第62話 観測齟齬
「奴が、ワタシ様の装備を?」
ペペロンチーノの案内に従い、クライシスはザクロ村の中心部へと向かっていた。
そして走りながら、自分たちに近づく魔物を撫で斬りにする片手間に、彼は詳しい戦闘状況を尋ねていた。
「はい!この目できちんと確認しましたから、間違いないですっ!あれはマスターのSS級装備の一つ、ガンズ・オールツヴァイでした」
「ふむ……」
たしかにガゼル・ホップスは珍しい転移魔法の使い手ではあるが、それ以外のステータスは平均以下にとどまっている。
そんな凡人だとしても一瞬で超人に変えてしまうほどの魔力が、SS級オーパーツには秘められているのだ。
「マスター。油断なんかしちゃいけませんよ? 実力ではもちろん、マスターの方が圧倒的に上でしょうが、向こうにはマスターのSS級装備があるんです。物量で押されてはきっと勝ち目はありません」
「ええ分かっていますとも。ワタシ様は油断なんて、これまで一度もしたことありませんよ?」
(えぇ?)
ペペロンチーノは、自分のご主人様がこれまでで何回死にかけたかを数えていた。
「──しかしそれにしても、少し妙ですね」
「ほぇ? 妙って……、なんのことですか?」
「先ほど、あなたはガゼル・ホップスが魔法を使うのを見たと言いましたよね?しかし話を聞く限りだと、あまりにも強すぎるのです」
ガンズ・オールツヴァイの持つ全ステータスと魔法の二倍が、非常に強力な効果なのには違いない。
けれども、たとえ使用者のガゼル・ホップスの能力が二倍に増えたとしても、それはせいぜいINT500~600くらいであって、ペペロンチーノの魔法能力を上回ることはないはずなのだ。
「ペペさんの見たというマナの高圧縮によるイナズマや、エネルギーの炸裂反応は、少なくともINT1000以上が無いと起こらないはずなのですよ」
「1000ですか?!! そんなの、ダンジョンボス級じゃないですかっ! それに……大きすぎます。あり得ないですよっ」
「ええ。それに奴は昔は召喚魔法なんて使えなかった。たしかに同じ空間系統なのでシナジーは十分ありますが、いきなり複数体召喚なんてあまりに不自然……」
「うーん。ということは、何か他にも強力なオーパーツを隠し持っているかもってことですか?」
「それか、真面目に修行したかですが……」
ゲンサイから聞いていた限りのガゼル・ホップスの性分は、コツコツ何かを努力したりするタイプでは決してないと思えた。
むしろその逆だからこそ、力のない民間人相手から搾取し、悪烈な暴行を働くという事件を起こしたのだ。
ガゼル・ホップス自身に召喚魔法のスキルがないなら、それはオーパーツの能力だと考えられる。
それは最悪の想像へと帰結した。
もし奴が、ガンズ・オールツヴァイ以外にも2つか3つのSS級オーパーツで身を固めていたら……クライシス達の勝ち目はほとんどゼロになるのだ。
「……とにかく急ぎましょう」
「はい」
ここからでもエルダーツリーの下から立ち昇る黒煙が見えた。宿屋が軒並み焼かれているのだ。
それを傍観する巨大なストーンゴーレムの姿も確認できた。
クライシスは自分とペペロンチーノに機動性補助を使用。
超加速を得ると、二人はいっそう先を急いだ。




