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フォックスレイン→ケルベロスヘッズ  作者: ぎじえ・いり
ロビン・ザ・デッドマンズハンド

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第13話 ドッグプープ1

 ロビンと連絡先を交換すると、すぐに契約書が送られてきた。ポエットの時にも同様のやりとりがあったので、この世界ではミッションは基本的に契約でスタートなのだろうか。


 斜め読みして了承して返すと、前金が振り込まれると同時に、インフォメーションにロビンの護衛がミッションとして加わった。

 と、そこでふとエドガーを見る。近づいて腰を下ろしてロビンに聞かれないように、小声で話しかける。


「良い?別にポエットを裏切っている訳じゃないから。出て行くって言ってるし、事実出て行くから。部屋の中が血まみれになって清掃業者呼ぶよりは良いでしょう?」


 エドガーは分かったと言わんばかりに、にゃあと一声鳴いて、部屋の角のソファーへと向かって行った。


 もしもリアルタイムでエドガーを通して見えているなら、すぐにメッセージが飛んでくるだろう。それがないってことは問題ないってことだ。きっと。

 ロビンも単なるペットだとでも思っているのか、何も言ってこなかった。

 まるでそこにいないかのように、気にする素振りも見せない。


 さて、何をやるにも、まずは情報だ。

 目的地はチャンドラーエリアにあるリプレースメント工場跡。


 カラドリウスという組織が手放したそこをロビンが私的に購入して、密かに一部の施設を維持し、リプレースメントを保管していたそうだ。

 この場所の存在はロビン以外の誰にも知られていないので、追跡される事なく辿り着けば、問題なく元のリプレースメントに戻れるという。


 今いる場所はハングドマンズの勢力下なので、居場所がバレても、即座に兵隊が山盛り送られてくることはない。そんなことをしたらロビンに辿り着く前にハングドマンズとドンパチだ。だからこの辺りにいる間は多少時間はあると思って大丈夫らしい。問題はチャンドラーに入った後だ。彼らの勢力下では見つかれば即座に戦闘が始まる。


「そもそもそんな簡単に見つかるものなの?」

「チャンドラーには、至る所にな、監視カメラがある。そしてどこの組織も、自動で賞金首リストと、照合を掛けている。元の仲間たち(デッドマンズハンド)は、今の私の姿を元に、賞金を掛けた。わざわざ追う程ではないが、片手間で情報を売るだけなら、儲け物と思う程度の、な」

「ああ、それが天使とは別に賞金を掛ける意味か」


 今のロビンの姿では、リストと称号しても、4,000万の賞金首とは分からない。だから娘の姿で自分達で賞金を掛けているのだ。


「お仲間さんたちはロビンを殺したいわけじゃないんでしょう?どうしたいの?」


 殺したいならそうできた。そうせずに弱体化して追い込んだだけの理由があるはずだ。


「殺す前に、聞きたいことが、あるんだろう。私は隠し事が多かった。隠してる帳簿や、財産があると、信じている」

「4,000万よりも多いって?」

「そうだろうな。組織の運営には、ゲヘナが掛かる。それが分からなかったんだろう。結局」


 そんなにはないってことか。

 嘘か本当かは分からない。金額も、そして仲間にしていた隠し事がそれだけかどうか、も。

 なんにせよ、その辺のことについては考えないことにした。

 ゲヘナは時間を掛ければ稼げる。

 どんなゲームだってレベルを上げればそうなる。まあ、たまにそうはならないゲームもあるけど、キュリオス製のは大丈夫だ。


 それよりも、現時点ではフォックスレインの情報の方が有益だ。NPCしか知らない情報はネットの攻略情報には流れてこない。ロビンが別に1億持っていたとしても、それを知りたい私には裏切る理由にはならない。


「目的地自体はそう遠くないけど……当然、歩いては無理だね。車か……」


 調べてみると、その辺のタクシーは基本、無人AIによる自動運転だった。キャラクターも味もへったくれもない、事務的なやり取りを返すだけのほぼ自動販売機や給湯器、自動掃除機と変わらない。

 どう考えても襲われた時に映画で見るみたいな銃撃戦に耐えられるはずがないだろう。


 となると、お約束的には運び屋が必要になる、と。

 アラクネストで検索してみると、かなりの数が引っかかった。やっぱりメジャーな仕事らしい。軽くスクロールしてみてため息が出た。


 あぁ、こうなるのか。


 ロビンが探すのを断念するはずだ。

 中には釣りだってあるのだろう。

 この中から探せ、と。


 ロビンは運を天に任せたとでも言うように、私に一任してきた。聞けば答えてくれるし、アドバイスもくれるけど、何が良いとか悪いとかの判断は一切しなかった。


 検索すると出てくる蜘蛛のキャラクターはAIだ。

 これに頼んで絞り込みも出来るけど、それが当たりを引いてくる確率はどれほどだろうか?

