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事件です!4

サブタイトル間違えてました・・・。

3じゃなくて4です。

 腹ごしらえした後に向かったギルドでは、案の定と言うべきか本気にしてもらえなかった。

 一応報告書は受け取ってもらえたけど、期待はしない方がいいレベル。受付の人苦笑いしてたよ。

 まあ、ホント誰得って話しだしな。俺も被害者がトウラたちじゃなきゃ、どんな間抜けだよって笑ってた自信が有る。てか、ローグだけなら笑ってた。

 だって、亜人の冒険者って身体の能力的に人よりかなり恵まれてる。

 その種族特有の有利不利はあれど、有利な条件下に対するアドバンテージは同レベルなら人の倍は軽いだろうし、爪や牙、角といった生まれ持った武器もある。

 人は、どこにでも道具や魔法次第で対応できる強みはあれど、器用貧乏感が否めないんだよな。

 極めればどこまでも行ける可能性もあるわけだけど。それもごく一部のそれこそ目覚めた人たちだけだろう。

 そんなわけで、亜人の冒険者を態々攫って回る連中が居ると報告したところで、普通はまともに扱ってもらえるかどうかは怪しい。でも、こっちにはトウラがいるし、実の兄であるローグの行方が知れないのだからもう少しまともに対応してもらえると踏んでいたのだが読みが甘かった。


「あかん、ここまで相手にされんとは思わんかった」

「ぎぶみぃけんりょく・・・ぎぶみぃちめいどぉぉ・・・」

「にゃぁ・・・」


 三人してぐったりと広場のベンチに座り込み現状を嘆く。


「やっぱもうちょっとギルドとか、酒場とか顔出して、地元冒険者の知り合いとか作っとくんやったな・・・」

「先輩先輩、今回その知り合いが行方不明者です」

 

 そしてもう一人は今俺の隣で、一緒に落ち込んでます。

 正味この世界に来てまだ3ヶ月も経っていない上に、ひたすらレベル上げに勤しんでいたのが裏目に出た。


「まあ、こっち来てそう経ってへんしな・・・」

「こっちの知り合いって、トウラとローグ以外っていったら、カナイのリリぐらいっすよ」

「ん?誰それ?」

「カナイ唯一のギルド兼酒場兼宿屋の総合受付嬢」


 嬢と言っていいのかは分からないけれど、おばちゃんって言ったらいけないのは分かる。

 ん?そう言えばあれもギルドだよな。あんな村唯一の総合娯楽施設に間借りしてる状態でも、ギルドはギルドだ。買い取った品を本部へ輸送してるぐらいだし、あそこで発行してもらった身分証もこっちでちゃんと使えてる。

 もしかしたら、そっちから話しを回してもらえないだろうか。


「なあ、トウラ」

「にゃ?」

「この事件、他の村とか別のギルドに話し持ってたらダメかな?」

「話しを聞いてくれそうにゃギルドの心当たりがあるのにゃ?」

「カナイって村のギルド。こっから乗合馬車で3日程のとこだけど…」


 しかし、この距離もなぁ。話しを聞いてもらえても往復6日。

 ローグが三味線とか毛皮になりそうだ・・・。


「カニャイなら近隣だから管轄違いって言われてることは無いにゃ。それに頑張れば・・・、往復1日で行けるにゃ」

「マジで?!」


 そうか、この世界じゃ乗合馬車で3日は近隣の範囲なんだぁ。交通が発達してないとこういう感覚が当たり前なんだな。

 じゃなくて、どうやったら3日が半日になんの!?つか、頑張ったらって、それ超えちゃいけない何か超えてない?


「・・・話しが通りそうな先が見つかったんはええとして、どないな無茶したら3日が半日になるん?」


 あ、先輩も同意見。

 3日が半日って引くよね普通。それともこれがこっちの普通なの?田舎の「一駅分だからすぐ」のノリ?あれ信じたらひどい目に合うよ?

 だとしたら、これからの生活に一抹の不安が。


「えっと、カニャイとトーカは間にある『知らずの森』を突っ切れば、単騎にゃら半日なのにゃ」


 ああ、なる程。馬車じゃその森を通れ無いから迂回する分、時間がかかていると。

 びっくりした。どんなデスマーチを決行するのかと思った。


「それやったら・・・」

「ただ『知らずの森』はそれなりにレベルのある冒険者じゃにゃいと、森を抜ける前にこの世から抜けちゃいかねないのにゃ」

「「・・・・・・・・・」」


 だめじゃんっ!!

 ここに来て生け贄ルート復活とか、どこまで世界の肥やし押しなの?!勇者嫌われ者なの?!


