Mission74.後方支援支部の契約
日曜って用事がなんにもないとニート日和になっちゃいます……
「『忌鬼』による攻撃により、戦車が一時撤退します!本部直轄部隊、サポートを願います!」
「負傷者は無理をせず、撤退してください!」
「医療支部に通達。負傷者あり、直ちに治療を願います!」
一方、その頃
オペレーター室で四方八方から聞こえてくる声。全ての声は緊迫感に包まれている。大量のパソコンには様々な情報と遊撃部隊が送ってきた映像が絶え間なく映し出されている。小乃刃は両腕を組ながらそれを神妙な面持ちで見ていた。自分も戦場に行き、他の者達と闘いたい。けれど、自分にはその力がない。そう、ないのだ。
だが
「朱鳥ちゃん」
妃翠に呼ばれて小乃刃は顔を上げた。そこにはヘッドフォンを片耳だけ外した妃翠がパソコンに少し背を向けてこちらを見ていた。小乃刃がなんだ?と首を傾げると妃翠は呆れたようにため息をつき、言う。
「なに考えてんのかは分かるけどさ、あの子らを信じなって」
そう言われて小乃刃は驚いたように目を開いた。
「信じているさ、私の教え子達だ。ただ」
「ただ?」
「……………あいつらの力になれない事が悔しい」
悲しそうに笑う小乃刃に妃翠は分かっていたのに困惑してしまった。小乃刃には闘う力はある。十二分にある。しかしそれは人間や神様に対しての力。契約を結んでいたが、神の死により『禁忌』に対抗する力は今や彼女にはない。せいぜい、『忌鬼』や『アラーヴァ』を蹴散らすほどの力と『禁忌』に攻撃を少しだけ加える事(ものの見事に傷つける事など出来ない)しかない。だが、彼女がまた神と契約を結べば『禁忌』と闘う事は出来るのだ。しかしそれを彼女はしない。彼女がそれを拒むから。理由は定かではないが一つ言える事は、小乃刃は死んだ神と将来、結婚する約束をしていた。つまり、今でも愛しているのだ。自らを守って死んでしまった彼の神様を。
その事実を知っているからこそ、妃翠は困惑したのだ。小乃刃の事情を知るのはごくわずかだ。まだ、彼の神を想っているからこその配慮なのか、それとも彼女自身の問題なのか。
妃翠の表情に小乃刃は心配するなと笑ってみせる。それがまた、彼女を不安にさせるとも知らずに。
「先輩!大変です!」
ソラの緊迫した声に2人はハッとした。妃翠がヘッドフォンをつけ直し、パソコン画面を見て、驚いた。そして、無理やり口角を上げて笑った。喉から乾いた声が漏れる。
「ハハ…第三波が、第二波より規模がデカイなんて聞いてない」
妃翠が見るパソコン画面には『忌鬼』と『アラーヴァ』を表す赤い無数のアイコンが戦闘支部の前に現れていた。戦闘支部は今までの第二波でかなり疲労困憊状態だ。もう数名が怪我のために撤退している。中に突入して行った彼らが帰って来るまでの辛抱だが、その『忌鬼』達は中にまで侵入しようとしていた。戦闘支部の合間を縫って中に侵入し、作戦の邪魔をする気か。
バンッ!と妃翠は机に拳を叩きつけた。
「此処で、終わってたまるか…後輩ちゃん!出れそうなやつに連絡をいr「私が行く」!?」
遮られた声に妃翠とソラは振り返った。そこにいるのは小乃刃だけ。真剣な瞳で行くと告げている。
「でも朱鳥ちゃん、『禁忌』が来ないだなんて保証はどこにもないんだぞ?!もし外に『禁忌』が出てきたら朱鳥ちゃんは……!」
妃翠はその後の言葉を苦痛の表情で飲み込んだ。もし、『禁忌』が出てきたら飛鳥は万事休す、だ。周りでは第三波への対抗策をどうにかして出そうとオペレーター部隊が様々なところへ通信を飛ばしている。が、良い返事は出てきていないらしい、苦痛の表情が歪んでいる。それを横目で確認し、小乃刃はまたもや大丈夫、と頷いた。その言葉に妃翠は今度こそ、戸惑った。一人で彼女を行かせるわけにはいかない。どうする?
