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禁忌×戦闘ディストーション  作者: Riviy
第七章 『禁忌』×戦闘ディストーション
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Mission80.『禁忌』と云う名の物語



最初に目に映ったのはティモリアによく似た青年と神々しいほどの雰囲気と美しさを持つ女性。女性の腕の中には赤子が抱かれていて見ているこちらにもその幸せオーラと相手を愛している事が伝わってくる。


暗転


場面が変わり、青年は女性と赤子に見送られて去って行く。その前には突如として現れた戦場。血に染まる地面と刃物を持つこの手。青年が顔にかかった返り血を強引に拭い取った、その時。彼の心臓を背後から貫くものあり。青年が見るとそこからは刃の切っ先が見えていた。震える体を叱咤して振り返るとそこにいたのは嬉しそうに口元を歪める、仲間だった。ズボリ、と不気味な音を立てて抜かれた刃物。青年が倒れ込む。憎悪、悲しみ、怒り、痛い、寂しい……様々な感情がこちらに痛々しく伝わってくる。青年の瞳からは光が、意志が消えていく。依然として周りでは雄叫びや刃物同士が交差する音が響き渡っている。

青年の瞳から、完全に光と意志が消えた時、彼の瞳からはもやは意味を持たない涙が流れ落ちた。


暗転


女性の腕の中でスヤスヤと眠る赤子の周りを小さな光が舞う。女性は気づいていない。いや、見えていない。その光が赤子の瞳に吸い込まれると赤子の瞳が一瞬、開き、金に光った。かと思うとすぐに元の色に戻り、赤子は瞳を閉じ、再び眠りを続けた。


暗転


〈〈なんで、なんで、なんで、裏切った?〉〉

〈〈あの2人を残してなんて逝けない…〉〉

〈〈なんで裏切った、……憎い、悲しい、憎い、愛しい、悲しい、憎い、愛しい、痛い……〉〉


彼らの周りを巡るようにティモリアの声よりも少し高い声が囁く。そして、次にとても低い、地を這うような声が響き渡った。


「「「世界は『禁忌』を犯した」」」

〈〈この『罰』を知らしめてやる。憎悪は、誰でもない、世界自身の罪だ〉〉


全員が驚愕していると赤子に吸い込まれたような光が暗闇の中に現れた。異様な神々しいほどの輝きを放ちながら、その光は心臓から黒いものを流し続けるティモリアの側で一瞬、人型を作る。と"誰か"に向かって飛びながら暗闇を弾き飛ばした。


光も暗闇も晴れると驚愕したまま動かない彼らを襲ったのは立ってもいられないほどの揺れだった。まるでその揺れは、世界の奥底から響いているような錯覚に陥るほどに、大きかった。上からパラパラと塵が落ち、何処か崩れたのかズドォン…と重い音がした。


「何が起きてるの?!」

〈〈まさか……自分の身を呈して…滅亡やりなおしを早めたの?!〉〉

『『はぁ?!』』


緋暮のまさかの言葉に誰もが驚愕の声を上げた。国彦がティモリアがいた場所を見ると彼は心臓に自ら突き刺したナイフを握り締めたまま息絶えていた。が、『忌鬼』のように黒い靄と化して消えていかない。目元には涙の跡が残っていた。


〈どういう事?!緋暮ひー!〉


竜胆華丸が緋暮の両肩を掴み、鬼気迫る表情で訊くと彼は〈〈仮定だけど〉〉と前置きしてから説明し始めた。


〈〈僕が離脱たんどくこうどうする前は早めるすべなんてなかった…もちろん、封じ込められてからもだよ?それに、早めるなんて出来やしないの。でも……もし、ティモリアが独自にそれを見つけ、切り札としたら……!〉〉

「っ。まさかの予想外イレギュラーが此処で回ってくんのかよ?!」


彼の説明を聞いて西珠が自暴自棄気味に頭をかきむしりながら叫ぶ。


「妃翠ちゃん!聞こえる?!今すぐ全員を撤退させて!……聞いてたでしょ?いいから早くっ!」

「おいっ!第五部隊を先に撤退つれてけっ!」


螢がマイクを通じてオペレーター部隊に、管狐が狼狽気味の第五部隊の神達に叫ぶ。全員が全員、どうしたらいいのか思考が回っていなかった。世界が『やり直し』、簡単に云えば滅亡のカウントダウンを刻み始めているのだ。慌てない方が可笑しい。

最後の最後に厄介なものを起動のこしやがって!

