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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
6章下 学園祭と決断

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17話 学園祭2

「おっす父さん、さっき振りだね」


2年Bクラスなどというチンケな空間に足を運んでくれたのは我が愛すべき父さんだった。他の来場者もいないようで早速ウチのクラスの注目の的となっている。人の親とは思えない容姿と笑顔だからね、そりゃ視線を集めても仕方ないね。


「しかし早い到着だね、まだ9時過ぎだよ?」

「ゆーくんが教室に居る時間は聞いてたからね、お母さん見送ってからすぐ来たんだ」


成る程。父さんは母さんが家にいると外に出られない呪いにかかっているからな、大変お労しい。


そして父さんが今日学園祭に来たということは母さんは学園祭に来ることを拒否したのだろう。でなければ明日一緒に来ていただろうし。あれだけ人見知りで社会人として成り立っているのだろうか、我が母親ながら謎である。


「こ、こんにちは!」

「出雲ちゃんだね、こんにちは」


先程まで言い争っていた出雲は、どこか緊張したように父さんに挨拶していた。


くくく、友人たちが父さんに対してぎこちなくなるのを見るのは大変気分が良い。人類として最高クラスに位置するお方だからな、当然といえば当然なのだが。


「いつもありがとうね、ゆーくんと仲良くしてくれて。これからも仲良くしてくれると嬉しいな」

「は、はい! それは勿論!」


しまった。油断している隙に父さんの数少ないバッドステータスである『親バカ』が発生している。放置をすると一生僕を持ち上げるのでやめさせないと。ちなみにもう一つあるバッドステータスは『妻の呪い』である。


「出雲、せっかくだから父さんを案内してくれ」

「そっか、それもそうね」


僕が毎朝朝食の手伝いをしていることを父さんが語り出したあたりで横槍を入れる。気持ちは嬉しいんだけど照れ臭いのでぶった斬ります。


「ウチのクラスの出し物は『陽嶺虚構クイズ』というもので、新聞みたいなテイストで陽嶺高校の説明をしているので、合ってると思ったら◯、間違ってると思ったら×とこの紙に書いてください。5問あるので全問正解したらお菓子と交換です」

「成る程」


出雲の説明を聞きながらパーテーションに貼り付けられた模造紙に目を移す父さん。大方僕が把握している通りだったが、肝心のクイズの中身を見ていなかった。学校の一部を切り取った内容だと思うが、何が書かれているのだろうか。


『《誰が見ている?》

 陽嶺高校の音楽室で部活動に励むAさんは、相棒であるフルート忘れて帰路についてしまう。電車に乗る前に気付いたAさんは急いで学校に戻ったが、普段とは違いところどころ照明が切れた廊下を歩く。少し怖がりながらも音楽室に着いたAさんは無事フルートを見つけ出した。部屋の照明を消して部屋を出ようとした瞬間、中から一斉に視線を浴びせられたような感覚に陥る。慌てて照明を点けると、視線を感じた方向にはベートーヴェンとモーツァルト、バッハ、シューベルトの肖像画があるだけである。そんなわけはない、彼らはただの絵、視線など向けてくるわけはないのだ』


「……」


クイズ、というよりちょっとした小説のような文章を読んで一息吐く。


……なんでホラーテイストなんだろう。


模造紙に貼られた偉人たちの写真もモノクロで雰囲気が出てるし、怖がらせたいという制作者の意図を感じるな。


とはいえここで問われてるのは『Aさんなんていなかった』とかいうホラーな展開などではなく、肖像画が文章の4人で合っているかというものだろう。


呆気ない感じもするが、試みとしては面白いと思う。このクイズのおかげで音楽室に参加者を誘導することができるし、ブラスバンド部が出し物をしているならちょっとした販促にもなる。偉人の名前と顔が一致するように勉強できるのもなかなかない体験だ。


楽しく学校を回る機会を与えられているのは来場者にとっても喜ばしいことだが、クラス出し物というより生徒会出し物って感じだな。僕が提案しておいてなんだが。


「もしそれぞれの教室に向かうのが大変でしたら、写真のカットもお見せできるのでお申し付けください」


唯一の欠点としてこの教室で完結しないことを挙げようとしたら、出雲の案内でそれさえも対策済であることが分かった。僕も雨竜もほとんど関わってないというのに、去年の学園祭も出雲に任せて良かったんじゃなかろうか。


「ありがとう出雲ちゃん。いい機会だからいろいろ回ってみるよ」


出雲に優しく微笑むと、父さんは他の模造紙のクイズを一つ一つチェックする。父さんなりに楽しんでくれているなら何よりだ。


「ちょっとちょっと! ご家族なんだからあなたが案内しなさいよ!」


父さんが遠慮したのだろう、案内の役目を終えたらしい出雲が小声で指摘してきた。


「いや、来場者はお前が案内するって言ってただろ?」

「初っ端からあなたのお父さんだと思わなかったのよ! もう、すっごく緊張したじゃない」


出雲は手でパタパタと仰ぐように熱を冷ましている。大丈夫かな、40代の色気を発しすぎてないかな。この子は雨竜の彼女候補なのであんまり眩しい笑顔は抑えてね。


「それじゃあゆーくん、クイズ解いたら戻ってくるけど、ゆーくんはここに居ないかもだよね」


全てのクイズを読み終えた父さんは、これから虚構クイズの聖地を訪れるようだ。いろんなところで初恋泥棒をしないか心配である。


「うん、時間によっては体育館にいるかも。その後も友達と回るしほとんどここにはいないかな」

「了解。これから雨竜君に会うならよろしく伝えといてね」

「オッケー。せっかくだし父さんも楽しんでってね」

「ありがとう。ゆーくんも楽しむんだよ?」

「大丈夫だってば」


軽いやり取りを交わしながら父さんの見送りを完了する。普段は能面ロリババアに時間を奪われているんだ、今日くらいは気楽に羽を伸ばしてほしい。


父さんが居なくなると少し静かになる2-B教室。まだ早い時間の上に展示という地味な出し物、閑古鳥が鳴くのもしょうがないところはある。


暇つぶしに、他のクラスはどうなっているのか廊下に出て確認してみようとしたところで、



「おっ、ちょうどいいところに!」



女性の声で話しかけられたような気がして振り返る。


そこには、髪が赤茶色と随分派手な見た目をした女性が立っていた。


……えっ、やば。こんな色の髪、初めて見たかもしれない。炎タイプに憧れてしまったのだろうか。もしくはイチゴを食べすぎちゃったか。


そもそも今日は生徒関係者しか入れないはずだが、いったい誰の家族なんだ? もしかして日付を間違えた一般人か?


視界のインパクトに若干脳がやられていると、赤茶さんが僕を呼び止めた理由を述べてくれた。



「青八木雨竜君ってこのクラスで合ってるよね、いる?」



なんだ。迷い込んだ雨竜のファンか。

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