「ちなみに、それなりのレベルってどんくらい?」

「30からだにゃ。それ以下は森のみんなに美味しくいただかれちゃうにゃ」


 ちょいちょいトウラの発言から向こうちきゅうの香りがするのは何でだろう。

 もしかして、昔近所で飼われてた虎猫のことらばあちゃんの生まれ変わりとか?

 毛並みとか結構似てるんだよなーと思わず現実逃避。


「後一歩届かないっすね」

「色々無理すれば何とかなるかもしれんけど」

「ダメだにゃ、ちゃんと30無いとお陀仏決定にゃ。30と29の間はそれくらい、高くて切り立った壁で隔たれてるんにゃ」

 

 詰んだ。

 そんなレベルの壁があるとか、誰も教えてくれなかった。

 ある意味、20超えたら旅しながらの仕事ができるから、それで後10上げれるか否かが一流になれる分かれ道なのかも知れない。

 今の俺たちは勇者チートも発動してないし、無駄な所がシビアなこの世界で、勇者であることを理由に強行はしない方が賢明だ。

 フェニックスからぶち抜いた尾とかスケープ用のドール的な物の存在は不明だし、レベルが足りないからフル回復できる、秘薬とか粉塵的なものも手持ちに無い(似たような効用のアイテムはある)。


「因みに『知らずの森』の由来は?」

「戻った者が居にゃいから、誰も森の中がどうかにゃってるのか知らにゃいって意味にゃ」

「ああ・・・それまたお約束な」


 ゲームなら最初のボス戦がありそうな森だ。

 森の主的動物か、樹木モンスター、人間嫌いの聖霊、森をさ迷うアンデットorゴースト系。とりあえず火か炎系魔法は有力そうだけど。俺はそっち系使えないし、先輩も強力な物を使うにはまだレベルが足りない。


「足になる動物買うて無理やり森抜けを決行するなら、いっそ囮仕掛けても危険は変わらんかもな・・・」


 俺と同じく考えて込んでいた先輩が、ぽつりと零す。


「囮って、まさかトウラを!?」


 何度も言うが、今の俺たちの知り合いはトウラ、ローグ、リリで、亜人はトウラとローグだけだ。

 つまり囮を頼める相手は、まだ元に戻って数時間のトウラしかいない。


「・・・私で務まるにゃら」

「いや、囮はトウラやなくて、見た目だけ取り繕ったらどうにかなりそうな、闇討ち得意なやつにやらすから」

「え?」


 勇気を振り絞ったのだろう、囮に否を唱えなかったトウラだが、トウラ囮作戦を先輩はあっさり否定した。

 しかもその何とも身に覚え有りまくりの言い回し。

 確かに、勇者にあるまじき俺の特技ですけど。


「実はポ〇ジュース薬もどきが一本だけ有る」


 ポ〇ジュース薬。

 それはあの某英国に在る、世界的に有名な魔法学校の話しに出てくる変身薬の名前だったのでは無いだろうか。薬に入れた人体組織片の持ち主そっくりに化けることができるのが売り。そして絶対的に飲み物の色してないヤツだ。


「先輩、それ人間専用。動・・・亜人の媒体使ったらダメなヤツじゃないっすか?」

「だから、もどきやって。化けたい相手の人体組織を加えて完成ってとことか、見た目とかがあの薬そっくりなだけで」


 危うく動物って言いかけた。トウラが居るのに。でも、あの薬で猫の毛が入っててえらい目にあってたシーンがあったのは確かだ。

 先輩何故そんな物持ってんすか。売ってたの?作ったの?


「と、言うわけで、トウラの毛一本もろてええ?」

「一本でいいのにゃ?」


 俺を置いて話しはサクサク進む。

 亜人誘拐事件の話しは全然進まないのに、トウラから毛をもらってあっという間に変身薬が完成する。

 え、そのタールみたいなのマジ飲むの?


「さあ、マレ。ぐっと一思いに!」

「いやいや、一思いって何?一息じゃないの?」

「一息レベルじゃ飲めん気がして」

「そんなもん勧めるなよ!?」

「だって、俺やと紙装甲やし、囮としてならアサシンスキル使いこなすマレのが向いてるやん?」


 まあ、消去法取らなくても、やるなら俺だけど。でも、もう少し気を使って欲しい。

 主に見た目とか味とか見た目とか。


「ごめんにゃ、マレ。口直しのジュース買って来るからちょっと待っててにゃ?」

「ああ、ありがとうトウラ。って、ちょい待ち。こんな所ひろばのべんちで飲んだら普通に騒ぎっすよね?」

「あっ!」

「にゃ!」


 あっぶなー。余計な騒ぎを起こすとこだった。

 そんなことしたら、相手側に囮作戦がバレかねない。


「しゃあない、とりあえず宿戻ろか」


 こうして事態は殆ど進展しないまま、再び宿に戻ることになった。

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