Act.8「艦隊戦」.2
縦深陣、要するに盛大な数と火力のごり押しだ。大規模な部隊を敵の眼前に立てて最大火力、最大範囲を連続して攻撃し敵陣を突破。分断した敵陣に深く入り込み包囲殲滅する。
数的有利を如実に押し付ける縦長の陣形だ。戦力が拮抗している状況であれば同時攻撃を防がれ、長く伸びた部隊を逆に分断殲滅される可能性もある。
だが、瓦解した敵の戦線を打ち砕くにはちょうどいい。
「攻撃の要は相手のミサイル艦隊だ。通常のビーム砲戦艦より面の制圧力は高い。正面から突っ込んでミサイルを掻い潜ることは出来なくはないだろうけれど……」
〈テイ、研究所の非研究員は脱出完了したわ。あとは私や、データの持ち出しに手こずってる研究員たちだけだよ〉
「だからと言って、ミサイルを通すわけには行かないだろう」
〈うん。でも少しは気が楽でしょ。大丈夫、この研究所はそう簡単に吹っ飛ばないから〉
量子通信の向こうの声は明るい。だからと言って、彼女ら研究員が恐怖を感じていないわけではないだろう。
戦争や対立から離れたはずの場所が突然戦場になった。
その戸惑いから、まだ抜け出せていないはず。
〈それをいうなら、あなただってだよ。目を覚ましたら急に戦場で、AIユニットになっていて、戦場に放り投げられて。地球人って本当に戦闘民族かなにか?〉
「ずいぶんと酷い評価だな」
〈だって、地球人傭兵の噂ってすごいのよ。軍が開発中の機動兵器に偶然乗り込んだ傭兵がそのまま試作機使って戦況を覆したとか。雇い入れた傭兵をテストパイロットにした実験中の試験機を、襲撃してきた敵軍の正規部隊を返り討ちにしたとか。あと、数万隻の大艦隊を世代遅れの機動兵器に乗った地球人傭兵七名で撃退したとか。あ、あとダメージを追った機体を敵要塞に「バンザーイ」って叫びながら叩きつけて任務を完遂したとか〉
「最後やったの絶対日本人だろ」
他にも「ロボットアニメの世界かよ」とか突っ込みたくなってやめた。事実、今この状況はそんなSF世界であり、地球人はその才能をいかんなく発揮しているらしい。
「なるほど、言いえて妙だがその通りかもしれない。でなきゃ異世界転生なんて発想出てこないからな」
地球人が持つ闘争本能。それが開花しているというのなら、それもいい。
ひとまず、目の前の艦隊に勝つ要素はあるらしい。
「距離、六・四光秒。タキオンミサイル放出、発射間隔を、十二秒毎にセット。タキオンエンジン、最大加速!」
メルクリウスから放出されたミサイルが宙を漂い、それを置いて船は加速する。
最大で光を超える速度を出すタキオンエンジン。だが戦闘機動となればそれはかなり制限される。お互いの攻撃距離までおよそ五分。
艦隊もすでにこちらを補足しているのは間違いない。その移動速度に驚いてくれている内に、テイはさらに距離を詰めて目標の位置を割り出していく。
「見つけた」
勝負を決めるのは、速さであった。
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