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フォックスレイン→ケルベロスヘッズ  作者: ぎじえ・いり
ロビン・ザ・デッドマンズハンド

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第15話 死亡フラグのへしおり方4

 もう慣れた動作だ。

 空いてる左手でジェスチャー。

 赤錆を呼び出す。

 さて、何狙おう?


 撃たれてもおかしくない状況なのに、敵からの銃撃はない。


 と、ひとり、前に出てきた人間がいた。


 サイズはあの中ボスよりは小さいが、私よりも大きくて武器は手にしていない。

 タンクトップに特殊部隊が着けるみたいなプロテクター、手足は天使のソレ、ただしあの中ボスよりも流線的でゴツくない。長い銀髪をポニーテールにした女性だ。


 サングラスで目は隠れている。夜にサングラスって、と思ったけど、私と同じようにスキルを使っているのか、それとも手足と同じようにロボアイなのだろうか。まあ、チグリスもそうだったか。


 しかし、似ている。


 髪の色はもちろん、顔の雰囲気がロビンに似ていた。

 猛烈に嫌な予感がして、少し目が冴えた。


「ロビンのお母さんかな?」


 問いかけに相手は露骨に口を歪めた。

 最悪、と口にする代わりみたいに舌打ちが漏れる。


「随分、暴れてくれたね。誰?あんた?あの人の何?愛人?」


 あの人。

 まるで反抗期の子供じゃないか。

 さらに嫌な予感がする。


「もしかして、それ、ロビンのリプレースメントだったりする?ここに保管してあった奴?」


 ロビン。

 ロビンフッドの連想から、ついつい男を連想するけど、この名前は男性名詞じゃない。男性女性、そのどちらにも使われる。


 ロビンは女ボスだ。


 不機嫌さを隠そうともしないその姿は、私の問いかけが正しいことの証明に見えた。さて、じゃあ今、中身は誰のイデアが入っているので?誰と取り替え子(チェンジリング)した?


「質問聞いてた?」

「さっきそれを聞いてきたおっさんは、今頃天使になってるよ。コマドリちゃん。リプレースメント費用をプールしてなかったらだけどね」

「あのハゲ。さんざん大口たたいといて。チッ、随分あの人と仲良しみたいだけど、マジで誰?今まで見たことも聞いたこともないけど」

「そりゃそうだ。この街に来たばっかりなんだから。ただの雇われだよ。コマドリちゃん」

「やめろ!コマドリなんて呼ぶな!」


 あのハゲはバレバレだ、って言っていたけど、本当だろうか?

 ロビンは本当に誰にも何も言っていなかったのか?

 話した相手がいたんじゃないか?

 ロビンは言った。

 こうなる前に事故があったと。


 本当に事故はあったのか?

 身内の恥を言えなかっただけじゃないか?

 この反抗期のコマドリちゃんは誰だ?


「自作自演?それにロビンはまんまとハマった?」


 表情が消えた。

 それを察したように周囲の敵が武器を構えた。

 親子喧嘩は家の中だけにしてほしい。


 まあ、親子って言ってもいろんな形がある。

 映画の中でも、ゲームの中でも、現実でも。

 お互いにとっての良い親、良い娘。

 努力してもそうなれない場合や事情はどこにだって転がっている。


 マフィアのボスの娘、と聞いて、なんとなく娘は堅気なんじゃないかと想像していた。賞金も掛けられてないって言っていたし。うーん、この辺は私が映画の見過ぎか。

 カエルの子はカエルになるパターンの方が実際には多いのかもしれない。

 娘もまた組織の人間だったのではないか?


「今、デッドマンズハンドのリーダーってのは誰?」

「今、目の前にいるでしょ。私がリーダーよ。ここにいるみんな、私に従っている。あんた以外はね」

「それってロビンの意向に……は沿っていないんだろうね」


 拳が握り込まれて、ギシギシと異音を立てている。

 さすが天使の腕だ。掴まれたらそのまま握りつぶされそうだ。


「あの人はもう過去よ」

「じゃあ放っておいたら?」

「無理。あの人には天使になる前に遺産を置いていって貰う。私にはそれを貰う権利がある」


 権利、か。

 もう間違いないだろう。

 ハッキリさせよう。


「はぁ、そう。娘、だから?」

「そうよ。すべて私のものよ。ゲヘナも、部下も、組織も、この街も、全部私のものよ!あの人の築いたものはすべて私のものになる!そうだからこそ私は耐えた!待った!あの人が自分自身にどれほどゲヘナを掛けて、私にまったく気にも掛けてくれなくても!あの人は後悔してたでしょう?あんなクソザコリプレースメントに入れられて!何もできない!何もさせてもらえない!その仕打ちを私は忘れない!」


