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禁忌×戦闘ディストーション  作者: Riviy
第七章 『禁忌』×戦闘ディストーション
79/85

Mission79.『罰』とは




揺れが一時的に収まったところで外で『忌鬼』や『アラーヴァ』と対戦していた小乃刃は龍のように変貌した元お社を見上げた。パラパラと少しずつではあるが崩れかけている。その様子を他の隊員は呆然と見上げていた。『忌鬼』達はほとんど倒したが、残党もなにやら不安な雰囲気を察したのか元お社を見上げている。小乃刃は背中に生えた翼を動かし、飛び立つ。曇った大空から下を見下ろすとでこぼことしたクーデターのようなものや隊員や『忌鬼』達の黒い点が所々に存在していた。小乃刃は元お社を見るとナイフを握りしめた。


〈……どうした頭〉


頭の中に響く、新たな臣下、朝陽。2人の『神譜』が翼なためか、朝陽の声は彼女の頭の中に響くようになっている。

小乃刃は心配そうな声を出す朝陽に安心させるかのように笑いながら言う。


「嗚呼、心配するな……中に入ってみようと思う」

〈は!?マジで言ってんのかよ〉

「嗚呼、本気だ。私が冗談を言うとでも?」

〈ねぇな…〉


朝陽のため息が聞こえる、が彼は〈分かった〉と呟いた。小乃刃はありがとと云う意味をこめて朝陽に微笑む。もしかすると見えていたのかもしれない。朝陽も笑った。


「では、行こうか」

〈嗚呼!〉


小乃刃は翼を一回、大きくはためかせると崩れかけている元お社に向かって飛んだ。


**


突然、『神譜』を解いた国彦に驚いたような視線が向けられる。灯茉がその閉じていた瞳を開き、口を開いた。


〈そうじゃな、国彦。妾も少し、分かった気がするぞ〉

「…なんの話してんだ2人共」


話についていけない全員を代表して千聖が問うと国彦はティモリアを大脇差の切っ先で示す。それを見た全員が驚きに目を見開く。何故、『禁忌』である彼が泣いている?


「どういう…」

「きっとね、あの人自身も辛いんだよ。『禁忌』となって、『罰』を持って産まれ出て」


国彦がティモリアを見つめて言うが灯茉以外の全員には何を言っているのか分からない。ドォン、また、揺れた。何故、揺れるのか、崩れ行くのか。時間か、それとも『やり直し』か。


「………何が言いたいの?よく分からないんだけど」


螢が国彦に眉をひそめて問う。国彦がうん、と頷く。


「悲しいんじゃないかな」

「『禁忌』が?なんで?」

「………よく、わかんないけど。でも、誰かが、見知らぬ誰かが自分を殺しに来るって、知っている誰かが自分を敵とみなすって、悲しい事なんじゃないかな」


『禁忌』は人型を持ってはいるがその実態は自分達が犯したもの。何故、悲しいと…

そこまで考えて第十部隊はハッとした。もし、『禁忌』が元は感情を持つ人間であったなら。

もし、『禁忌』と同じ結末を迎えた悲しい人間であったなら。

ティモリアを見るとご名答と言わんばかりに不気味に微笑んでいた。


「…嘘、だろ…」

〈〈嘘ではない〉〉


管狐の震える声にティモリアが低い声でそう返す。彼が何に対して嘘ではないと言っているのか。混乱する脳内ではそこまで考えが回らない。

『禁忌』は、予想以上に複雑だった。


〈〈我らは…いや、正確にいえば"某"は元人間だ。そいつが言うように悲しいな。でも〉〉


一旦、口を閉ざしたティモリア。途端に油断していた第十部隊に向かって先が鋭く尖った無数の刃が襲う。それをもろに受け、全員が片膝を付きながら傷を押さえる。国彦が灯茉を気にして顔をあげるとなんと、彼には"運良く"攻撃が当たっていなかったらしく、怪我を負った彼らを心配そうに見守っていた。

嗚呼、やっぱり。

国彦は自分の予想が概ね当たっている事を察した。だが、確証がない。


「!国彦避けろ!」

「へ…?ーーーーー!?」


西珠の声に顔を灯茉と共に上げた時にはもう遅かった。目の前に、ティモリアがいたのだ。ティモリアは灯茉の右肩に何処からともなく出したナイフを深々と突き刺すと突き飛ばし、国彦の首を掴み上げた。国彦の手から大脇差が苦しみと驚き、衝撃によって抜け落ちる。


