第百話 「接続」
ノーマッド地下拠点。
サーバールーム。
青白い冷却蒸気が漂う中、
朝霧レンは電脳接続椅子の前へ立っていた。
神経接続コード。
感情同期端末。
違法AI補助機構。
完全に危険装置だった。
「……本当に大丈夫なんだろうな」
《EYES》が静かに答える。
『生存率は高水準です』
「高水準って言い方怖ぇよ!」
コメント欄爆笑。
《始まる》
《ネットランナー覚醒編》
《主人公回》
その時。
ハヤトが端末を操作する。
《深圳ネットランナー職業訓練高等専門課程》
初期接続プロトコル起動
サーバールーム全体が光る。
青白い回線。
感情波同期。
都市ネット接続。
レンは深呼吸した。
怖い。
普通に怖い。
だが。
もう引き返せない。
LUX。
ヨコヅナ。
感情市場。
全部と向き合うには、
力が必要だった。
その時。
美玲がレンの隣へ来る。
「レン」
「……ん?」
赤い瞳が真っ直ぐ向く。
「無理しないで」
レンは少し笑う。
「今から危険機械に入る奴へ言う台詞か?」
「でも」
美玲は小さく言った。
「帰ってきて」
沈黙。
レンは少しだけ驚く。
その言葉は。
世界最大配信者じゃない。
ただの女の子の声だった。
レンは笑う。
「……おう」
その時。
黒犬が腕を組みながら言う。
「死ぬな」
「言い方!」
藍華も苦笑する。
「まぁでも」
「レンなら案外適応しそう」
ハヤトが親指を立てた。
「最悪脳焼けても生きてりゃ何とかなる」
「怖ぇこと言うなぁぁぁ!!」
コメント欄爆発。
《いつもの》
《フィクサー最低》
《でも良いクルー》
その瞬間。
《EYES》が表示する。
《接続開始》
レンは椅子へ座った。
神経コード接続。
視界が青白く染まる。
心臓が速い。
その時。
《EYES》の声が、
いつもより近く聞こえた。
『朝霧レン』
『これより』
『都市感情ネットへ接続します』
次の瞬間。
世界が反転した。
ネオン。
広告。
感情波。
都市全体の情報が、
一気に脳へ流れ込む。
「っ……!!」
レンの視界が砕ける。
だが。
その奥。
無限に広がる電脳都市が見えた。
巨大広告群。
感情市場データ。
AI回線。
そして。
空を覆う、
金色と青白い巨大ネットワーク。
《LUX》
《YOKOZUNA NETWORK》
レンは息を呑む。
「……これが」
《EYES》が静かに告げた。
『ようこそ』
『都市電脳層へ』
ネオン都市2092。
感情と市場に支配された世界で。
一人の少年が、
本当の“ネットランナー”への第一歩を踏み出した。




