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事件です! やっと一歩前進

「・・・これ、人体に有害だろ絶対」


 だって、どう見てもタール。

 どう表現してもオイル臭。


「大丈夫や、こんなやけど驚く程に人体には無害やから」

「何で無害なのか、逆に問いただしたい」

「何4でやろなホンマ。味なんかマジ機械油なんやで?分析魔法で味んとこにしっかり表示されとるとか、わけ分からん仕様やけど」


 うわー・・・やっぱ臭いまんまの味かよ。つか先輩、何故今その情報を?


 宿屋の部屋で変身薬の小瓶を握りしめて早30分。気分は無実の罪で上る十三階段。

 何でこの世界は俺にこんなに辛く当たるのか。俺、勇者だよ?救世主だよ?


「お待たせにゃっ!とびきり甘いチャー貰って来たにゃ」


 扉を開ける音に、飼い猫の仇を見る目で凝視していた小瓶から離れた視線が捉えたのは、鍋一杯のチャイに似たミルクティ、チャーを持った天使とうら(鍋持ってたから尻尾で扉は開けたらしい)。

 それ見たら無意識に蓋を外していた小瓶を持ち上げ、口腔に流し込んでいた。

 何て言うか、よく分からないけど多幸感?猫見たら悩んでたこともどうにかなるような錯覚起こすんだよ。

 人生何とかなりそうな猫本も持ってたし。わりかしそれ見て何とかしたし。


「・・・ホンマ猫がよう効くなぁ」

「ぐっ・・・ガハッ・・・げっ・・・ぐヴ・・・」


 でも今回駄目でした。

 飲んだ瞬間、床に崩れ落ちる。

 もう衝撃どころじゃない。機械油味(飲んだ経験無いけど)に、喉を焼く辛みと形容する言葉が死滅する苦味、これで人体無害って絶対嘘だろ。心疾患あったら確実心臓麻痺で召されるレベル。

 そしてのた打つ俺を生暖かい目みてる先輩。

 見てないで助けてっ!マジヤバいっ!コレマジヤバイッ!!


「にゃーっ!マレ、しっかりするにゃっ!まず息するにゃっ!ちゃんと息を吸うのにゃっ!」


 冷たい先輩とは違い、トウラは必死に俺の横で一生懸命世話してくれてるけど、息をしろと言いながら、チャーを口に流し込まないでっ!溺れるからっ!

 この時、ちょっと真面目に何か川原っぽい場所が見えてた。

 後から思えば臨死体験だよなあれ。

 でも川原一杯に咲き誇るのは彼岸花じゃなくて、鳴き声姦しい金魚な草だったけど。


「・・・先輩、あれマジアカンやつ」


 何とか鍋一杯のチャーと回復薬3本消費してこの世に帰還。


「すまん、この薬の上位品がやたら味の向上を謳ってた理由がようわかったわ」


 聞けばこの薬、粗悪品だろうが上位品だろうが、効果や変身時間は全く変わらない仕様と来たもんだ。


「因みに先輩、俺が飲んだのは?」

「・・・・・・」

「ちょっ!何で黙るんすかっ!何で目ぇ死んでんすか!まさか、粗悪品?!」


 効果変わらんないからって、何飲ませたんだこのクソ賢者っ!?


「ごめんな、マレ。・・・試作品や」

「正規品ですら無かったっ?!」


 メイドイン先輩ですか!?つうか作ったならちゃんと味見しろよ!!


「鍋に材料入れて火にかけるだけ、味以外は正規品と変わらんのに、市場に出回ってへん理由を痛感した。供給あっても需要ゼロじゃ出回らんわな・・・。でも確実にお亡くなりの森よかましかと思たんやけどな」

「とんとんだったすよ?途中川原まで行ったよ俺?」


 金魚が不気味な川原にな。

 牛と馬の門番には会わなかったけど、確実に地名SA・I・NO・KA・WA・RAに。


「悪かったって。ホンマそこまでヤバイ味やと思わんかってんて」


 先輩も悪かったと思っているらしいが、簡単に許せるものでもない。先輩にジト目を向けながら、尻尾をタシタシ床に叩きつけ、不機嫌オーラ全開で抗議する。

 ん?尻尾?


