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Act.7「帝国艦迎撃」.2


〈直上熱源、再度上昇!〉

〈回避運動! 取ぉり舵!〉


 発射される中性子ビームを、艦艇は高速機動で回避する。その巨体ゆえに勘違いされがちだが、宇宙艦艇の移動速度は水上船のそれとは比較にならない。

 同等以上の巨体が、航空機、高速戦闘機並みの速度で移動する。旋回力こそ低いが、レーザー核融合炉の齎すプラズマジェットの推進力で被弾コースから離れようとする。

 ビームを逸らす強電磁場障壁が防御し、帝国艦は研究所の絶対防衛ラインへ接近していく。


「逃がさない」

〈上のカトンボから迎撃する! 全艦迎撃、ミサイル発射管一番二番、超高速ミサイル装填。全砲門照準、撃てぇ!〉


 三隻の戦艦から、光が放たれた。

 通常の艦隊戦では、最大で数万隻規模の戦いが行われるため、一隻一隻にかかる戦闘の比重は小さい。宇宙空間に存在するとはいえ、戦場がどこまでも広大無辺というわけではない。そのため、艦隊戦でも時に遊兵(ゆうへい)――戦闘員として機能しない兵士が生まれてしまう。

 多少数隻が落ちたところですぐに補充され、数百、数千の単位での差が戦闘の優劣を決める。


〈ソナー反応、他に検出できず。敵は一隻です!〉

〈一隻だけで迎撃など、嘗めた真似を! 撃ち落として奴らのドックに放り投げてやれ〉


 だが、数隻単位での遭遇戦となると、そうはいかない。一隻一隻が貴重で重要な戦力となる。一隻の差が、数値の上では倍の差になりえるのだ。

 何より、すでにこの四大勢力の技術的進歩は極まりつつある。つまり、艦艇同士でさほど大きさな差はない。


〈敵艦、高速で旋回。その移動速度は、従来の三倍の速度で移動中!〉

〈三倍だと? データの間違いではないのか〉

〈ですが、こちらの自動照準装置が機能していません! こちらの弾道が、完全に振り遅れています!〉


 通常ならば、敵の移動距離に合わせた偏差射撃で命中するはずなのだ。それが、完全に追いついていない。


〈敵艦回頭! エネルギー量増大!〉

「発射」

〈左舷被弾! ミサイル二番管沈黙、攻撃能力、五十パーセントにまで低下……〉

〈ダメージコントロール! 区画封鎖、敵射撃方向に回頭、被弾面積縮小!〉

「間に合わないさ」

〈敵艦、直下に移動!〉


 タキオンエンジンの出力は、完全に従来戦艦を置き去りにする。

 迎撃能力に優れた駆逐艦がメルクリウスを捕らえられず、高火力の重巡洋艦の砲撃は命中しない。


「帝国艦に通達する。今すぐ船を捨てて脱出するんだ。すでに航行能力は奪った。慣性航行のまま進み続ければ、恒星ロンドミナスの引力圏から脱出できなくなるぞ」


 テイの降伏勧告が、戦場に響く。

 すれ違いざまに叩き込んだビームは、駆逐艦両艦のメインエンジンを貫いていた。すでに重巡洋艦のエンジンは左半分が破損。半分の出力では、まともな星間航行どころか、帝国領への帰還もおぼつかないはずだ。

 ここはそれなりの辺境宙域。救援が来るには時間がかかる。その状態でこの壊れた船を修理するのも、生き残るのも、無理がある。


〈敵艦より降伏勧告。今なら、帝国領への帰還船を手配すると……〉

〈民間の中立研究施設が、帝国の船を落とした上に、情けまでかけるだと!〉

〈両駆逐艦より入電。我主動力を損傷せり。航行不能につき、救援を請う〉


 それは、仲間からの意見具申であった。現在の船の状態を無視して戦うような無能な艦長は、ここにはいなかった。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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