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フォックスレイン→ケルベロスヘッズ  作者: ぎじえ・いり
プロローグ

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第5話 トランストレージ1

 ついていった先にあったのは武器保管庫といった感じの部屋だった。

 剣や槍、弓矢といった馴染みの武器もあれば、銃火器も並んでいた。

 そっちも扱うんだ、という意外さがあった。

 ちょっと笑ったのは馴染みの武器の方に並んでいたいくつかは、ゲーミング武器だったことだ。

 つまり光っている。神秘的な感じじゃなく、ネオンライト的にだ。


「お前だったら、こんなところだろう」


 渡された武器は片刃のどこか刀を連想させるやや長めの剣だった。

 名前は……ストロベリーシェイク?

 フォックスレインでも刀はよく使っていたので、それでネーミングの参考に色々と調べたことがある。

 なんとなく元ネタの想像がついた。イチゴ=一期かな。

 元ネタより現状の名前の方に引っ張られて刀身は薄いピンク、刃先には赤い謎光。柄の部分はバニラっぽい白で鍔のあたりには謎の戦闘機を思わせる工業的デザインで、そして液体の入ったシリンダーが付いている……ってか、入っているのホントにイチゴシェイクだったりしないだろうな?


「なんか光ってるし液体ボトル付いているんだけど」

「こっちの刀剣の類には2種類ある。リキッドとソリッドだ。イデアの情報量の大きい素材、要はカドメイアのアダマスみたいな素材で出来てるソリッドと、ソイツみたいに熱光刃を生成するリキッドだ。リキッドはそのシリンダーのニトロンポーションが切れたらただの鈍器だな」

「ポーション?って、これ私が飲んだら回復したりするの?」

「は?馬鹿か、お前は。そいつは工業用だ。そんなもん飲むやつがいるか」


 ファンタジー全般に登場するポーションとは違うらしい。このシリンダーひとつでどれくらい保つのかにもよるけど、なんだか使いにくそうだ。


「使いにくくない?それならソリッドの方が良さそうだけど」

「鋼の安物なら簡単に手に入るが、天使連中でも簡単に斬れるような業物はな、たけーんだよ。欲しけりゃ自分で手に入れな」


 そうか。天使みたいなロボを相手にするなら、それを斬れる剣というのはなかなかなのだろう。血肉の通った敵が相手とは限らないと。

 イデアの情報量が高いソリッドというのは、要は色々と補正や属性付加がついているのだろう。そしてリキッドはエネルギー量が高いと。

 どっちが好みかと言えば、もちろんソリッドだ。

 これはなるべく早く手に入れよう。


「服とか回復薬とかはトランストレージに入れといたから、これを使え」


 そう言って手に乗せた薄いガラス板のようなものを差し出してきた。

 中には光の輪がぐるぐると回っている。

 不思議な光だった。どこか空の色を連想させる、白とも青ともつかない、見ているだけで気持ちよさを感じさせる輝き。温かくも冷たくもなく、清涼な光輝の輪。

 おお、これが噂のヘイローかな。


「トランストレージ?これってヘイローとは違うの?」

「それがヘイローだ。トランストレージは中に入れたイデアコードだな」


 ヘイローというのは魂の記録媒体なのかと思ったけど、どうやら他にも用途があるようだ。

 自分自身のイデアにプログラムのように外から改変コードを入れることができるらしい。出しっぱなしのウィンドウに解説が出ていた。

 そしてこれはゲームでおなじみのアイテムストレージってやつだ。

 持ち歩かなくても異空間にアイテムをしまっておけるお約束のシステム。

 ケルベロスヘッズでは自分自身の魂にインストールするとは。


「どうやって使うので?」

「ゲイズインストールすりゃ良いだろ」

「ゲイズインスト?」

「じっと見つめてみろ、そうすりゃなんか出んだろ」


 言われた通りにぐるぐる回る光を見つめると、ガラス板の表面に文字が出た。


 トランストレージをインストールしますか?

 YES / NO


 他にも容量やらなんやら注釈が出ていたけど、軽く読み飛ばす。雰囲気的に単なるフレーバーだ。アイテムストレージなしで進めるゲームなんてありえないだろうから脳死でYESを選択すると、直接光の輪が強烈に輝き出した。


「うぉ、まぶしっ!?」


 私の様子に爆笑するスキュラ。

 こいつ、知ってて言わなかったな。ゲイズインストールとはつまり目から直接ヘイローを読み取ることか。

 眩しいのにインストール中は瞼が強制固定されるのか、目を閉じることもできなかった。そして光はすぐに消えると、ガラス板の中のヘイローは消えていた。

 ……私の目の中に吸い込まれて消えたと。


「それでもう使える。ジェスチャーは好きに決めな。んで、お前のストレージはこれだ。本拠地ホームが決まったら教えろ。そっちに移す」


 ストレージは異空間とかではなく、物理なのか。スキュラが示していたのは私が4、5人くらい入りそうなサイズのロッカーだった。ただし最初から中身の出し入れは転送前提のようで扉はなかった。多分、後で拡張できるんだろうけど、今は容量はこんなものらしい。