千聖は憤怒の表情と腸が煮えくり返る思いで既に逝ってしまっている『禁忌』を振り返った。そこで彼は国彦がティモリアを見たまま固まっていることに気づく。千聖もよく見ると…死んでいるのに消滅していない事に気づいた。そして、もうひとつ、疑問を見出だす。

何故、こんなにも、"静か"なんだ?


「……亜矢都」

〈何かしら、ちーちゃん〉


自らの主に語りかけるもその声色は淡々としている。自分達のように慌てていない。先程の驚き様とは打って変わって臣下達は平然としていた。まるで"予想通り"とでも、言うように。"切り札"はこちらにもある、とでも言うように。

千聖の額から冷や汗が伝う。


「亜矢都、何か知ってんのか」


千聖がそう訊くと彼は、妖艶に笑ってみせた。受けた傷をもろともせずに。その笑みには何かが隠されているような気がしてならなかった。


〈ふふ…もう、ちーちゃんもわかってるでしょう?〉

「?千聖、亜矢都、どうしたの?」


なにやら尋常ではない雰囲気を嗅ぎ付けた国彦が躊躇しながら問う。他の者達が慌ただしく動き出す中、第十部隊だけが時が止まったかのように静まり返った。

パラパラと上から落ちてくる塵と破片。亀裂が走り出す床。世界が悲鳴をあげているような、止まぬ揺れ。それだけが人間と神の間を支配した。


ふっと誰かが小さく息を吐いた。


「何か、策があるの?」

〈その問いに、私達は"はい"と答えましょう〉


ざわっ。神が知るその策とは一体。

誰と言うまでもなく、白鉄が誰かを振り返りながら、笑う。


〈そうやろ?神様とうま


そこにいたのは碧の瞳を、真剣な瞳をこちらに向ける灯茉だった。


主組は驚愕に目を見開く。何を、何を言っているんだ?

それにいち早く反応したのは彼の唯一無二の主、国彦だった。


「どういう事?!灯茉は付喪神d〈それ、本当かしら〉…え?」


国彦の言葉を遮り、亜矢都が言う。

国彦は反芻するようにその言葉を噛み締める。そして、思い浮かんだのは"あの時に思い付いた仮説"の一部分。全員が、正確には主組がその仮説に、驚愕に身を強張らせる。

避難している第五部隊をどうやって入って来たのか知らないが小乃刃が誘導している声が異様に大きく聞こえる。

弥厳が主組の動作に目を伏せると灯茉を一瞬見、口を開く。


〈貴方達が今、考えた通りだよ〉

〈……隠してたと思うかも知れません。しかし、これは"あの方"が御決めになった"約束ねがい"なのです〉


弥厳に続いて竜胆華丸が両手を胸の前で組みながら悲しげに言う。


〈"あの方"は、もう逝ない。けれど、いにしえより封じられていたものがワタシ達に戻って来たわ〉


亜矢都が何かを懐かしむように言う。


〈さっきの映像と光で全て思い出したんよ。おれたちも、灯茉も〉


白鉄が苦笑しながら言う。


〈それが、今、目の前にある答えです〉


狐幸が滑るように答える。

全員の思考がひとつになった。全員の視線を浴びて、灯茉が口を開く。それはあまりにも切なくて、恐ろしくて、愛しい事実。


〈……妾はティモリア、いや、正しくは蒼茉そうまと女神、アラティナの間に生まれたあの子供だ〉

『『『??!!』』』


女神、アラティナ。人間の彼らでもよく知る名である。この世界に最初に生まれ落ちた原初の神。文献にはある人間の青年と結婚し、子供を授かったとされている。がその子供の処遇は不明であり、また事実を聞こうにも女神は『禁忌』が犯された数日後に突然、息を引き取ったと云う。そして、その後に生まれた神達は女神の子供とその相手を決して口にはしなかった。知っているのに靄がかかったように思い出せない"約束ねがい"。

現在に至るまで、彼女の子供も夫となった青年も明かされぬままだった。


まさか、『禁忌』となったティモリアが女神の夫で灯茉がその間に生まれた子供だったとは……

にわかに信じがたい話だった。だが、ティモリアと灯茉が親子であるならば全てが繋がるのだ。何故、あんなに雰囲気がよく似ていたのか。何故、ある人を愛しそうに見ていたのか。何故、涙を流したのか。


