第三話 サムダイルの異変と酒
外も少し暗くなってきた。
そろそろアウレイヒ一行がいる酒場に行こうかな。
夜になると街頭や、水球のようなもの、ひも状の水が宙に浮かび淡く光りだす。
さすがオアシスといわれるだけある、とても幻想的な風景は私を異世界に来たのだと自覚させるのに十分だった。
街道に人は少ないが、店の中からは騒がしい声が聞えてくる。
私が今から行く酒場は町の中央の方にある。
そこで少し走ろうかと思ったとたん。
路地から声が聞えた
「アガッ...ゴガッ...」
少しこもった、おぼれているような声が聞えた。
声のする方に向かうと
ゴポッ...ゴポポポ...
私は現れたものに目を疑った。
巨大な水の塊が男を取り込んでいる。
今にも溺死してしまいそうだ。
しかしどうしよう、武器も持っていないしこんな大きな水の塊に対して有効な攻撃手段など持ち合わせていない。
私がそうして出方を迷っていると
「見つけたわよ~私の大事なマリストちゃーん!」
そんな声が上から聞こえた後ふんっっ!!という音とともに水の塊ははじけ散った。
気のせいかな、背筋がぞっとするような声とともに黒いローブに身を包んだでかいやつが空から落ちてきたんだけど。
マンション二階分くらいはある大きさの水の塊だったんだけどな。
ふんっ!なんかですむ感じではないと思うんだけど。
「このボーイは気絶してるけど無事ね、あらー?カワイイお嬢ちゃんもいるじゃない。」
上から落ちてきたおおきな怪物は呆然としてる私に話しかけてきた。
黒いローブをまとっているが、恐ろしくでかく、青い肌が少し見えている。
この怪物が抱えると男も少女に見えてくる。
よし、この場はこの怪物に任せていったん離れよう
「あ、どうも。この度はありがとうございました。それでは失礼します」
「もーそんなすぐ立ち去ろうとしなくていいのよ!夜のパトロールで青髪の子に会えるなんて!
運命感じちゃう!」
くそぅ、いい感じにこの場を離れられるとおもったのに。
ローブの中からにょきりと出てきた青い手に止められた。
「おいマイム。何をやっている。あまり人目に付くなといったはずだぞ」
なんだなんだ、こんどは長めの剣を腰にまとったすらりと背の高い男がやってきた。
怪物よりは大分話の出来そうな男が来た。
でも私は聞き逃していない、さっき確かに(人目に付くなといったはずだ)と言ったことを!
このままじゃ変な薬を飲まされて小さくなってしまうかもしれない。
それにあの水に溺れていた冒険者もこのままではまずい、いったんこの怪物の間合いから離れよう
シャッッッ
私はすぐにその場を離れようとできるだけ早く力を込めた。
しかし、ザバァという音とともに私の行く手を阻んだ。
「アーちゃん、気づかないの?この子たぶんお告げにあった子よ。こんな任務の最中に自分の趣味を持ち込んだりしないわ!」
「ああ、あのお告げの件に関しては確かにそうだが、マイム、その趣味を持ち込まないとやらはどの口が言っているんだ?昨日だって俺がどれだけあの冒険者に謝ったと...おい、その手に抱えている男は昨日の奴じゃないか?」
「......さてと、あなたには話があるので、このアーちゃんに後は従うのよ!」
そう怪物が言い終わると、足に力を入れ上に行こうとした。
「ったく、お前は、、、。あ、そうだ我々の説明を忘れていたな。俺はアイルだ。それで、、、、」
まずい、この男一人だけなら何とか逃げれそうだが、そうしたらあの怪物に連れ去られた冒険者はどうなる。
こんな世界だ、水の怪物の存在の口止めで殺されてしまうかもしれない。
しかし、この二人は強い。
脳は自分一人で逃げるべきだと、体もすべて私に危険を知らせている。
「というわけでな、すまないが我々とともにご同行願いたい」
過集中。彼女はこの場を危機的状況と判断し、それを打破するため、そして自分の中の善意と考察の葛藤により、一瞬の間周りの情報を遮断し思考にすべてを注いだ。彼女に男の話はなにも伝わっていない。
私は決めた、一人でこの場を離れることこそが最善の選択だろうが関係ない。
あの冒険者を助けて、私も安全な場所に避難する。
アリーシャは一瞬の間に怪物の手に移動した。
少女だと油断していた二人はその動きにすぐに対応できなかった。
アリーシャはすぐに怪物の手から冒険者を抱きかかえ、時間能力で腕を消し飛ばそうとした。
しかし、怪物の手は吹き飛びはしたがそれは水になっていた、予想外の現象にアリーシャは一瞬戸惑ったが、怪物のスキを見逃さず、屋根に降り屋根上をかけた。
「も~元気な女の子ねぇ。しかもあの能力。間違いないわ。絶対捕まえちゃうわよ♡」
「俺が追う、マイムは水であいつの進路を邪魔するんだ。あいつめ、俺の話を何一つ聞いていなかったのか、、?!」
マリムとアイルは少し会話をし、すぐにアリーシャを追いかけ始めた。
アイルは走り出すと同時に少し長めの剣に水をまとい、後ろに水を一気に放出してアリーシャとの距離を縮めた。
