第6話 聞き込み
柳林「どうも。静岡県警 刑事部の柳林です」
本間「本間です」
大河原「大河原毅俊と申します」
大河原毅俊は、日本を代表する現代画家の一人だ。世界にも認められていて、卓越した色彩感覚、対象物の美しさを引き出す技術は、芸術界で奇才と一目を置かれ、長い間その世界でトップを走り続けている。趣味はゴルフで結婚はしておらず、時にenergeticに、時に儚く移りゆく 人との交流を作品に反映させていた。和むような柔らかいタッチの作品から、鋭い現代風刺した作品まで幅が広く、現代美術を動かしている中心部にいる芸術家達にも、そして大衆からも共感と定評を得ていた。
柳林「大河原先生が、先日開いた、公開レッスンに参加した女性4人が、次々と殺されています。」
大河原「そうですね... わたしもショックで.. もちろんお亡くなりになられた方々には、お悔やみを申し上げたい気持ちでいるのですが、
私の作品へのイメージも悪くなってしまいそうで、あまりよろしくないですな。作品に罪は無いのに。」
柳林「4人の裸体画を..」
大河原「ええ。描いていました。 まだどの絵も未完成で 次にまたアトリエに来てくれる約束も4人と、それぞれにしていました。残念です」
本間「4人が亡くなった日は、何をされていましたか。」
大河原「わたしは、アトリエで次の展覧会に出す絵を描いていました。期限が迫ってきていて。
どうしても 仕上がりが上手くいかず。最近は
自宅のアトリエに篭っています。家政婦に聞けば、証人になります」
本間「先生は、最近赤いシリーズという 花の絵を描かれていますね?」
大河原「えぇ」
本間「どうして 赤い絵ばかり描くのでしょうか?」
大河原「君、面白いね。 事件のことじゃなくて、僕の芸術面についての質問なんだね。
なぜ赤い絵を描くか。
人の心に秘めた情熱や野心みたいなものを描きたかったんだ。その色を赤色で表現し、象徴させたんだ。
生きているうちに自分自身を解放して、
表現するんだ。
芸術は勝負なんだよ。
わたしは負けたことがない。
いつも勝ってきた人生なんだ。
ミスはおかさないし、いつも完璧なんだ。
赤色は勝負の色なんだ。
自分の主張や意思を紙に表現するのが画家だ。
その主張や意志の内容を変えることはできない、譲れない。」
本間「はぁ~~、、お話を聞いていると、ため息が出てしまいます。先生の芸術に対する探究心には、感嘆するばかりであります。そのお考えは なんか人生にも繋がっている感じがして、勉強になります。ありがとうございます。」
柳林「大河原先生、アトリエはおいくつおもちで?」
大河原「軽井沢と山中湖とこの自宅の3箇所だが」
柳林「..あとひとつお持ちですよね、お近くに。」
大河原の顔色が変わる
大河原「どうして君 知ってる?」
柳林「先日館長の長内さんが、岩谷叶実さんにアトリエをみせていました。
その話を聞きまして」
大河原「あそこには誰も入れるなと言っておいたのに、、けしからん。
私はスランプの時代があって、突然、何も描けなくなってしまった時期かあったんだ。
絵も暗くなってしまってな。。その時苦しんだ時代に使っていたアトリエなんだ。今はまた描けるようになったのだが、あのアトリエはもう使いたくないから、だから私自身も行っていないし、他の誰も入れないようにしているんだ。」
柳林「そうだったんですね。。
先生にもそういう苦悩時代があったんですね。。。」
本間「先生の絵は、静けさの中に情熱や愛情を感じられる、メッセージ性のある絵から人々がそれぞれに何かを感じ取り、絵に込められた力が、観る者に伝わって、未来に繋がっていくと。後世に残したい名画を描く現代の巨匠と雑誌の絵画評論家が論じてるのを先日拝読しました。
先生のファンも多くいるので、私たち警察も、早く解決して先生にもファンの人たちにも穏やかな日々に戻ってもらいたいと願っています。」
大河原「本間君って言ったね、ありがとう。
柳林さん、本間くん、日本の警察は有能だ。必ず犯人を見つけ出せると私も信じている。私の絵を習いたくて、公開レッスンに来た4人の人たちの気持ちを考えると最近は辛くなってしまう。あの4人のためにも、犯人を捕まえてください。お願いします。」
本間 「はい! 承知致しました。
それでは、お忙しいところ、会っていただきまして、ありがとうございました。」
柳林「では、そろそろ失礼致します。 またなにか変化などありましたらいつでも、ご連絡ください」
大河原「わかりました、柳林さん ありがとう。」
柳林と本間は、大河原のアトリエを後にした。
つづく