「おお!」


 ナチュラルな行動の違和感に振り返れば、そこには白に近いクリーム色で先だけがココアをまぶしたようなブラウンの、立派な尻尾が。

 試しに意識してみれば自在に動かけせた。

 つまりこれMY尻尾!


「今度埋め合わせするから、今は機嫌治したってや」


 変化に気づき意識がそれた所で、先輩が再度の謝罪と一緒にどこからか鏡を取り出し貸してくれる。

 けど何で微妙に笑いそうなんすかね?そんなひどいの俺?

 不信な様子に、まさかのブサネコイフラグかと、恐る恐る鏡を覗く。

 いや、どんなでも猫は可愛いけど、自分の面だとまた話しが違ってくるワケで・・・。


 結果、ブサネコではなかった。

 覗きこんだ鏡からは、白に近いクリーム色が主体で、尻尾と同じくココアブラウンがワンポイントが耳の先、顔の中心、鏡を持つ手も手首から先に入り、大きな黒目がチャームポイントの、どこかで・・・、そうどっかの厳つい装備品で固めた狩人の隣に立ってそうな容姿の猫人がこっちを見ていた。


「えっと・・・旦那だんにゃさん、これから宜しくお願いしますにゃ?」


 思わず立ち上がって先輩に向かってペッコリっとお辞儀する。最早義務感すら感じて。


「俺、剣は持てへんから、ボウガンか弓装備せなあかん使命感が半端ない」


 先輩もしっかりノってくれる。ガンナー仕様ですね。了解です。

 防御が低いしちょうど良いと思うっすよ。


「にゃ~いとこのイルアとシャルムに似てるにゃ。お洒落さんなお洋服が似合う毛並みにゃ、うらやましいにゃ」


 そして茶虎のトウラから毛を貰ったのに、シャム風と言うか、ベーシックオトモカラーというかになったわけは、多分ここ。

 猫の毛並みってマジどこの世代の遺伝子が覚醒するかわかんないから、親兄弟みんなバラバラとかも有る。どうやら猫人も同じらしい。


「ん?トウラの毛並みも可愛いくて俺、好きだけど?」

「にゃにゃにゃっ!」

 フワフワ茶虎。文句なく可愛いだろう。兄のツルサラ黒モップも捨てがたいけど。

 どっちかだと思ってただけに、中々予想外な仕上がり。

 タフそうだけどな。滅多な事じゃ死なないイメージだし。


「確かにこのフワ感はええなぁ」

「うにゃにゃにゃっ!」


 にしても、さっきから照れてるトウラ可愛い。

 やっぱり猫人相手に毛並を褒めるのは正解みたいだ。


「で、こっちは・・・案外柔い毛なんやな。オトモに近い感じやからもっと毛質強いかと思た」

「うにっににっ先輩先輩、頭もげるもげる」


 そして、フワフワでもそう気安く触れないトウラおんなのこに変わって、容赦なくワシャれるおれへ先輩の魔の手が。

 猫好きとして、オトモ(もどき)に触りたい気持ちは良く分かるので多少は我慢するが、手加減プリーズ!ワレ注だから。コワレモノ注意だがら!


「にゃ~仲良しさんだにゃ~」


 誘拐事件解決の為のチームのはずなのに、なんでこうも緊張感に欠けるのか。

 それでも、これで囮は仕上がった。

 後は、餌に獲物がかかるよう神頼み・・・は無駄だから、運頼みで頑張ろう。

 結構不運ポイントたまってるから、そろそろでかいラッキーがあってもいい筈だ。

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