「ん、、、、おお!?なんだ!?」
すると冒険者が目覚めた。
「あなた、水の塊に取り込まれそうになってたところをあのでかい怪物に助けられたの。だけど、あの水の塊の存在を知られるのはあの二人にとってあまりよくないみたいで。このままだとあなた殺されるわ。
で、この私が今助けてあげてるのよ」
アリーシャは少しめんどくさそうな顔をして冒険者に説明した。
「「愛の手」」
すると上を浮かんでいる怪物がそう叫び、アリーシャに五本ほどの水の大きな手が迫りくる。
怪物はさっきよりスリムで小さくなっている。
腕の件といいまだ底が知れない。
「あなた!剣持ってるわよね!ちょっと借りるわ!」
「そりゃいいが、もう少し穏やかな動きにしてくれ、うぷっっ、気持ち悪くなってきたぜ。ん?あんたもしかして」
アリーシャは冒険者のことを気にかけず剣で進路を切り開いた、水なので一瞬しかその進路は開かないが勢いよく屋根をふみだいにミシミシと踏み込み水の手を突破した。
うっっっっっっ!オロロロロロロロ
冒険者は酒を飲んでいたようで顔を真っ青にしながらはいていたが、アリーシャは気にしなかった。
なぜならこの男は酒場でアリーシャのことを卑下してきた男だと途中で気づいたからだ。
そして、その爽快感と緊迫感にすこし顔に笑みを浮かべながらアリーシャは走り続けた。
目的地はアウレイヒたちが待つ酒場だ。
都市の中央部付近にあり一般人も多くいるため、人に知られたくない二人は追うのを諦めると思ったからだ。
「アーちゃん、この子ニヤニヤしながら逃げてるわ~。冒険者助けようとしたかと思えば冒険者が吐いてもわめいてもお構いなしだし、こんなワイルドな女の子!私好み!」
「お前の趣味などどうでもいい!中央部に逃げている。面倒ごとは避けたい、少し荒くなるが俺を止めるなよ!」
「アラヤだこわい~も~二人とも大好きよ!!!」
「「水神流 神罰 荒波」」
「「愛握り」」「「愛の手」」「「愛のお仕置き 正拳突き」」
アイルは愛の手で後ろから押され、剣からの水の放出との相乗効果ですさまじい勢いでアリーシャの横に現れた。
アリーシャは逃げようとしたが上と下から自分の何倍もある水の手で押さえられて身動きが取れなかった。
それを見てアイルは荒々しい水の斬撃をアリーシャにはなった。
「うっぷ、、、また水かよ!え、おまえ!!」
アリーシャは冒険者を手で抱き、背中で斬撃を受け止めた。
アリーシャはそのまま路地の下に落ちていった
アイルもなぜかマリムに水の手で突きをくらい下に落ちていった
「「愛のクッション」」
マリムの水と、地面につく瞬間に自分の時の流れを咄嗟に遅くしたことで、アリーシャと冒険者は無事に着地した。
ハァ、、、ハァ、、、ハァ、、、
アリーシャは限界だった。
もう動く力はなかった。
「お、お前。もう途中からもう息も荒くなって、凄いつらそうな顔してたじゃねぇか。なんで、お前をあんなに馬鹿にした俺をそんなに庇うんだよ。俺にそんな価値なんてねぇよ...」
冒険者はふらふらとアリーシャを物陰に移動させながらそういった。
「ちょっと調子乗って動きすぎたみたいね...でもあなた、前会った時もひどく酔いつぶれて、、、知り合いにも悲しそうな眼をむけられてたわよ。私だって、、、むかついたけど、つらそうだって感じたの。冒険者なんて職やってるんだものまだ若いし何か理由があって自暴自棄になってるんじゃないかって思ったの。私も少し経験あるから。」
「はっっ、全部見透かされてたってわけか。大人なのになさけねぇ。」
「大人だからとか関係ないわよ。、、、、、あの二人がまた来てしまうわ。速く逃げなさい。私は大丈夫だから。」
「俺は。もう見捨てたりしねぇ。こう見えて強いんだ。お前ほどではないけどな。」
アリーシャは気を失ってしまった。
それと同時に二人がやってきてしまった。
「ちょっと派手に動きすぎたわねぇ。まったく、話を聞かない子なんだから♡
あらあら、気を失っちゃったのね。身を挺してまで冒険者を守るとはねぇ、昔を思い出しちゃうわぁ♡
まぁでも、あの技はやりすぎだったけど。冒険者ちゃん、剣をおろしなさいな。私たちを誤解してるわぁ~」
「、、、、、、、ふん」
アルスはなぜかふらふらとしている。
「おうおう!うちの恩人に何してくれてんだぁ!?」
「ア、アリーシャちゃん!すぐ回復するからね!」
「、、、、兄さん。でもこの二人どこかで見たような。」
「強いとはいえ、女性と手負いの冒険者をを二人がかりで攻撃するなんて、、、許せない!!」
冒険者が剣を取り出し立ち向かおうとすると
アウレイヒたちが駆けつけてきた。
「はぁ、、、いい男たちが私に熱いまなざしを、、、!!」
「マリム....。あなたたち、少し待ってください、私たちはサムダイル騎士団のアイルとマイムです」
「「「「「!!!!」」」」」
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次の日




