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婚約破棄?とっくに破棄されてますが何か?  作者: クロネコ


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3/4

後編


王城の大広間に、再び人々が集っていた。

だが今宵の空気は、あの舞踏会とは明らかに異なる。


華やかさの裏に漂う、緊張。そして、何かが決定される予感。


「これより、重要な発表を行う」


玉座の前に立つ国王の声が、広間に響き渡る。貴族たちは一斉に頭を垂れ、その言葉を待った。


その中に、私とレオンハルト殿下の姿もある。


そして、少し離れた位置に第一王子クラウス殿下。

顔色は優れず、どこか落ち着きを欠いている。


当然でしょうね。


ここ数日の出来事を思えば。


地方での混乱は収まらず、むしろ拡大。その責任の所在は、すでに明らかになっている。


さらに――


「まず、第一王子クラウスについてである」


国王の一言で、空気が張り詰めた。クラウス殿下の肩が、わずかに震える。


「度重なる政務の失態、並びに虚偽の報告。加えて、私的な判断による不適切な命令が確認された」


ざわめきが広がる。


もはや、隠しきれる段階ではない。


「これらを総合的に判断し――」


沈黙が、やけに長く感じられた。


「クラウスの王位継承権を、ここに剥奪する」


息を呑む音が、広間に広がった。


「なっ!?」


クラウス殿下が、勢いよく顔を上げる。


「お、お待ちください、父上!それはあまりにもーー」


「黙れ」


短く、しかし鋭い一言。

それだけで、すべてが封じられる。


「王たる者に必要なのは、責任を果たす力だ。お前には、それが欠けていた」


「私は、私はやれます!まだ――」


「機会は与えたはずだ」


静かな声。だがそこに、情はない。

事実だけが積み重ねられている。


言葉を失うクラウス殿下。

その姿に、もはやかつての威厳はなかった。


「続いて、第二王子レオンハルト」


国王の視線が、こちらへ向く。


「これまでの政務への貢献、並びに諸侯からの評価を踏まえ――」


レオンハルト殿下が一歩前へ出る。


「お前を、次期王太子とする」


再び、ざわめきが広がる。だがそれは、先ほどとは違う。納得と、期待を含んだもの。


「謹んで、お受けいたします」


レオンハルト殿下は静かに頭を下げた。その姿に、誰も異を唱える者はいない。


当然でしょう。


すでに答えは出ていたのだから。


「また、それに伴い――」


国王の言葉が続く。


「エレノア・フォン・アルヴェルトを、王太子妃と認める」


一斉に視線が集まる。

私はゆっくりと前へ進み、礼を取った。


「身に余る光栄にございます」


静かに、しかしはっきりと。これで、すべてが定まった。そのときだった。


「・・・エレノア」


かすれた声。振り返るまでもない。誰のものか、分かっている。


「待ってくれ」


足音が近づく。


周囲から制止の声も聞こえたが、構わずに進んできたのだろう。


そして――目の前に現れた。


かつての婚約者。


今は、全てを失った男。


「何用でございますか」


私は静かに問いかける。

感情は乗せない。

必要がないから。


「やり直せないか……?」


やはり、その言葉ですか。

予想通りすぎて、驚きもない。


「・・・どういう意味でございますか」


「お前と、もう一度・・・」


必死に言葉を繋ぐ。


だが、その内容はあまりにも空虚だった。


「私が間違っていた。あの時は、どうかしていたんだ」


伸ばされる手。

縋るような視線。


――けれど。


私は一歩、静かに下がった。

その距離が、すべてを物語る。


「殿下」


ゆっくりと口を開く。


「無理ですわ」


「・・・え?」


短く、しかし明確に否定する。


「殿下は、ご自身の意思で選択なさいました」


一言一言、確かめるように。


「そして私は、その結果を受け入れただけでございます」


静寂が続く。一息空けて、私は告げる。


「やり直す、という前提が成立いたしません」


彼の表情が、徐々に崩れていく。


「そんな」


「申し訳ございませんが」


私は視線を逸らさず、告げる。


「もう、終わった話ですわ」


それが、すべて。

それ以上でも、それ以下でもない。


崩れ落ちるように、その場に立ち尽くす彼。

だが、誰も手を差し伸べる者はいない。


それが彼の選んだ結末。


私はレオンハルト殿下のもとへ戻る。


「お待たせいたしました」


「いや」


彼は穏やかに首を振った。


「必要なことだった」


短い言葉。だがそこには、確かな理解があった。


私はそっと微笑む。そして、並び立つ。王太子と、その妃として。


広間には再び音楽が流れ始める。今度こそ、本当の意味での祝福の旋律。


その中で、私は思う。


――過去は終わった。


だからこそ、前へ進める。選び取った未来へ。迷いは、もうない。


静かに幕を閉じた一つの物語の、その先へと――。

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