11話 後は勝つだけ
更新遅くなり申し訳ありません。
また、初投稿から7年経過したようです、これからもよろしくお願いします。
女子たちとの会合を中抜けした僕は、そのまま来た道をUターンしていた。
あのままあの空間に居続けていたら、他のお客人に僕が男装趣味の女子と捉えられ兼ねないため撤退した。お店で目の合ったマダムの温かい笑顔が忘れられない、間違いなく僕の性別を勘違いしていた。
全く、こんな男前が女子4人と戯れてるんだからもっと怪訝そうにしてくれないと。「何々なんなの修羅場?」が正しい反応ですからね。
まあ和気藹々と学園祭の話をしていて修羅場の修の字もなかったわけなのだが。
「あっ、廣瀬先輩!」
やはり僕にはワイルドさが足りないから顎髭でも実践してみようかと思っていると、丁度校門から出てきたらしい蘭童殿と目が合った。よくよく見ると雨竜たち生徒会メンバーも揃っているようだ、遅くまでご苦労なこって。
「ちょっと廣瀬、最近生徒会サボりすぎでしょ?」
一緒に居た真宵がすかさずいちゃもんをつけてきた。
「あのな、僕はそもそも生徒会役員じゃないだろ」
「知らないわよ、あたしが困ったらだれが助けるのよ」
「他の生徒会メンバーだよ」
相変わらず僕を奴隷か何かだと思っているらしい。雨竜もそうだが、コイツらの友情の定義ってどうなってるんだ?
「だいたい今って謎解きの問題作ってるんだろ、僕は手伝えないぞ」
「なんでよ、手伝った後に記憶なくして参加すれば良いじゃない」
とりあえず、真宵はストレスが溜まっていることを理解した。今の彼女とは道徳を踏まえて会話できなさそうなので、唯一生徒会役員ではない助っ人へ声を掛けた。
「先輩、謎解きの首尾はいかがですか?」
この中で1番幼なそうに見える元生徒会長の藤宮先輩は、僕の問いに笑顔で答えた。
「悪くないよ! ある程度問題は溜まってきたから難易度の調整をこれからしていく感じ!」
「学園祭準備、地味に作問が1番大変なんですよね……」
明るい様子の藤宮先輩とは対照的に、蘭童殿の表情には苦労の色が見て取れた。単純な事務作業とは違い謎解きの作問は頭を使うからな、運動とはまた別の疲労が蓄積されてそうだ。
「廣瀬君はこんな時間まで何を? 1度学校を出てたみたいですが」
生徒会活動に慣れているからか、まだ余裕がありそうな楠伊緒が、学校外に居たことに対して疑問を投げてきた。
ここで正直に晴華達と喫茶店に居たことを言うのは簡単だが、遅くまで学園祭準備に勤しんでいる若人達の顰蹙を買うのは明らかである。特に金髪の会計あたりから。
「クラス出し物のアイデア整理だ。学外に目を向けるのもアリかと思ってな」
そういうわけで誰も傷付かない優しさ溢れる嘘をつく僕。決して後ろめたさを隠したいわけではない、知らぬが仏を体現しているだけである。
「嘘つけ、お前がそんな殊勝な真似するか」
しかしながら、僕の優しさは空気の読めないアホ生徒会長には伝わらなかったようで。
「だいたいお前、これ以上は手伝わないみたいなこと御園さんに言ってただろ。そもそもウチのクラスの出し物で学外行く必要ないし」
「……」
「来た方向的に神代さん絡みか。そういえばさっきウチの学年女子に包囲された男子が居たとか居ないとか、どうせお前のことだろう」
蝶ネクタイメガネ顔負けの推理をさも当然のように披露する雨竜。そして少しずつ厳しくなっていく周りの視線。
この後、僕が事実を打ち明け皆さまに糾弾されたのは言うまでもない。慣れないことなどするものじゃない、改めて僕は自身にそのことを刻み込んだ。
ー※ー
「なんか疲れた顔してんな」
「誰のせいだよ誰の」
その後生徒会メンツと別れ、電車に揺られて帰っていると、諸悪の根源から他人事のような口振りで話を振ってきた。
「こちとら平和的解決の為に心を痛めて嘘をついたってのに」
「だったらあんなバレバレな嘘はやめるこったな。分かりやすすぎてイジってほしいのかと思ったぞ」
「何だその高度な構ってちゃんは。そんな趣味持ち合わせたつもりねえよ」
先程までの生徒会連中とのやり取りで疲弊していたのに、雨竜まで面倒臭いことを言ってきて溜息が漏れる。日頃から穏やかな学校生活を送りたいと主張しているのに誰にも理解されないのは何故なのだろうか。
まあいい。僕ほど崇高な人間の考えが理解されないのは人類史を振り返っても仕方ないこと。若者達の小言なんて僕の広い懐で受け止めてやろうじゃないか。
「お前さ、なんか変わった?」
それは唐突に雨竜が発した言葉だった。普段と変わらない会話の一端のようで、ずっと投げたかった本題のようにも聞こえた。
「休み明けから微妙に雰囲気変わったというか、覚悟が決まったというか」
相も変わらず、人間離れした洞察力に恐れ入る。僕としては変わったつもりなどなかったわけだが、分かる奴には分かるらしい。
「さあ、どうだかな」
だが、その疑問に馬鹿正直に応えるつもりはない。僕の覚悟は全て、学園祭で解き放つと決めている。雨竜に余計な茶々を入れられてその覚悟がブレるようなことだけは避ける。
まあ雨竜が僕の本気を茶化すような奴ではないのは分かっているのだが。
「今の僕は生徒会出し物でお前に勝つことしか考えてないよ」
話題を変えるように敢えて挑発するような言葉を選ぶと、雨竜は一瞬面を食らったようだったが、すぐに表情を綻ばせた。
「……まったく、2学期は楽しいことづくめでホントに退屈しないな」
体育祭に生徒会選挙に学園祭、確かに僕は雨竜に燃料を投下しまくってる気がする。生徒会選挙については僕は被害者だが。
「その余裕、すぐに刈り取ってやるよ」
「アホか、お前相手に余裕なんてねえよ」
臨戦体制を取るかのように言葉の応酬をする僕と雨竜。
今年の学園祭も去年とはまた別のベクトルで慌ただしくなるのだと悟った。