〈女神、アラティナは自分が死ぬ前にある"約束ねがい"を生まれたばかりの神達やこれから生まれる神達に埋め込みました。それは、"時が来るまで我が夫の存在も我が子の存在も、忘れる事"。アラティナは自分の夫が裏切りのうちに殺され、『禁忌』として転生したのをどういう経緯かは不明ですが、知ったのでしょう〉


狐幸が淡々と説明を連ねて行く。彼らの周りだけ、時が止まったようだ。


〈いつか、"その時"が来たら"約束ねがい"を解き、オレ達に見届け人をさせる気でいたんだろうね……"あの方"は…〉


弥厳が悲しそうな、嬉しそうな歪な笑みを浮かべる。


〈〈見届け人、って…なに?〉〉


緋暮がそう問うと竜胆華丸が彼を安心させるように微笑みかける。


〈自分の夫が、自分達が、世界が犯した罪を償わせるための"力"を使う者の結末を見届けさせる……俺達、神に与えられたアラティナ様の慈悲〉

「……まさか……その"力"って…」


西珠の言葉にハッと息を呑む。ほぼそれと同時に国彦がよろよろと灯茉に近づくと空中に浮かぶ彼を見上げた。その瞳を灯茉は目を逸らさずに見下ろす。


「……灯茉。うんん、"僕が信じた唯一無二の神様"、君が思い出した全てを教えて」


澄んだ瞳が灯茉を貫く。遠くで世界が悲鳴を上げている。灯茉はゆっくりと肯定の意を示し、口を開く。国彦と灯茉の耳につけられたイヤリングが揺れ動く。


〈妾は付喪神であるが、実際にはそうではない。妾はアラティナの血を強く受け継いだのじゃ……思い出した本来の名は憑喪神つくもがみ。世界を司る神〉

〈付け加えちゃうと、女神ちゃんのお力が強すぎた事とその跡取りと云うことで絶対神、唯一神でもあるわ〉


灯茉の言葉に亜矢都が付け加えたように言う。それに灯茉は言いたかったのか亜矢都を一瞬、睨んでいたが彼は愉しそうに笑うのみ。

一方、主組は驚きながらも妙にストンと心の中の落ち、納得していた。彼らに感じていた妙な気配と云うかそういうのが晴れた。と、此処で螢が思い立ったように前のめりになって叫んだ。


「じゃあ、灯茉ならどうにか出来るの?!」


"絶対神であり、唯一神"の彼ならば、この『やり直し』を止められるのではないか。そういう希望が芽生える。

全員が灯茉を希望に満ちた目で見ると彼は悲しそうな顔をして〈2つ、言わなければならぬ事がある〉と前置きをした。そして、告げられたのはまたしても衝撃的で、希望と絶望に満ちた言葉だった。


〈妾に、『やり直し』を止めるほどの"力"はない〉



やっと全員分のプロフィール出せました!てかこの話、今月中に終わる可能性ありです。

ちなみに憑喪神って「付喪神と漢字一文字だけ違ってるなー」って思って考えつきました!まぁ「憑く」と「付く」ですからね、読みも似てる…


・候補生&訓練関係者

神居かむい 国彦くにひこ

本作の主人公。内気な性格だが人一倍、勇敢であり人思い。臣下に付喪神(本当は憑喪神)の灯茉とうまがおり、仲は普通。武器は自分の身長を遥かに追い越す大太刀(当然、引きずります)→大脇差2振り

→戦闘支部第十部隊『神樂』所属

18歳、168cm

第一人称:僕 第二人称:君


灯茉とうま

国彦の臣下である付喪神(本当は憑喪神)。少々傲慢な態度を取る。よく勘が当たるので観察眼がすごい。普段の武器は無し。主人である国彦に憑依して闘う。

主である国彦の呼び名は国彦

→戦闘支部第十部隊『神樂』所属(国彦の臣下のため所属扱い)

推定26歳、174cm+ヒール2cm

第一人称:妾 第二人称:お主、こやつ


・『禁忌』

ティモリア

本名、蒼茉そうま。『禁忌』のボス。『罰』として再び生まれる前は神と結婚した勇敢な青年戦士だった。が仲間の裏切りで死に、その影響で『禁忌』となる。灯茉の実の父親に当たるが自分が死なない限り、思い出さないように洗脳している。前世の記憶持ち

年齢不詳、180cm

第一人称:某 第二人称:貴様



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