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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
6章下 学園祭と決断

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10話 乙女たちの語らい13

「あーあ、ユッキー先帰っちゃった」


晴華の馴染みの喫茶店で学園祭絡みの話をしていた彼女たちだったが、一緒に来ていた雪矢だけ用事があると言って先に帰ってしまった。


「しかもお金まで、大丈夫って言ってくれてるのに」


その上、自分が飲んだドリンクの代金を置いて出て行ってしまっている。お金が掛からないからこの店に連れてきたのに、代金を払わせてしまっては流石に申し訳なくなってくる。


「ハルちゃん、おじさん受け取れないし明日そのまま返したら?」

「ううん、もらいづらいかもだけど受け取って。ここでそのまま返したらユッキー、2度とここ来てくれないだろうし」

「ありゃりゃ、それならしょうがないなぁ」


晴華の知り合いでもある店長は、彼女から雪矢のお金を受け取ることにした。晴華の友人から受け取るつもりはなかったが、それで彼女の友人関係にほつれが出るようならば強制させるつもりはない。


「あのう、今更ですがホントにいいんですか?」


雪矢の支払いを見て、自分たちはサービスで良いのか心配になる出雲。前に晴華と来たときもお金は出していないし、流石に聞かずにはいられなかった。


「いいのいいの。元々ここはウチの両親が老後の趣味として始めたもので採算なんて度外視だから。ハルちゃんたちの憩いの場になってるならそれが何よりだよ」

「そうですか」


店長の笑顔を見て出雲はホッと息を吐いた。自分たちが訪れたせいで経営が悪化したなんて言われても何の責任も取ることができない。だったら代金くらい払うべきだと思ったが、それは杞憂ということらしい。


「というかたまに手伝いに来てくれるハルちゃんにお給料も出してないし、これくらいはしないと」

「ええ、そんなの全然良いのに! あたしが好きでやってることだし!」

「いやいや。どこから聞きつけたか知らないけど、ハルちゃん目当てのお客様がたくさんいるんだから。看板娘にはそれ相応の対価はあるものです」

「そっか。ここが潰れないなら何でも良いけどね」

「お陰様でまだまだやっていけそうだよ」

「えへへ」


話が途切れたタイミングで、店長はカウンターへ戻っていく。先程まで楽しげな表情を浮かべていた晴華だったが、急に気落ちしたように頬とテーブルをくっつける。


「あたし、ユッキーに避けられてる気がする」


そう言って、雪矢との現状を吐露し始めた。


「ラインのやり取りも最低限だし、朝もあたしより早く来るから校門で会わないし、昼は予定あること多いし、謎解きの件だって相談なかったし」

「それくらい雪矢の行動範囲内って感じがするけど、今日だって一緒に話してたじゃない」

「そうだけどそうじゃないの! いつもできてる些細なことができてなくて、それが重なって違和感になって、とにかく避けられてる感じがするの!」

「晴華ちゃんから避けられそうな心当たりはあるの?」


感覚的な訴えをする晴華に、雪矢の態度が変わりそうな心当たりがあるか確認をする美晴。それが分かれば、親友の悩みを解消する方法が見つかるかもしれない。そう思って疑問をぶつけたのだが、



「うーん、なんだろ。キセイジジツを作るって言ったくらいかな?」

「ぶふっ!」

「ぎゃああ!」



晴華の爆弾発言で朱里がいちごミルクを吐き出し、その余波を顔面で受けることになった出雲。思わず悲鳴が口から飛び出した。


「ごめん出雲ちゃん!!」


朱里は自身の口周りを拭きながら、出雲へウェットティッシュを手渡した。


「ちょちょ、2人ともどうしたの?」


美晴でも目を見開く状況にも関わらず、未だ自分の発言のヘビーさを理解していない晴華。あまりに呑気な口振りに、1番被害が大きかった出雲の我慢が限界を突破した。


「どうしたの、じゃないわよ! 既成事実って、あなた意味分かって言ってるの!?」

「当たり前でしょ、そこまで子どもじゃないよ!」

「だったら余計問題でしょうが! あなたは、その、身体の関係から始めようとしてるのよ!」


自分で言葉にして恥ずかしくなってくる出雲。じわりじわりと頬が熱くなっているのを感じた。


「だってユッキーと付き合いたいんだもん! 1回フラれてるしユッキーだっていつまでもフリーなわけじゃない、なりふり構ってられないよ!」

「だからって、あなた」

「別にそこに拘ってるわけじゃないよ。あたしだって付き合う前に触れ合うのは抵抗あるけど、ユッキー相手なら結果そうなっても良いってだけだから」


初めこそ呆れていた出雲だったが、晴華の強い想いを聞いて二の句を継げなくなっていた。


陽嶺高校でその名を知らない者は居ないと言われるような美少女。相手を選ばなければ引く手数多であろう彼女が、こうまでして1人を想っている事実にあらためて驚かされていた。


そして、それを聞いた目の前の親友がどう思ったのかも気になった。


「晴華ちゃん、本当に雪矢君が好きなんだね」


少しだけ続いた静寂を破ったのは美晴。まだ残っている自分のいちごミルクを差し出しながら笑顔を向ける。


「……うん、好き。大好き」

「晴華ちゃんみたいに自分の気持ちを正直にぶつけられるのは立派なことだと思う。雪矢君は困っちゃうかもだけど、これからも頑張って欲しい」

「うん! いっぱい頑張っちゃうから!」


しんみりとした空気は、仲睦まじい2人のやり取りでゆっくり和らいでいった。相変わらずの姉妹やら親子のようなやり取りに出雲は微笑ましくなったが、晴華の猛攻を見逃してはいけない。


「たまには押さずに引いてみたらどうなの? 恋愛なんだから駆け引きだって重要でしょ」


もっともらしく晴華にブレーキをかけさせようと提案してみたが、彼女はジト目で出雲を見るだけ。


「……それでユッキーがアクション起こしてくれると思う?」

「いや、まあ、それなりに時間が経てば」

「それなりってどれくらい? その間ユッキーと話せないわけなんだけど」

「……」


必死な様相の晴華にまたしても何も言えなくなる出雲。自分で提案しておきながら、とても駆け引きが有効とは思えなくなってきた。


「ズーちんはいいよねー、ユッキーと同じクラスなんだもん。わざわざ作戦考えなくてもお話できるし」


そう言われて出雲はハッとした。雪矢と仲が良い女子はそれなりに居るが、同じクラスなのは自分だけだということに。


「授業やクラスイベントもずっと一緒なんてズルい! ズルすぎる!」

「いや、ずっと一緒ってわけじゃ」

「……確かにズルい」

「朱里まで!?」


目の前の親友にまで寝返られ、さらにあたふたしてしまう出雲。晴華の悩み相談からどうしてこの流れになってしまったのやら。


「Bクラスは雨竜君もいるしね」

「そうそう! ユッキーとウルルンが一緒なんて絶対楽しいに決まってるもん! やっぱりズーちんズルい!」

「あなただって去年は同じクラスだったでしょうが!」

「去年はユッキーとそこまで仲良くなかったもん! 今同じクラスになりたい!」

「ワガママ言わない!」


晴華の暴走を諌めながらも、自分は運が良かったのだと思う出雲だった。

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