 なんだろう。

 そう。

 子どもだ。

 姿は成熟しているのに、まんま子どもだ。


「武器を手にしたことは?人を殺したことは?強くなりたかった理由は?」

「ガキ扱いすんじゃねえ!クソババア!あの人のリプレースメントを奪って、すぐに殺ったよ!口答えしたバカも、認めようとしなかった老害も!邪魔な奴は全部!せいせいした!感動したね!涙が出た!笑ったよ!これが私だ!なりたかった私だ!私はずっとこうなりたかった!いや!私はまだまだ強くなる!あの腕も私の物だ!」


 歪んでる。

 ロビン、組織を育てるのは上手くても、子どもを育てるのは最低だったな、さては。

 目が冴えた。

 集中力はそこそこ。

 これならいけるか?


 もうこれ以上、この外道の言葉は聞いていたくない。

 例え誰の娘であろうとも。

 すぐさま羊飼いから王へ(ダビデズ・スリング)でコマドリちゃんに投擲。

 それは過たずにサングラスに直撃して割れた。


 覗く瞳は青みがかったグレーの瞳。


 ロビンと同じ、いや、ロビンの今のリプレースメントの瞳と同じ色。


「てめえ!やりやがったなあ!死ね!殺せ!犯れ!」

「はは。あったまってるね。ガキじゃん」


 声は果たして届いたか。ジャベリンやら銃弾やらがまるで連続して打ち上がる花火みたいに轟音を立てた。

 ジャベリンは確実に躱したけど、ヤバい、銃弾に思ったよりも当たってる。


 死んじゃう!待って!


 あわてて崩れかけの受付の裏へ。

 確認のために一瞬首だけ出すと、怒りに身を震わせていたコマドリちゃんが武器を呼び出したのが見えた。

 ジャベリンだ。もちろんPの方。


 うひぃ。オーバーキルだよそれ!


 ミンチになっちゃう!そんなの使ったら、明日からお子様ランチのハンバーグ食べられなくなっちゃうよ!


 慌ててストロベリーシェイクを取り出す。

 この際、銃弾は無視。

 HPが恐ろしい勢いで削れていくけど、コマドリちゃんに集中する。


 はい、今!


 畳返(タイタンフリップ)で捲れ上がった地面にPジャベリンが直撃する。


 効果が残っている間に、すぐさまスティムミストで回復する。

 ああ、もうどうする?

 戻るにも、新品の別のPの方のジャベリン出されると、どこまで追尾してくるか分からない。どれくらいの武装をどれくらい持ってるんだろう?


 通路をダッシュ中に追いつかれたらやばい。避けるには発射タイミング見てないとだし、こうなったら無理矢理飛び込んで、乱戦に持ち込んだ方が?

 畳返の効果が消えるまでの僅かな間で決断した。


 よし、今やろう。


 イマイチ、効果が良く分かっていないヴァンパイア強化スキル、屍山血河(リバーオブブラッド)発動。


 なんか、微ダメージは速攻回復するのと、スタミナの持ちが良くなってる以外は何だろうスキルだ。

 リキャストがこれもめちゃくちゃ長いので、他にも効果ありそうなんだけど、突撃するならこれしかない。

 巡れ巡れ!我が血管よ!ってね。


「フハハハハハ!」


 意味もなくヴァンパイア笑い(イメージ)をしながら外へと飛び出し、走る。

 お祭り騒ぎだ。いつ死んでもおかしくない。

 笑ってやらなきゃやってられない。


 どうせコマドリちゃんは高耐久だろうから無視。

 想定あのハゲたおっさん以上の相手を一撃で倒せる火力はない。

 雑魚を斬り飛ばして蹴り飛ばす。


「ちゃんと見てるよコマドリちゃん!」

「うるせえ!」

「あはははは!」


 挑発に乗って分かりやすいタイミングでジャベリンを放ってくる。

 注意していて十分な距離があって、障害物があればさすがに躱せるって。

 どんな武器でも適正距離ってものがある。


 アレは中距離武器だ。コマドリちゃんは最初の位置から一歩も動いていない。

 ただの固定砲台だ。

 それなら怖くない。


 っと、やっぱり半ロボ人間は硬いな。一撃、二撃と斬りつけても倒れない。

 顔に草刈り鎌投げて無視。

 数を減らすのが先だ。回復薬はラス1。

 屍山血河の効果が切れた。

 もう馬鹿みたいに走り回るのは出来ない。


 敵の数は減っているのかいないのか。

 むしろ増えてない?裏の連中も来てる?


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