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フォックスレイン→ケルベロスヘッズ  作者: ぎじえ・いり
ロビン・ザ・デッドマンズハンド

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第15話 死亡フラグのへしおり方1

 ロビンに別れる前に、この施設の見取り図を貰った。

 これが有ると無いとでは動き方が全く変わってくる。


 侵入してきているのは正面と裏、それにあの隠し扉の三カ所から侵入してきている想定が良いか。

 防衛戦は苦手なんだよなぁ。そもそもソロでやるもんじゃない。やれるようにやるだけか。

 元の伽藍堂の部屋に出ると、そこには黒猫がいた。


「エドガー、ここで顔を見せるってことは……どういうこと?」


 デッドマンズハンドを手引きしたのなら、良く顔を出せたな、だし、そうでないなら?変身して人型になったり、巨大化したりして戦闘?いきなり中ボス戦か?


 ここでポエットから連絡が入ったり、ポエットの声でしゃべったりしてくれたら分かりやすかったけど、エドガーはまんま猫の仕草で一声鳴いて扉へと向かう。

 そこで振り返って、先導は任せろ、と言わんばかりにまた鳴いた。


 いや、ホント?それ?


 なんかやる気を感じるのは確かだけど、生憎とスキル猫語は取得していない。

 ってか、どうやってここに入ったので?

 ジャンプ一発でドアノブを下げて、わずかに空いた隙間から外へと出ていた。

 まあ、現実の猫でもこれくらいはするか。


 外からエドガーの声がする。

 敵はいないって?

 用心しながら扉の外へ。確かに誰の姿もなかった。

 さて、見取り図から見た感じだと、とりあえず裏からかな。

 距離的に近いし、通路も細く、いきなり大多数を相手にしなくても済みそうだ。


 そんな私の心を読んでか、それともたまたまか、エドガーもそちらへ向かって歩き出す。

 あ、いや、そっち行くなら先に隠し扉の方が先か。


「エドガー、待って、隠し扉見てからにしよう」


 分かったと言わんばかりに一声鳴いて、言われた通りに隠し扉に向かって歩き出す。うーん、完全に人間語は理解してるのね。それだけじゃなくて何がどこにあったかの把握もか。私みたいに見取り図を見ている訳じゃないのに、その歩みに迷いはない。


 賢いとはポエットの談だったけど、賢すぎない?

 やっぱりただの猫じゃなさそうだ。


 慎重に進んで確認した結果、そこは破られてなかった。

 誰とも行き会わず、入ってきた時のままだ。

 ロビンを連れてきていたら、ワンチャン出られたかな?

 まあ、さすがに全員で中に突入してくるような間抜けなAIしてないでしょう。

 包囲されていたら結局中に戻ることになるし、その場合は居場所を完全に知られてしまう。

 今の所、ただの警備ロボットくらいの印象しかないアークエンジェルじゃない、高レベルっぽいパワーを襲って稼ぎにしてるような連中が全員低レベルってこともないでしょう。

 やるなら閉所で少しずつが望ましい。


 少数、というかソロにはソロの利点がある。

 それは見つかりにくいことだ。

 どうとでも隠れられるし、やり過ごしたり、いつ、どのタイミングで、どの場所で戦うかをこちらが選ぶ事ができる。

 そのためには先に相手を見つけないといけないし、そして動き回らないといけない。今から私は元特殊部隊員のコックばりに素早く、静かに、そして確実に動かなくては。


 なぜかずっと私が向かう先をエドガーが小走りに走っては、振り返って私を見る。

 なんだろう。

 斥候のつもりなんだろうか。

 すぐに出くわすかと思っていた敵の姿はなかなか見えない。


 それはこの工場跡がかなり大きいことと、その割に通路やセクションがかなり細かく区切られているせいもある。

 どこか巨大迷路じみていた。

 通路はセンサーが働いているのか、勝手にライトが点いたが、部屋や区画によっては暗いままだったので、冥道の松明(ヘカテイア・トーチ)を使って進んでいく。


 エドガーにも同じようなスキルがあるのか、単に猫なので暗視が効くのか、暗いエリアでも彼の歩みは変わらない。

 しばらく慎重に進むと、ひとつの大きな部屋というか区画に入った時に、エドガーが歩みを止めて、何も言わずに私を見た。ライトの点かない真っ暗な区画だった。


 伺うように探ると、気配があった。

 いくつもの空の棚が並んだ向こうだ。

 そちらを確認すると、黒のロングコートに赤いラインの入ったバイザー、アサルトライフルっぽいシルエットを手にする3人組。


 斥候だろうか?