 初期ジェスチャーの曲げた人差し指に親指を乗せた形、ちょうど鍵を握っている形にして左に回すとウィンドウが出た。

 中に入っていた物には名前とビジュアル付で表示されている。

 入っていたのは防具……というか服だ。体のシルエットがぴったりと出るライダースーツのような物を選ぶとパジャマルックからそっちに切り替わる。こんなもの実際に着ようと思ったらぴったり過ぎてめちゃくちゃ時間がかかりそうだ。胸の辺りが強調され過ぎて、これだと妙な連中に絡まれそうなので、上からレザー風のジャケットを選んだ。丈がハーフでもとりあえず胸は覆い隠せる。かえって強調されている気がしないでもないが乳房がモロだしか?って感じよりは良いだろう。

 ステータス的には防刃、防弾、防炎が効果小でついていた。

 足元にはスニーカーとブーツが選べたので、ひとまず消音効果小がついているスニーカーを選ぶ。

 色も自由に選べるようなので、ジャケットとスニーカーを黄色、ライダースーツは白にする。

 アクセサリーも選べたので見ると……


「なにこれ?」

「あん?」


 青や緑や赤が煌めくブラックオパール、を思わせる、目元を隠せるバイザーだ。

 どう考えてもアレだ。

 色々とアレすぎて考えたくなりつつも、試しに装備してみる。

 

「ああ、それはお母様からだ。有り難く使いな」

「ぇえ、うーん……これかぁ。鏡は……ああ、そこね」


 鏡で確認すると瞳の部分がごく薄く透過していた……のだが、その瞳が縦瞳孔の金色虹彩になっていた。

 フォックスレインプレイヤーの殺意が高まりそうだ。夜に背中から切られても文句は言えない。

 能力的には例のステータスのVixenに+0.5補正が付いている。マジか、と思って表情が変わったのに合わせて鏡の中の狐の目がばってん印になる。あぁ、地味にそういうことできるのね。そういうコミック表現はオフにしよう。キャラじゃない。

 口を開けたり閉じたり、頭を左右に回して確認する。特に重さは感じないし、目線を隠すこともできた。悪くない。

 譲渡禁止、破壊不可属性がついていて、そしてイデアスコアが高い。

 武器、防具含めてアイテムにはこのイデアスコアというのがついていた。こちらではイデアの情報量の大小というのがレア度だったり能力値だったり、性能評価が高いということのようだ。

 そう、付与属性の効果量とイデアスコアというシンプルなステータスだった。

 多分、これはユニークアイテムなのだろう。

 その証拠にこのバイザーには例のマークがついていた。

 1頭の狐のエンブレム。一匹狼ならぬ一匹狐と言いたいのだろう。

 見覚えがありすぎる。ソロでラスボス到達が条件のトロフィーエンブレムだ。

 とりあえずデザイン的には確かにカッコいいし、しばらくは使ってみよう。

 他プレイヤーのウザ絡みが多かったりしたら外すけど、これが何より破格なのは破壊不可だ。防具でこれ以上に優秀な属性はない。

 他には日本の侍の鎧のパーツ、肩の大袖と、腰の脇楯をサイバーにデザインしなおしたようなものがあったので、試しに付けた。フォックスレインであった葉隠用の専用防具に似ているそれは引き継ぎ要素なのだろう。

 ちょっとトータルコーディネート的には微妙……まあ、それは進めていけば好みにカスタマイズできるでしょう。

 ストロベリーシェイクはストレージにしまっておいた。これがどれくらいのランクなのかまだわからない。防具はともかく、武器というのは目立つしPKer(プレイヤーキラー)に狙われやすい。ファッション的なこだわりがないなら、レア武器は普段はしまっておいた方が良い。

 練習として何度かジェスチャーで出し入れを試してからしまった。ひとまず鍵開けジェスチャーで左に回すとストレージ、右に回すとストロベリーシェイクを呼び出せるようにした。


「んじゃ、さっさと行きな。面倒くせーからもう戻ってくんなよ」

「あれ?銃は?くれないの?」

「あん?必要ないだろ?転売するつもりか?」

「いや、そういうんじゃないけど……試しに使ってみたいなーとか」

「遊びで使いたけりゃ自分で買いな。こっちにとっちゃタダじゃねーんだ」


 まあ、それはそうだ。お小遣いは貰ってる。

 フォックスレインで使ってた武器防具がちょっとは返ってくるのかな?って期待していたほどではないのが、ちょっと腑に落ちない。

 もうちょっと何かくれても良いんじゃない?と思わないでもない。

 当時のアバターが使えるというのが破格なのも分かっている。

 そう、このアバターは普通にケルベロスヘッズを始めても再現できない。

 フォックスレインの頃はまあ、課金すると作れたアバターだ。当時の流行というか、かなり盛れたのだ。胸を。あと太腿を。

 最近ではこれもまた流行なのか、ここまで盛れるゲームというのはあまりない。

 解せぬ。

※改稿=ヘイローの描写。

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