迷う妃翠を肯定と捉えた小乃刃はくるりと背を向けて扉に向かって歩き出す。考え中でそれが視界に入っていながらも見ていない状態の妃翠を見かねてソラが声を急いでかけようとしたその時、小乃刃よりも先に扉が開き、廊下の光が入ってきた。そこに立つ人物に今度は小乃刃が驚く番だった。
「お前…」
〈話は聞いた。それってさ、俺と結べばいい話だよな?朱鳥〉
そこにいたのは戦闘支部第十部隊『神樂』の担当医である朝陽だった。逆行でその表情は分からないが声色から真剣だという事が分かる。
「医者であるお前が行くべきところではない」
〈俺、これでも兄弟の中では一、二を争うくらいには戦闘能力あるぜ?朱鳥の力にもなれるしな〉
にっこりと笑って言う朝陽。小乃刃は困ったように顔を歪めた。またあの時のように失いたくはない。それが顔に出ていたのか背後で妃翠とソラが心配そうに顔をしかめた。
〈姉貴や兄貴にも、支部長にだって許可は取ってる。俺は戦場であいつらの力になりたい。きみの力になりたい。通信であいつらにあんな事言ったけど、あれには朱鳥、きみも入ってるんだ。奥で縮こまってるだけなのは、もういい。俺たちが出来るって事も証明させてくれ!〉
朝陽の瞳が美しく、力強く輝く。小乃刃はその瞳にあの頃を思い出した。あの人と契約を結んだあの時を。
小乃刃は小さく笑った。それに妃翠は驚いたように目を見開いた。
「……変わるのは、今、かもな」
「朱鳥、ちゃん?」
「良いだろう。私の役に立てるのならな」
小乃刃が煽るように言い放つと朝陽は驚いたのか一瞬、目を見開いたが、クスリと笑った。妃翠とソラは驚いた様子で互いの顔を見合わせた。他の隊員達も頑なに契約を拒んでいた小乃刃が契約を結ぶと言うことに驚愕の色を隠しきれていない。だがこれはこれで小乃刃の新しい一歩だと言うことも感じた。
〈さいっこう〉
朝陽は口角を上げて愉快そうに笑うとその口から契約のための言葉を口にする。
〈我が名と力により、彼の者との契約を望む。問う、人よ、きみにその意志はあるか?〉
神の瞳が、小乃刃を射ぬく。それに小乃刃は笑い
「嗚呼」
短くそう答えた。その途端、2人の周りを朝陽の瞳の色と同じ 、明るい緑色の糸が囲む。それはすなわち、契約の糸。
〈我が名、朝陽と人、小乃刃 朱鳥は契約を結び、主従関係となる。相手のためにその力を使い、相手のために進めると約束できるか?〉
「嗚呼、もちろんさ」
〈宜しい。今ここに、契約は、成された〉
明るい緑色の糸が2人の中に消えていく。そして朝陽が一瞬、光輝き、にっこりと笑って小乃刃の前に跪いた。
〈これからよろしくな、朱鳥〉
そして『神譜』が発動され、明るい緑色の光が朝陽を包む。その光が晴れるとそこには朝陽はおらず、今度は小乃刃を包んだ。そして、その光が晴れた時、小乃刃の背には美しいほどの薄い紫色の翼が生えていた。それを見た妃翠は嬉しそうに微笑んだ。
教官にも少なからず活躍して欲しい、というか契約して欲しい願望があったんで…
・候補生&訓練関係者
小乃刃 朱鳥
国彦達、戦闘支部第十五期候補生の試験官及び教官。女性でありながら厳しいがその反面、とても母性に溢れる人。武器は投げナイフ。元々は自分にも臣下の神がいたが死亡した。
29歳、169cm+ヒール2cm
第一人称:私 第二人称:お前
・医療支部
朝陽
医療支部に所属する、医療や医学などの力(能力)を持つ神の一族。大人数(20人)の兄弟で五男。兄弟全員で医療支部を動かしており、その中心にいるのは一番上の双子の姉弟の主(医療支部隊長兼医療支部長)で母親のような存在。
弥厳と知り合い。
主である小乃刃の呼び名は頭
→千聖の担当医→戦闘支部第十部隊『神樂』担当医
推定17歳、168cm
第一人称:俺 第二人称:きみ