 とりあえず探すならNPCではなく、プレイヤーだろう。

 プレイヤーならゲヘナ次第というよりも、何か面白そうという理由で請け負う人もいるだろうし、SNSも併用して調べればその人のひととなりもある程度測れる。


 そういえば、SNSはゲーム内専用のものもあるんだった。

 SNSの名前はDog poop……犬の糞って……あぁ、ケルベロスだからか。


 いや、ケルベロスは犬なの?


 設定を済ませて、今日から始めました!よろしくお願いします!とだけポストしておく。アイコンすら初期設定のまま……このコロコロしてるアイコンは……いや、突っ込むまい。


 もしかして糞なのはポストしている内容がトイレの落書きと一緒だって揶揄してるんじゃなくて、投稿者自身の方か。


 運び屋やってて、かつある程度高レベルのプレイヤー……登録日の早いプレイヤーで絞り込んで……うーん、変なトラブル避けるために女性アバターで絞り込んで……どっかしらの組織に所属の有無もあるか……こんなところか。


 うーん……どんどん送りながら流し見ていく。

 あ、この人、ちょっと気になるな。

 おぉ、こんな人いるんだ。

 え?これってどこなんだろう……いや、今はそこ見てる場合じゃない。

 ここを眺めているだけでも余裕で半日くらい潰れそうだ。


 ドーパミン中毒に浸ってる場合じゃない。

 さて、こんなところか。

 ある程度見てみて、これ以上やってもなって感じになったところで切り上げた。


 一番気になったのは、チグリスというプレイヤーだった。

 ナイルという名前のプレイヤーとコンビで運び屋をやっていて、チグリスがドライバー、ナイルが助手席から敵を迎え打つガンナーという役割で仕事を受けるフリーランスだった。名前に共通性が感じられるのは、リアルでも友達なのかもしれない。


 気になった理由は投稿がほぼほぼ車のことだった。

 このパーツを変えただの、あのパーツが欲しいだの、どこそこのレースに出るだの、見たことない車が走ってたから情報欲しいだの、車、車、車だ。


 ここまで車だらけでドライバーとしてはへっぽこ、乗ってる車もポンコツ、などということはさすがにないだろう。

 レースでも結果を出していることから腕は確かそうだし、運び屋として受けた仕事については全く言及していない。守秘義務も守れそうだった。


 それにどうやらゲーム内でも結構な人気のプレイヤーのようだった。SNSのフォロワーが1,000人を超えている。

 そういうプレイヤーは人目を気にするし、悪評というのも避ける。フォックスレインでもランキングに入るようなプレイヤーは割とそうだった。

 依頼を受けてさえもらえれば、変な裏切りはしないだろう。


 リアル側でのSNSでも調べてみたけれど、裏切られたという人がいたり、炎上したりということもなさそうだ。

 問題はそういう名前が知られているプレイヤーが全く知らないルーキーの依頼を受けてくれるか、受けてくれるにしても有名な人にありがちなプライドの高さが依頼料に反映されてたりしないか、だ。


 SNSから直接連絡できたので、早速、依頼をお願いできるか送ってみた。

 直近で投稿はないので、インしてないかもしれない。


 今はこちらは夜……って、ああ、リアルでも夜か。仕事や学校から帰ってきてご飯を食べてって感じで、そろそろゲームでも始めるか、となるにはちょうど良い時間だ。インしている可能性は比較的高そうだ。


 いずれにしても、ポエットからの依頼がまだ未完のままだ。

 いい加減、ロビンが違約で占有しているこの部屋からは出て、私の方から依頼完了の連絡もしないと不味いだろう。

 ひとまず私のホテルの部屋にでも向かおうか、と思ったら、チグリスからの連絡が入った。


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