表示した。
《異常市場反応》
MAY-LIN関連感情先物急騰
⸻
湾岸市場熱狂率上昇
「うわ」
レンの顔が引きつる。
「また市場動いてる」
その瞬間。
神戸湾岸自由区の巨大金融塔。
そこへ。
青白い企業ホログラムが出現する。
《LUX》
空気が変わる。
そして。
別方向。
金色の巨大市場ロゴ。
《YOKOZUNA NETWORK》
レンは絶句した。
「うわぁ……」
「神戸」
「完全に戦場じゃん」
海風が吹く。
ネオンが揺れる。
感情。
市場。
金融。
全部が交差する海上都市。
神戸湾岸自由区。
ここで。
新しい戦いが、
本格的に始まろうとしていた。