〈国彦!っ〉


灯茉が慌てと恐怖で顔を歪ませ、右肩のナイフを抜き放つ。第十部隊もティモリアに飛びかかろうとするが国彦が人質に取られている以上、手出しが出来ない。ティモリアは国彦の首を掴む左手に力を徐々に入れて行きながら、歪な笑みを浮かべた。


〈〈貴様が言うように某は悲しい。だが、それ以上に某は、許せないんだよ!!誰でもない、"あいつ"がっっ!〉〉

「あいつって、誰だよ。お前が元人間だとしても、お前を俺達が倒さなければならない事に代わりはねぇ。国彦を放せっ!」


ティモリアの憎しみの、憎しみによって変わった口調での叫びに負けじと千聖が大斧の柄を握り締め、叫ぶ。大斧の刻まれた双龍が威嚇するように蠢いた。ティモリアが鼻で嗤い、国彦の首を締め上げる。国彦が苦しみに喘ぐと灯茉が滑るようにティモリアに接近した。


〈灯茉!無茶はダメよ!〉

〈灯茉!〉


亜矢都と弥厳の悲痛な叫びさえ、頭に血がのぼっている灯茉の耳には入らない。灯茉はティモリアに接近すると右腕を振り上げた。途端、頭痛が彼を襲う。がそれを無視し、右腕を振り下ろした。


その時、ティモリアが優しげに笑ったように見えた。


〈〈『罰』とは、大切な者を守る行為。それを知ってくれれば、"俺"はそれで良かったんだ……なぁ、*****〉〉


誰もがその光景に驚き、目を見開いた。灯茉の方へティモリアは国彦を押し込むように投げ渡す。それを灯茉は空中でキャッチする。国彦の首の傷は案外浅く、灯茉はホッと胸を撫で下ろした。


「おい!何しようとしてっ!」


管狐の悲鳴じみた声に国彦は首の痛みを我慢しながらティモリアがいたであろう場所を見た。以前として揺れは続いている。先程までティモリアがいた場所では彼が諦めたのかナイフを持っており、虚ろな瞳をしていた。国彦は何をしようとしているのか理解した。彼らもそうだ。勝てないから自害しようとしているのだ。何故、自害するのかそれすらも分からない。


〈〈『禁忌』が死ぬと『忌鬼』の元だから全部黒い靄と化して消えちゃうよ!〉〉

〈逃げた方がいいんじゃないですか!?〉


緋暮の悲鳴じみた警告に竜胆華丸が叫ぶ。が、誰もがそれに耳を貸す事が出来ずにいた。そして、目の前で起きたその突然の出来事に誰もが目を疑い、嫌な予感を感じた。止められない。国彦が手を伸ばしたとしても、他の誰かが走ったとしても、間に合わない。


「ダメ!」

〈〈これが貴様等の、『やり直し』の末路だ〉〉


"誰か"が手を伸ばすよりも早く、ティモリアの持つナイフが彼の心臓を貫いた。そこから流れ出る泥のような黒い粒子、流れ、靄、風、光。それらがティモリアを包み込み、第十部隊も第五部隊も全てを優しく、それでいて勢いよく包み込む。彼らの傷や頬を黒い、優しい流れが包み、通りすぎて行く。


〈〈ーーーーーーーーーー〉〉

『『『?!』』』


風に乗って、何かが聞こえ、顔を上げた国彦と灯茉。千聖や螢達も顔を上げ、耳を澄ます。『神譜』が"何故か"解け、傍らに自らの臣下が寄り添う。視界が黒一色の中、彼らの目に何かが映った。それは、


「は…?」

〈どういう事、なんや…?〉

「……まさか」

〈そんな事ってあるのですか…〉

「ウソ…」

〈マジかよ……〉

〈仮定が………〉

〈〈僕、知らなかった……〉〉

「なんだよ…これ」

〈えぇ~……〉

「……当たった」

〈……そういう、事じゃったか…〉


様々な感情が渦巻く中、彼らの目に映ったそれは、"ある昔話"。



ヤバい、もう少しで終わってしまうやん…

あと今回もネタバレがあるんでプロフィールなしです…次は出します!

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