 何にせよ都合が良い。


 って、NPCって殺しても大丈夫なんだっけ?リプレースメント契約あるから問題なし?と思って注視するといつかの賞金首のように、賞金額が浮かんで見えた。


 なんだ、じゃあ問題ないか。


 天使を襲うような犯罪組織なんだし、まさか怒られまい。

 さて、どうやって片付けようかなと、周囲を確認しようとしたら、エドガーが無造作に3人に向かっていく。


 え?何するつもり?


 仕方なく、バレないように気を使いながらついていくと、エドガーは棚のひとつに音を立てて登っていく。

 当然、敵は一斉に音のした方へ即座に発砲してきた。

 バレた!?何してんのアンタは!?

 と焦ったけど、撃たれたのは私じゃない。

 エドガーは尚も音を立てながら進んでいく。


 ああ、なるほどね。


 エドガーが何をしたいのかが分かった。

 エドガーとは別のルートを進む。

 エドガーは3人の近くまで行くと、地上にあえて姿を見せるように下りた。

 そして一声鳴いた。


 銃を向けていた3人がそれを見て、発砲せずに、露骨に気を抜いたのが分かった。

 なんだ猫か。

 古典的過ぎて、今ではギャグでしか使われていないのでは?

 侵入するスパイなり、忍者なりがバレそうになって猫の鳴き声で誤魔化すのなんて。

 いや、こっちは本物の猫だけど。


 そういえば、フルダイブゲー以前の古いゲームに、なぜか猫をアイテムとして捕まえられて、敵にバレそうな時にそれを使うと、敵の警戒度が一段下がる、なんてのがあったな。

 すっごくシリアスなゲームで、特殊工作員の主人公もそれを大真面目にやるから、妙におかしかったのを覚えている。お前は一体バックパックに何匹猫を入れているんだ?って仲間に聞かれて、知らないのか?猫は液体だから隙間があれば無限に入る、とか言い出したりして。実際、無限に入ったし。

 特殊な作戦に従事する工作員の話というよりも、特殊な(頭のおかしい)人間が真面目な作戦に従事している作品で、あれ、フルダイブゲーになったりしないかしら?


 3人の賞金額はいずれも100万ちょっと。大したことなかった。

 気を抜いた瞬間に近づいて、全員に斬撃を一振りずつで片付いた。

 なんだ、もしかして楽勝か?これは?

 そう思いながらも進んでいくと、もう一組、斥候っぽいグループに出くわす。こちらも問題なく片付けると、続く通路で大きな集団に当たった。


 待った待った待った!


 10人以上は軽くいて、通路いっぱいに撃ちまくられると、さすがに対処のしようがない。

 慌てて手近な部屋に飛び込んだ。

 そこまで撃たれたつもりも無かったけど、HPが3分の1削られている。

 そりゃあ連絡の付かない斥候が出てきたら、そっちに本隊回しますよね。

 スティムミストで回復しておく。

 しまった。そういや回復薬買ってないな。

 残りは3本しかない。


 うーん、敵が落とすとか、その辺に落ちてたりしないかしら?


 入った部屋は明るい部屋で、やけに大きなベルトコンベアが並んでいる。

 真空パックされたリプレースメントでも流れていたのかな?今は当然動いていない。

 何にせよ、回復薬なんて落ちていそうにない。


 くっそー、ゲヘナだけはいっぱいあるんだから、蜘蛛の巣で通販したらドローンで運んだりしてくれないかな?


 あるのかも分からないサービスを調べるより先に、追ってきた敵が銃弾をばら撒いてくる。

 さすがにこうなると、なんだ猫か作戦は使えない。

 ってか、エドガーがどっかに消えている。

 薄情猫め。

 そもそも何で味方してくれているのかが謎だったけど。


 追い立てられるように進んでいくと、ちょっと広い空間に出た。

 荷運び用車両が置いてある駐機場のようだった。

 いや、置いてあるというか放置されたというべきか。

 タイヤが外れてしまって傾いている物や塗装がハゲて錆だらけの物だったり、残骸と言った方が正しい物ばかり。


 残骸はまばらに停めてあって、その陰から出る瞬間に当たりませんように、と願って駐機場に入ると、並んでいた車両の1台が派手な音を立てて転がる。

 悠然とそれに続いてやたらとデカい男が姿を現す。

 追いついてきた雑魚兵は周囲を取り囲んでいるのに撃ってはこない。


 すぐに察した。

 あぁ、ボス戦か。

 クライマックスには早いというか、ステージがしょぼいから中ボスかな?


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