Act.7「帝国艦迎撃」.1
〈こちらは帝国派遣部隊である。諸君らを保護するべくこちらに遣わされ――〉
帝国艦からの通信が、星間救難チャンネルで発信される。彼らの言い分は、あくまでこちらの救援だ。決して自ら引き金を引くのは、世論的によろしくない。
ならば、メルクリウスには、先制攻撃のチャンスだった。
「射角固定。ロックオンマーカーセット。タキオンエンジン出力低下。慣性航行を維持」
わずかなスラスター制御で、流れていく機体を安定させる。その銃口をぴたりと敵艦へ向けて、その瞬間を待つ。
〈諸君らの矜持を理解したうえで、全研究員、全職員の安全を確保するための最善策だと我々は思案する。他勢力の艦艇もここに迫りつつある現状、早期の返答を期待する〉
〈誇り高き帝国艦の艦長よ。その軍服に袖を通した時の誇りがまだあるのなら、無意味な問答を繰り返すより、自らのやり方で結果を示したほうが建設的であろう。むろん、我々はそのやり方に心から抵抗させていただく〉
舌戦に時間をかけるつもりはない。宙間物質を貫いて飛んでくる超長距離狙撃ビームが、帝国艦の横をかすめた。射程距離四コンマ七光秒。従来の艦艇に搭載された中性子ビーム砲の倍の射程を誇る一撃だ。
〈おい外したぞ〉
〈宙間物質の影響でわずかに軌道が歪んどるのだ! ワシのせいではない!〉
〈うーん、やっぱり到達速度が遅いからな。ファイン主任、タキオンエンジンを応用した新型の砲撃システムを構築しましょう〉
〈タキオンバーストブラスターか。内部構造がまだまだ理論段階でしかないんだがなぁ〉
通信から流れる研究者たちの声は、どこか緊張感を薄れさせる。
そもそも、彼らは好奇心の優先順位が高すぎて、目の前の脅威に対してあまり関心がない。どこまでも研究者気質というか、能天気というか。
そんなことを想いながら、テイは照準を合わせた。
「威嚇射撃を行う」
先制攻撃の長距離狙撃は命中しなかった。ならば、テイも当てるわけにはいかない。
あくまで牽制、威嚇としてこの射撃は行われる。
〈直上より熱源! 被弾コース、いえ、外れます!〉
〈あくまで威嚇射撃だということか!? 帝国軍人を馬鹿にするのも大概にしろ、この狂人どもが! 全艦攻撃用意!〉
〈よろしいのですか……?〉
〈奴らにこちらの善意を受け入れる器量がないと言うのなら、必要な実力を持って恭順の意志を与えてやるのが、我々の仕事だ!〉
どうやら、二度にわたる威嚇射撃が相手の神経を逆撫でにしたようだ。
そもそも、帝国としても、共和国と敵対した研究所が他勢力に媚びることもなくこのままでいられるはずはないと考えたはず。そして他の勢力も同じく。
だが、想像以上に、この研究所の者たちは自分勝手だった。
「だからこそ。これ以上進ませない」
今度は、明確に被弾コースでロックオンした。
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